脱炭素によって、木の価値が見直されているのでしょうか。木造ビルがあちらこちらで建設されるようになり、木の成分であるセルロースを活用した素材開発、またその商品開発も活発のようです。バイオマス発電の利用拡大もその一部といっていいのかもしれません。
ウッドショックが起き、またウクライナ危機により国産材に注目が集まっています。こうしたことを機会にして、森林の利活用がより適正に進められていくべきなのでしょう。
森林国フィンランドでは20年以上前から、森林資源を持続可能な形で経済に組み込むバイオエコノミーへの転換が進められてきたといいます。
フィンランドの森林の国土面積に占める割合は約74%で世界1位といいます。日本でもおおよそ7割弱が森林が覆っています。参考にしてもいいのかもしれません。
フィンランドに学ぶ サーキュラーエコノミー最前線 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
フィンランドでは2016年に、5つの重点分野からなるサーキュラーエコノミーロードマップが掲げられ、そのうちの一つに「森林資源を基礎とした循環」があるそうです。この取り組みは以下に要約できると記事が指摘します。
1. デジタル化や機械化による森林資源の持続可能で効率的な利活用
2. 木材から最大価値を抽出するカスケード利用
3. 素材のバイオ化とともに製品のサーキュラー化(出所:Forbes)
日本においてもそれぞれ個片の取り組みはあるのかもしれませんが、これらが一体として進めるという取り組みが弱いのかもしれません。
国内に約400カ所、総面積約9万ヘクタールの社有林を保有し、大規模森林所有者の日本製紙が、社有林の再造林地で、自社で生産したエリートツリー等の苗を順次植林しているといいます。
エリートツリー苗生産事業の拡大を加速静岡、鳥取、広島、大分の4県で「特定増殖事業者」の認定を取得|ニュースリリース|日本製紙グループ
森林の中でとび 抜けて成長が良く、しかもその他の形質が優れている個体のことを精英樹と呼ぶそうです。こうした優れた樹木同士を掛け合わせて作られるのが「エリートツリー」、従来種より成長速度が1.5倍早く、二酸化炭素の吸収量も1.5倍になるといいます。花粉量は一般的なスギ・ヒノキの半分以下、幹の通直性の曲がりがないものなどの条件もあるそうです。
林野庁は、林業用苗に占めるエリートツリー等の割合を2030年までに3割、2050年までに9割以上を目指すことを目標に掲げているといいます。
カーボンニュートラルの実現には、排出量の削減に加え、削減して残る排出量とオフセットする十分な吸収量を確保することが求められます。ただ現実においては、日本の森林による吸収量は減少傾向にあるそうです。
「エリートツリー」に新たな期待、林業の切り札が脱炭素でも貢献へ - Bloomberg
環境省の統計によると、20年度の吸収量はCO2換算で4050万トンで、現行基準のデータがある13年度に比べ約2割減っている。(出所:ブルームバーグ)
森林の高齢化が指摘されているといいます。一定程度の樹齢を超えると、樹木は二酸化炭素を吸収しにくくなる性質があり、適切な森林管理が求められ、樹木の若返りを図っていく必要があるといいます。
日本の人工林は樹齢50年以上のものが約半数を占めていますが、森林の若返りが思うように進んでいないと記事は指摘します。
林業が好循環の軌道に乗らなければエリートツリーの普及による脱炭素も進まず、両者は表裏一体の関係にあるといいます。
「木とともに未来を拓く総合バイオマス企業」、それが日本製紙といいます。森林の持つ様々な価値を最大化させつつ、バイオマス製品の普及を進め、循環型社会の構築に貢献するとしています。
他の大規模森林所有者にも同様な活動が求められているはずです。
「参考文書」
ウッドショックで国産木材に脚光、「スマート林業」8銘柄|会社四季報オンライン