米国で「インフレ抑制法」が成立したといいます。財政赤字を今後10年間で約3000億ドル削減し、インフレの減速を狙っているといいます。
そればかりでなく気候変動対策や薬価引き下げを盛り込み、また、経済安全保障に資するような税額控除などの助成制度も組み込まれているといいます。
米国インフレ抑制法、3690億ドルを気候変動に投資 | 日経ESG
法人税の最低税率の設定と処方箋薬価の引き下げなどによって、財政赤字を約7370億ドル減らした上で、それを原資として「エネルギー安全保障と気候変動」の分野で、税控除や補助金などを通じて3690億ドルを投じる。(出所:日経ESG)
助成制度は企業をばかりに対象したものではなく、家庭へのソーラーパネルの導入やエネルギー効率が高い家電製品を購入した際の消費税が控除されるもので、家庭レベルでの気候変動対策が一気に加速すると期待されているといいます。
米国の「インフレ抑制法」は、気候変動対策を加速させる“秘密兵器”になるか | WIRED.jp
バイデンは、この法案を発表した声明で「エネルギー事業関連の税額控除や投資を実施することによってエネルギー安全保障を向上させ、気候危機に対処する」と、7月27日(米国時間)に記している。
さらに、「これにより多数の新規雇用を創出し、将来のエネルギーコストの低減に資する」という。(出所:wired)
また、この法律によって米国の30年までの温室効果ガス排出量は40%削減が可能となる見込みで、米国の気候変動対策は大幅に前進することになるといいます。
法律がない場合には25~30%減にとどまると言われていたそうです。
こうした法制化によって、産業界における改革が加速することになるのでしょうか。
Newspicksによると、EVの使用済み電池リサイクルのスタートアップに注目が集まっているといいます。
EV電池リサイクル企業にマネー殺到 米インフレ抑制法も追い風
インフレ抑制法によって、電池材料に占める米国産およびリサイクルの割合が増えるほど、EV購入者の税控除額が増えることに。
ゆえに大手自動車メーカーたちは今、電池のサプライチェーンを握る中国への依存を減らすことを目指しているというわけです。(出所:Newspicks)
よくできているしくみのように見えます。ただ思惑通りにことは進むのでしょうか。
日本でも10年間に官民で150兆円規模の脱炭素投資を行い、このうち20兆円を政府が投じる構想を検討中といいます。
日経ESGによれば、20兆円という規模は米国と日本の国内総生産(GDP)や人口を考慮すれば遜色ないと言えるといいます。
他方、米国のインフレ抑制法は全体で財政赤字を縮小するが、日本の構想では、グリーントランスフォーメーション(GX)経済移行債(仮称)で政府資金を調達するので財政赤字が発生するものの、裏付けとなる将来の財源をあらかじめ確保するので、時間差を伴って収支が均衡する。(出所:日経ESG)
日米双方で財源が異なるということでしょうか。また目指すものもまた違うようです。政策立案能力の差なのでしょうか。
いずれにせよ、政策を実施するのであれば、確実に効果があがることが求められます。また、それによる副次効果は多いことに越したことはないのでしょう。