Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

円安、物価高、高まる賃上げ期待、負の連鎖を断ち切れるために

 

「日本病」「安いニッポン」という言葉をよく耳にするようになりました。円安によって明るみになった不都合な真実ということでしょうか。

定食チェーン「大戸屋」のニューヨーク店舗のメニュー価格を円換算して驚いた。しまほっけの定食がチップなど込みで6000円強と日本の6倍強。2018年2月に訪れた際にはまだ3.3倍にとどまっていたという。日本人の賃金ではとても普段使いできない値段だ。(出所:日本経済新聞

 ちょっと驚きの価格差です。

 賃金差も拡大しているといいます。米国カリフォルニア州のファストフード従業員の最低賃金が時給22ドルへ引き上げられるといいます。

 ドル円が150円なら3300円。日本の全国平均の最低賃金時給961円、その差は3.4倍あまり。仮に2011年に付けた最高値ドル円が75円だったとしても22ドルは1650円、日本の1.7倍との指摘もあります。

 この人件費の差こそ物価差になるそうです。

 

 

 賃金が上がらないことを「日本病」と日本経済新聞は呼んでいます。日銀は物価目標を定め、金融緩和で円安誘導しました。

 しかし、日銀の主張通りで物価が上昇すれば、賃金は上がるのかと疑問を投げかけます。

円150円、円安招いた「日本病」 賃金低迷・低成長のツケ: 日本経済新聞

過去10年、最も通貨価値が下がり、最も成長率が低かったのは日本だ。金融緩和は「時間を買う」政策のはずが、その間、改革は進まなかった。(出所:日本経済新聞

 一体この10年何をやっていたのだろうと思わざるを得ません。なおかつ、重すぎるツケを背負うことにもなったようです。しかし、今やることをやらなければ、経済再生は夢のまた夢になりかねません。

 専門家が様々な意見を述べ、その特効薬を語っています。差し当たって、直ぐに効果が期待できるのはインバウンド特需といわれます。いずにせよ、「外貨を稼ぐ」しかないのではないでしょう。

 ただそれで十分なのでしょうか。もっと身近でできることはないのでしょうか。

 

 

何よりも重要なのは、上層部の報酬だけを重視するのではなく、従業員の生活水準を改善し、賃金を全社的に公正なレベルまで引き上げることだ。

所得の絶対的な平等を求めるのはあまり意味がないが、少なくとも、いつも取り残されている人々の安定した生活基盤を築かなければならない。透明性を高めよう。(出所:日経ビジネス

ポール・ポルマン「節税に励む会社がパーパス志向なんていえるか?」:日経ビジネス電子版

 この言葉は、ユニリーバの前CEOのポール・ポルマン氏によるもので、「幹部の報酬の伸びを抑え、下位層に資金を回してバランスをとるのは、思った以上に効果がある」といいます。医療サービス企業のケアセントリックスは上層部20人の報酬額を据え置き、その分を使って、新入社員500人の賃金を米国最低基準の時給7.25ドルから16.50ドルに引き上げることができて、全社員への利益分配にもなったそうです。

 こうしたことは海外だけに限った事例なのでしょうか。経営陣が重責を担い改革を実行することで、会社に持続的な成長がもたらせるのかもしれません。しかし、自らの報酬の伸びが従業員のそれより大きくなることは不自然なことのようにも思えます。

 

 

 来年2023年度に賃上げを「実施する」予定の企業は増加しているといいます。現状の物価高の下では、従業員の生活維持のために賃上げをせざるを得ない側面もあるそうです。

 一方で、業績見通しに明るさがまだ見えず、賃上げ原資の確保が課題との意見があります。

2023年度 「賃上げ実施予定」は81.6% 「5%以上」の引き上げは4.2%にとどまる ~2023年度「賃上げに関するアンケート」調査~ : 東京商工リサーチ

 やるべこことと優先順位が明確になっていそうです。あとはやるのか、やらないのか、それだけになっているのではないでしょうか。

 

「参考文書」

半分になった円の価値、もっと深刻な「実質価値」 | 特集 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース