カーボンニュートラル、Wikipedia によれば、「何かを生産したり、一連の人為的活動を行った際に排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量であるという概念」のことをいう。
政府は、「2050年のカーボンニュートラル」、温室効果ガス排出量の実質ゼロを目標に掲げた。世界の多くの国々が同様にカーボンニュートラルを目標にし、グローバル企業の多くもその達成を目標に行動を起こすようになった。
戸惑い
調査会社の帝国データバンクが「温室効果ガス排出抑制に対する企業の意識調査」を行ない、その結果を公表した。
多くの企業が、「2050年のカーボンニュートラル」は達成困難とみているとの結果になったという。その目標に、43.4%の企業が「達成は困難」と予想する企業が43.4%にもなり、17.9%の企業は「達成できない」と回答したという。
TDB 帝国データバンクによると、温室効果ガスの排出抑制への取組みでの課題を尋ねる質問では、「他に優先すべき項目がある」が27.4%で最も高く、「主導する人材(部署)がいない」や「どこまで取り組めばいいのかわからない」、「取り組むためのノウハウやスキルがない」などの回答は高い比率としてあがるという。
こうした課題が2050年の目標達成が困難とみる理由になっているのだろうか。取り組む意義に結びついた動機が出来上がらないと、言い訳ばかり増えるということなのだろうか。
温室効果ガスの排出抑制に取り組む目的は、電気料金などの「コストの削減」が55.7%でトップで、次いで「法令順守」があがり、「CSR(企業の社会的責任)の一環」、「SDGsへの対応」などがその次に上ったという。
副次的なコスト低減が目的となっているのであれば、率先して削減しようとの意識が生まれてこないのも至極当然のように思われる。ただ中には、「省エネ・低炭素・ゼロエネ住宅を自社の競争力としている」(木造建築工事、北海道)との前向きな回答もあったようだ。
大企業は、 SDGsやSCRなど企業としての見られ方に関する項目での回答割合が高いとTDBは指摘する。
転換
カーボンニュートラル、燃焼時に多量の二酸化炭素を排出する「石炭」を生業にする企業は痛手を被る。石油大手元売りの出光も石炭を商う企業のひとつ。
その出光も今年5月の決算発表時には、自社のCO2排出量を50年に実質ゼロにする目標を正式に打ち出す予定だとブルームバーグが伝える。
「スコープ3」と呼ばれる販売した製品の使用時などに発生する間接的な排出分については、自動車の電動化の進捗状況などに左右されるため出光の実質ゼロ対象には含めない予定。
その一方で、CO2や水素を使った「eフューエル」と呼ばれる合成燃料やバイオジェット燃料など、既存のインフラを活用した新たな燃料の製造にも意欲を示した。 (出所:ブルームバーグ)
石炭や石油がまったく「0」になるということは考えられないが、それでも未来永劫、それらを事業の柱としていくことはできない。明らかに事業転換が求められている。う。もう石油元売りというカテゴリーではなくエネルギー会社としての道を模索しなければならないのだろう。それならカーボンニュートラルに貢献することを本業にすることは至極リーズナブルな話だ。
ブルームバーグによれば、出光は2019年に石炭事業の出口戦略について着手したという。「ざっくばらんに言うと例えば最初は鉱山ごと売却ということも考えた」と出光の木藤社長は振り返り、「今、鉱山の売却というのはすごく難しい」といい、「逆にオーストラリアで30年来やっている事業をうまくリメーク、発展させていくことを考えている」と述べたそうだ。
具体的には、現地での雇用維持や知見活用の観点から炭鉱跡地を活用した太陽光発電やバイオ燃料用の作物の育成、リチウム鉱山開発への参入などを模索していると話した。 (出所:ブルームバーグ)
為せば成る
アマゾンは2019年に、2040年のカーボンニュートラル達成を宣言した。
「アマゾンは年間100億アイテム以上を配送している。これほどのスケールの企業が、パリ協定で定められた目標を10年前倒しで達成できるとしたら、他のどんな企業にとってもこの目標が不可能ではないことになる」
と、ベゾス氏が述べたとForbesが紹介する。
言われてみれば、そのとおりなのかもしれない。カーボンニュートラルもできないことではないのかもしれない。
ただ、アマゾンの実行力には驚くばかりだ。そのアマゾンが今度はコロナのワクチン接種でも連邦政府に協力するという。
為せば成る。できると思えば、何事もできないことはない、ということなのかもしれない。
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