資生堂が9月、150周年を迎えたといいます。これを機に魚谷社長が「変わらない普遍的なものは何ですか?」という問いを発しました。
その背景には、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性、VUCAの時代といわれる現代において、本質を見極める必要があると考えたからだそうです。
そんな魚谷社長の問いに対し、答えた声を日本経済新聞が紹介しています。
「時間の普遍性と価値」「未来を想像する力」「人を思う想像力」「人間は学び続ける」「命の尊さ・大切さ」などの言葉が並びます。
また、ある人は「人とつながる幸せ」をあげ、「幸せになりたい」、この気持ちこそ、変わらない普遍的なものと答えています。
普遍的で変わらないものはひとつではなく、多々あるのかもしれませんし、また、いくつかの言葉に集約ができたりもするのかもしれません。
こうした言葉が人生のあらゆる場面で活かされているなら、もっと住みよい社会になっていくのではないかと感じます。
---
「社員は優秀ですごく頑張っているのに、楽しそうじゃないんですよ」、大手電機メーカのパナソニックのCIO 最高情報責任者を務める玉置執行役員が社内会議で、社員に向かってそう話したといいます。
「社員は楽しそうじゃない」パナソニック24万人の変革: 日本経済新聞
パナソニックは21年5月からグループ全体のDX デジタルトランスフォーメーション推進プロジェクト「パナソニックトランスフォーメーション(PX)」に取り組んでいるといいます。その推進役には玉置CIOが任命され、PEXアジャイルセンターが立ち上がったそうです。短期間で検証や改善を繰り返すアジャイル型手法を推進する社内組織といいます。
製造業らしく自社のアジャイル変革を「デジタルで業務改革するための小集団活動」と定義したうえで、目指す姿を「従業員1人ひとりが、顧客起点で自律的に、組織の壁を越えて柔軟・俊敏に成果を出し続ける働き方がパナソニックグループ全体に定着、顧客満足度と従業員満足度双方が高まる働き方になっている」ことと定めた。(出所:日本経済新聞)
「仕事の楽しさって何だと思う?」という問いに、メンバーは達成感ややりがい、成長を感じることなどと答えたそうですが、「きのうよりもちょっとよくなっているという進捗を感じられること」と、玉置氏は仕事の楽しさをこう定義しているといいます。
「楽しそうじゃない」とは、「進捗を感じられていない」という意味を含んでいるのだ。「皆が目標や進むべき方向を共有し、立場は違えどチームメンバーの進捗や明日やるべき事も共有している。そして何かあったらカバーし合える。私はアジャイルの根幹はこういうことだと考えている」(出所:日本経済新聞)
「仕事は楽しいものだと思わせてくれる仕組みがアジャイル」と玉置CIOはそう考えているそうです。
アジャイル開発のことをソフトの開発技法かと思っていました。そうではなく、もともとはカイゼン活動で、そのルーツの1つはTPS=トヨタ生産方式といいます。
自分の経験からしても「仕事が楽しいもの」と感じるのは、チームが目標を一にして、組織の壁を超えて自律的に協調し、うまく進んでいると実感するときだったようにおもいます。
そのときに特にこれがパーパスと定めた訳ではありませんが、1人ひとりが顧客起点で、顧客のためにQCDをよりよく改善していこうと行動し、それがまた自分たちの業績・成績につながることを信じて疑っていなかったのかもしれません。顧客のためが仕事で、その成果が業績であり、業績によって自分たちの報酬になるということをみなが暗黙の内に理解していたのかもしれません。言葉に出すことはなかったのですが、そこでは普遍的価値が共有できていたのかもしれません。
☆
入社して間もない頃、上長命令で「IE(インダストリアル・エンジニアリング)」の研修を受けました。このIEはTPSの元になった改善手法のひとつです。このとき、身につけたカイゼン・マインドがその後に影響したのかもしれません。
「進捗がある」ということは何かが少し良くなるということであるのでしょうし、それは言葉を変えれば改善ということなのでしょうから。