Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【賃上げと環境問題】EVシフトは理想かもしれないが、それが正解なのか

 

 トヨタ自動車がEV電気自動車の対応で出遅れていると国際的に批判されています。

「エキサイティングなことを望むなら電気自動車に乗れ、退屈したいならトヨタに乗れ」。(出所:ブルームバーグ

日本車離れ加速か、世界的なEVシフトに乗り遅れ「衰退のリスクも」 - Bloomberg

 米国の非営利団体「パブリック・シチズン」は公開書簡で、「バッテリー電気自動車に対する消費者需要の急増に追い付けている自動車メーカーはないが、トヨタはそれを満たそうとの試みすらしていない」と主張、「トヨタが迅速にEVに移行することは可能であり、そうしなければならない。さもなければ衰退のリスクにさらされる」と述べているそうです。

 

 

EVシフトは理想的なアプローチか

 記事によれば、世界の一部の市場でEVシフトが大方の予想よりもかなり速く進んでいるといいます。

 中国、欧州で先行し、この後、米国でも需要が急増すると予想されているそうです。既に昨年12月末までの北米でのEV関連製造への投資は280億ドル近くに達しているといいます。GMなどの既存の自動車メーカもEV強化のペースを上げ、25年にGMのEV販売が25年には、テスラを抜く可能性があるとの指摘もあるといいます。

日本の半導体業界や家電業界は、イノベーションを通じて自社製品のコモディティー化を回避することに失敗し衰退していったが、日本の自動車メーカーが同じ轍(てつ)を踏むのではないかと懸念する声もある。(出所:ブルームバーグ

「EVは一般的に従来の自動車ほど多くの部品を必要としない」。

 日本の自動車メーカーや政府指導者が完全電気自動車への移行を推進することに消極的なのは、部品メーカーや下請け業者の幅広いネットワークにも打撃を与えると恐れているためと、記事は指摘します。

(写真:トヨタ自動車

そんなトヨタを海外現地は歓迎する

 一方のトヨタ自動車日本自動車工業会の会長も務める豊田社長は1月5日、東京都内で開かれた新春賀詞交歓会に合わせてコメントを発表しました。

「今年のチャンスを生かせなければ日本の未来はない」 自工会・豊田会長 新年あいさつ

日本では、そんな私たちに対して、「ありがとう」という言葉が聞こえてくることは、ほとんどありません。(出所:トヨタイムズ)

 冒頭、豊田社長は、昨年訪問した米国や欧州、アジアで感じたことに触れ、海外現地では、日本の自動車産業が現地に根付き、その国や地域の成長に貢献することを「当たり前のことではない」と感じていただいていると指摘、そして、「私たちの存在に感謝し、期待をしてくださる」と述べています。

 環境問題における国際的な批判は何のそのということころでしょうか。

 

 

賃上げ、新たなる中間層を増やすために

 年が明けると、春闘の話題が盛り上り、賃上げの議論では、「単年」の「ベア」ばかりが注目されるが、これまでの分配の実績は注目されないと豊田社長はいいます。

この10年以上、私たちは全産業平均を上回る 2.2%の賃上げを続けております。

雇用を維持するだけではなく、コロナ禍の2年間、22万人の雇用を増やしております。平均年収を500万円と仮定すると、1兆1000億円のお金を家計に回した計算になります。(出所:トヨタイムズ)

 そして、「日本では、『ありがとう』の声はほとんど聞こえてこない」と豊田社長はその真情を吐露します。

「当たり前のことに感謝しあい、頑張っている人をたたえ、応援する」。さらに「今日よりも明日を良くするために、みんなで必死に働く」。

「その結果、成長し、分配して、「中間層」を増やすことで、私たちは豊かになってきた」といい、「日本は、この強みを忘れてしまったのでしょうか? 忘れたなら、思い出せばいい。私はそう思います」と述べます。

(写真:トヨタ自動車

批判と期待

 豊田社長のコメントは、自動車産業で働く人々に対する感謝、「ありがとう」で始まります。彼らの努力に報いることがまだ十分にできていないとの思いもあったりするのでしょうか。

日本では「ありがとう」の声が聞こえてこない、自工会の豊田会長 | 日経クロステック(xTECH)

 一方、豊田社長は最近、日本政府やマスコミを批判するようになったと聞きます。「ありがとう」発言は、この会に参加した政府関係者やマスコミに向けられているのかもしれません。

 この賀詞交歓会には、 斉藤国土交通大臣や太田経済産業副大臣らが出席していたそうです。文脈、行間をきちんと読んでくれとのメッセージでもあるのでしょうか。

 

 

日本らしさ

「今年のチャンスを生かせなければ、日本の未来はない。この危機感をもって、自動車産業は必死に働いてまいりたいと思います」という言葉で、豊田社長はメッセージを締めくくります。

 この他にも、5月のG7広島サミットに言及し、「日本らしいカーボンニュートラルの登り方」を各国の首脳に理解いただく貴重な場といいます。また、10月の「ジャパンモビリティショー」は、「モビリティの未来」を世界に発信する機会になるといいます。

 そして、「G7」も「モビリティショー」も、「オールジャパン」の力が必要といいます。「そのためには、産業界も官民も、心ひとつに動かなければなりません」といいます。

 豊田社長らしい物言いなのかもしれません。

 感謝の気持ちなくして、官民が一致して難局に向かい、問題解決を図ることはできない、それではより良い明日を迎えることもない、もしかしたたら、もうこれ以上国民を犠牲にするなといってくれているのかもしれません。

 

「参考文書」

トヨタ、愛知の工場で風力発電 自家消費型で国内最大級: 日本経済新聞

日本らしい脱炭素化発信…トヨタ社長:地域ニュース : 読売新聞オンライン