Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【サステナビリティはアップルの美学か】森林再生に2億ドルのRestore Fund(再生基金)開始

 

 アップルから発表されるニュースをみるたびに、一体何の会社なのかと、不思議な気分になることがある。

 Appleは15日、温室効果ガス削減の取り組みとなる2億ドルの “Restore Fund”(再生基金)を発表した。

 それによれば、大気中から二酸化炭素を削減することを目指している森林プロジェクトに直接投資を行うことで、投資家は金銭的なリターンを得ることができるという。乗用車20万台分の燃料に匹敵する年間100万トンの二酸化炭素を削減することを目指し、実現可能な財政モデルを提示することにより、森林再生に向けた投資活動を拡大させることを目的とするという。

f:id:dsupplying:20210417083145p:plain

(写真:アップル)

 「森林、湿地、草原といった環境は大気中から二酸化炭素を引き寄せ、それを土、根、枝に永久に貯蔵します。基金の設立を通じて、そこで金銭的なリターンを生み出しながら、二酸化炭素の影響を現実の測定可能な形で示すことで、私たちは将来的により幅広い変化を起こしていくことを目指しています

と、Appleの環境·政策·社会イニシアティブ担当バイスプレジデント、リサ·ジャクソン氏は述べる。

www.apple.com

 アップルは、これは「2030年までにカーボンニュートラルにすること」を目指す多角的な対応の一環だと説明する。この基金で、大気中から二酸化炭素を削減することで、サプライチェーン上に残る二酸化炭素の排出とオフセットすることで解決する。

 カーボンニュートラルが抗し難い世界的な流れだとしても、ここまで徹底してできることには脱帽である。

 

 

 アップルは発表の最後を、2016年から始めた iPhoneの製品パッケージについて説明する。「いつの日かリサイクル素材または再生可能な素材だけを使って製品を作れるようになる」という当社の目標の一環として採用された初の “輪の閉じた” 素材を代弁するものという。

最新の iPhone 12 ラインナップでは、製品パッケージの93パーセントが木材繊維ベースの素材で作られています。これには iPhone のディスプレイを保護する繊維ベースのカバーも含まれ、今回初めて、それまで使われていた標準的なブラスティックフィルムから置き換えられました。 (出所:アップル)

 アップルがパッケージにこだわるのは、お客様が購入した商品に最初に触れる部分だからなのだろう。そこにアップルのすべてのメッセージが集約されているのかもしれない。アップルの美学なのだろう。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 国内で相変わらず石炭火力発電所が議論がくすぶる。国内の総発電量の3割超を非効率な石炭火力で賄う電源開発(Jパワー)の最近の動向を日本経済新聞が伝える。

 それによれば、規制が強化されるなか、石炭依存の経営から脱却を急いでいるという。

計画していた山口県宇部市の石炭火力発電所の建設を断念し、CCUSを組み合わせたCO2フリー水素発電やCO2フリー水素の製造・供給に傾注しているようだ。

www.nikkei.com

 日本経済新聞はこう指摘する。

日本は19年度の国内発電量のうち石炭火力が32%を占め、37%のLNGに次いで2番目に多い。石炭を一気に廃止すると地域の電力需給が崩れるとの見方もある。日本各地で拡大する太陽光や風力は発電量が安定しておらず、大手電力は火力発電所の稼働を調整することで需給を一致させてきた石炭廃止で需給が安定しなくなった場合、大規模停電のリスクが高まる可能性がある

原子力発電所の再稼働がなかなか進まない中で、一定程度の石炭火力は必要とみて高効率のものは稼働を認めざるを得ないというのが日本の現状だ。 (出所:日本経済新聞

 

 

  一見筋の通った論理に聞こえるが、それでは石炭火力を擁護する論理にはなっていないだろうか。需給安定を維持しつつ「脱炭素化」を進めることが目標であって、当座石炭火力に頼らざるを得ないのであれば、そこに必要となる技術開発進め、それで補うことができなければ、カーボンオフセットするとの考えが必要になるのではなかろうか。

 まだ技術開発途上にある水素に一気に走ることにはリスクが高いような気がする。常にバックアッププランを持っているべきではなかろうか。

 

「おなばら発電所」の建設について~河川維持流量を活用した水力発電所を建設~( 電源開発)

 

f:id:dsupplying:20210417100854p:plain

(写真:アップル)

  アップルの「サステナビリティ」に関する発表を見るたびに、「孤高の人」アップルと感じてしまう。

「孤高」とは、個人の社会生活における1つの態度を表し、ある種の「信念」や「美学」に基づいて、集団に属さず他者と離れることで必要以上の苦労を1人で負うような人の中長期的な行動とその様態の全般を指すとWikipediaは説明する。

 国内電力事業者にも、アップルの美学を学んでもらいたい、そう感じる。

 

「参考文書」

山口宇部パワー(株) 西沖の山発電所(仮称)新設計画 計画取り止めについて │ ニュースリリース │ J-POWER 電源開発株式会社

GENESIS松島計画の環境影響評価実施に向けた準備開始について
―カーボンニュートラル・水素社会実現に向けて―