物価高騰が止まりません。物価の先行指標となる11月の東京の消費者物価指数が前年同月比で3.6%上昇したそうです。有効な対策がないのですから、どうにもならないのでしょうか。企業が物価上昇を上回るペースで賃上げしていくことしか手がないようです。それも単発ではなく、継続することが求められそうです。
そんな中、日本製紙が、牛乳や清涼飲料などに使われる紙パック製品の値上げを発表したそうです。この1年間で3回目の値上げで、来年2023年4月1日納入分から適用され、値上げ幅は18%以上になるといいます。
液体用紙容器の価格修正について|ニュースリリース|日本製紙グループ
日本製紙によれば、世界的規模での資材・エネルギー価格の高騰が収まらず、それに加えて円安の影響を受けているといいます。特に、木質資源が世界中で争奪戦の様相を呈し、需給逼迫による価格高騰が進んでいるそうです。
供給優先で原紙を確保したことで、その価格上昇分を製品に転嫁せざるを得なくことが理由といいます。
事実なのでしょうが、ため息が出そうです。
一方で、JALの一部国内線で使われている紙コップや紙製のマドラーを回収してリサイクルするといいます。羽田 - 那覇便で12月1日から回収を始め、段ボール原紙やトイレットペーパーに再生するそうです。
この先、対象便を順次拡大、将来は紙コップから紙コップへ再生する水平リサイクルをつなげていくといいます。
紙コップは、紙にプラスチックを貼り合わせ防水加工しているため、また、使用後は食品残渣の汚れや臭いなどの衛生上の観点から、古紙分類においては禁忌品に指定され、通常、一般ごみとして焼却されてきたといいます。
日本製紙は、こうした食品用紙容器の専用リサイクル設備を10月に富士工場で稼働させたといいます。紙コップの表面からプラスチックスを分離させ、紙からは繊維を取り出して、トイレットペーパーなど家庭紙にリサイクルできることが可能になったそうです。
これまで処理コストなどの問題で回収量が一定に達した場合しか新設備を利用できなかったが、JALとの取り組みにより、定期的に大量回収できるめどが立った。(出所:日本経済新聞)
JALグループが機内サービスで使用した紙コップは、日本製紙独自のルートで輸送するそうです。国内線約400便で紙コップを回収すると、1日に約3万個の紙コップが回収でき、トイレットペーパー960巻にリサイクルすることが可能になるといいます。
これまで安価に利用できた海外製の天然資源が、国際情勢の変化で従来のように使用できなくなっています。ロシアによる軍事侵攻を収まる気配をみせず、木材需給が急激に改善することは期待できそうにありません。また、長引く円安も、硬直化した日銀の金融政策の影響を受け、これもまた急激に改善することはないのでしょう。
コストアップとなった現在の原材料を、リサイクル品に置き換えていくことが自然な流れのような気がします。カーボンフットプリントなどの解決に加え、賃上げに対応しなければならないなど課題も多々あるのでしょうが、その解決が進めば、輸入物価の影響をミニマイズできるようになり、物価の安定にも寄与することになるのではないでしょうか。その上、「経済安全保障」にも貢献できそうです。
値上がりはなかなか許容できるものでありませんが、今の価格が正常なのものとすれば、コストアップといわれるリサイクルも進みやすくなっていくのかもしれません。
その上、リサイクルの規模が拡大していけば、コストダウンが進む可能性もありそうです。これがやるべき仕事のような気がしますし、次の成長の機会にもなるのではないでしょうか。
「参考文書」
日本製紙、JAL国内線で使用する紙コップをリサイクル: 日本経済新聞
機内で使用した紙製カップ類のリサイクルを開始|ニュースリリース|日本製紙グループ