産地偽装、食品に関わる不祥事が後を絶たない。過去に雪印の牛肉産地偽装という大きな事件があった。この件は最終的に、事件にかかわった会社としての雪印食品が解散となり、雪印乳業自体も再編を余儀なくされた。過去にこうした先例があるにもかかわらず、なくなることはないのだろうか。
まだ気が早いのかもしれないが、出荷停止となった熊本県産のあさりが今後が気になる。
差し当たって、大手スーパーは順次中国産に切り替えているようだが、出荷が解除となれば、再び熊本県産が店頭にならぶことはあるのだろうか。
熊本産アサリ、ヨーカ堂が販売休止 イオンは5日から中国産に:時事ドットコム
JIJI.COMによれば、国内のスーパーに並ぶアサリは、この季節はほとんどが熊本県産だったという。春になると順次、愛知県などに産地が切り替わるそうだ。
大量の外国産輸入アサリが「熊本県産」に偽装されていた疑いを示す「状況証拠」が、県農林水産部作成の統計資料に記録されていたと、西日本新聞が指摘する。
アサリ偽装、熊本県の統計に残されていた「状況証拠」|【西日本新聞me】
国の食品表示の基準では、原産国での生育期間よりも長く県内で蓄養すれば、原産地を「熊本県産」と表示できるルールがあり、量だけで真偽の判別はできない。
決め手は産地を証明する書類だが、保存は努力義務で保存期間も極めて短い。検査に入っても「廃棄済みで言い逃れされる」(県担当者)という。(出所:西日本新聞)
西日本新聞によると、熊本県は「地元で生産するアサリの統計は取ってきたが、輸入や蓄養の実態を把握しておらず、気付けなかった」と釈明し、取引実態の解明とともに、国に食品表示基準の見直しを求めているという。
ルールを整備するのは国や自治体の役割かもしれないが、ルールが守られているか否かの監視も自治体に頼らなければならないのだろうか。一義的には川上に近い方から産地を保証していくべきなのだろう。
西日本新聞が指摘する「産地を証明する書類」が気になる。これはどんな目的で発行され、一体誰がそれを活用しているのだろうか。
スーパーなど小売店、食品産業なども被害者なのだろうか。
これまでも幾度となく産地偽装が繰り返されてきたが、それでも卸や取引業者からの情報を鵜呑みにして販売するだけでよいのだろうか。消費者との接点は小売店だ。小売店など消費者に近い方で、監視の目を強化しない限り、問題はなくならないだろうし、消費者は騙され続けてしまう。
SDGsが世に広まり、エシカル消費が推奨されている。スーパーなど小売店もそれをアピールし、自社のサスティナビリティを強調する。それでも、産地偽装の産品が店頭にならび、販売されている。こうしたことが繰り返されることが不思議でならない。
ルールを変えたところで、根本原因が正されない限り、これまで変わりなく不正はなくならない。流通、大手スーパーなどがもうそろそろこの問題の根絶に挑戦してもいいのではなかろうか。エシカル消費を推奨する小売店ならなおさらそうなのだろう。
「参考文書」
アサリ、ワカメ、ウナギ…相次ぐ国産偽装の主犯は業者でなく「安いニッポン」 | 情報戦の裏側 | ダイヤモンド・オンライン
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