Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【中間層の所得減】社会のゆがみ、新たに生まれる社会課題

 

 解決されない社会課題、それに輪をかけ、続々と新たな社会課題が姿を現しているように感じます。SDGsやESG、国がカーボンニュートラルを宣言したことで、これまでの課題が解決に向かうのではないかと期待したものですが、そのスピードよりも早く新たな問題が顕在化していないでしょうか。

 政策のゆがみの影響があるのでしょうか。それとも企業の対応がまやかしに過ぎないということなのでしょうか。

賃上げ

 日本自動車工業会が2022年11月に実施した記者会見で、会長である豊田章男トヨタ自動車社長)が、賃上げについて言及したそうです。

「なぜ日本人の給料が上がらないのか」について自工会の豊田章男会長がマスコミへ注文した内容がド正論だった… - 自動車情報誌「ベストカー」

「中間層の所得減」、日本において広がりつつある「格差」をこれ以上広げないために、中間層を中心に「みんなにどう働く場を与えていくのか」との考えを示したそうです。

 

 

日本全体の「賃上げ」を達成するためには、この(労働人口のうち「賃上げに関する話し合いの場」に立つことができていない)70~80%の人たちに、どう影響を与える活動をしてゆくか、ということだとわたくしは考えております。(出所:ベストカー

 労働組合に参加し話し合いの場につけた人だけが「賃上げを達成できたよ」と喜ぶのではなくて、そういう場につけない人たちのために、どういう動きをすればいいのかを考えていると語ったそうです。

 その上で、メディアには、そのために何をどう報じるのかを考えてもらいたいと注文を付けたといいます。

ESG

「社会のため」、「地球環境のため」と、ESG経営に取り組み企業があり、こうした企業に投資するESG投資がさかんになっています。

 ESGを構成する3要素に内、「E(環境)」については、気候変動などに対応する取り組みは目に付きやすく、取り組んでいることをアピールしやすいといいます。「E」が先行することが悪いことではないにしても、もっと「S(社会)」や「G(統治)」を真剣に考え、取り組むべきではないかとの意見があります。

EだけではないESG-気候変動は重要なテーマであるが 基礎研REPORT(冊子版)12月号[vol.309]|ニッセイ基礎研究所

「S」は決して労働環境やジェンダーなどの問題に限られず、社会の在り方全般を意識した幅広い課題を含む概念である。サステナビリティというSDGsの思想に繋げて取り組むことが考えられる。広く考えるならば、「E」ですら「S」の一部として考えることすら可能である。(出所:ニッセイ基礎研究所

 

 

 また「G」は、「E」や「S」に取り組む際の前提条件のような存在であり、時に、法令遵守やガバナンスといった局面で表に出て来なければならないといいます。

 記事は、ESG概念はSDGsに包含されていくのであろうと指摘しますが、その17の目標の中には、営利企業が取り組む必要のないも含まれ、すべての企業や組織が、すべての目標に同じように取り組むことを求めるものではないといいます。

 ほんとうにそうなのでしょうか。個人的には時間を要しても、その理念に合致するよう、すべての目標を包含する企業活動にしていかなければならないと思えます。

国内回帰

 電子部品大手のアルプスアルパインが、国内での製造・開発の拠点となる宮城県で取引先の業務改革に取り組み、国内生産への回帰を進めたい考えといいます。

アルプスアルパイン、宮城で取引先改革 国内回帰へ布石: 日本経済新聞

 製造工程や受発注、在庫の管理に至るまで、自社の持つノウハウを県内150社の取引先に展開し、生産性の底上げを図るといいます。経済安全保障を念頭にし、相元手のサプライチェーン(供給網)の混乱を回避しなければ、企業活動の存続自体が危ぶまれます。アルプスアルパインは地元地銀七十七銀と協力し、中小企業が抱える経営課題を把握し、地元企業の実情に合わせた支援につなげるそうです。

 

 

 変えることが容易ではない金融政策のゆがみによって生じる円安基調、巻き込まれたくはないですが、避けることが難しくなってきている地政学リスクの高まり、一方で目を国内に転じれば、止まりそうにもない物価高騰、それに対して一向に伸びすることが無さそうな賃金、課題が増えるばかりで、これまでの企業活動が何らに「S(社会)」に役立っていないように見えてしまいます。

 企業の目的は永続的に利益をあげ、株主還元を行い、地域社会に貢献することと、入社して間もないころに学びました。これが企業の価値の本質だと今も信じています。この価値を達成するために、様々な施策があり、また施策の実行のための資金調達のために、様々な評価があるのでしょう。ついついこうした枝葉に目が奪われて、本質的なところが忘れられてしまうことがあるのではないでしょうか。

 平坦な道を歩むことはできません。必ず山はあり、谷に出会うことこともあるのでしょう。そうした危機的な状況を迎えたときは、よりシンプルに考えたの方がいいのかもしれません。今そういうときなのでしょうし、そして、またそれを乗り越えようとする企業もあるようです。そうした企業が増えて欲しいものです。

 

「参考文書」

七十七銀行、アルプスアルパインと製造業支援で協定: 日本経済新聞