成長と分配、その好循環で「新しい資本主義」を目指すのがこれからの日本なのだろうか。その実現を進める政権の看板政策について、日本経済新聞が日立製作所など企業トップにインタビューした。
経財相×日立・三菱商事・DeNA 新しい資本主義で対談: 日本経済新聞
「企業の内部留保が積み上がっているのになぜ賃金を上げられないのか」
と問われた日立製作所の東原会長は「日立だけで言うと、今後5年先を見たときにグローバルで勝てないと淘汰されるという恐怖感がある」と答える。
こうした経営者のマインドが賃上げへの障壁になってきたのだろうか。
欧州でトヨタへの風当たりが強まってる。日本社会が火力発電に依存しているのでトヨタの工場も火力発電で動いている。従ってトヨタ車を買うことは火力発電を容認することになる、という論理です。日本におけるエネルギー政策のあり方がグローバル企業の競争劣位に繋がってる。
— 山口周 (@shu_yamaguchi) 2022年1月13日
言いがかりのようにも聞こえるが、東原会長の言葉からすれば、これが現実で、トヨタを世界一から追い落とそうとし、その口実を探しているということなのかもしれない。
山口氏が指摘する通り、国の政策の問題もあるのだろうが、国がみなが思う方向に変わることがあるのだろうか。仮に変われば、それですべての問題が解決に向かうのだろうか。
そのトヨタ自動車の前身は、豊田自動織機。その中に自動車部が設立され、自動車づくりがはじまったことが後のトヨタ自動車となる。しかし、戦後のトヨタは人員整理をせざるを得ない苦しい状態にあったという。
大野耐一が作り上げたトヨタ生産方式には、2人の先人の叡智が生かされていた【前編】 | 経営トップの仕事 | ダイヤモンド・オンライン
ダイヤモンドオンラインによれば、当時のトヨタの生産性はフォード、GMの1/8しかなかったそうだ。
「3年以内に追い付け。それが出来なければ、日本の自動車産業は成り立たない」という指示が豊田喜一郎氏から、トヨタ生産方式の生みの親 大野耐一氏に出たという。
トヨタ生産方式の原点は、自分の目で見ての「見える化」で、目で見て、自分が判断してやることだと言える。(出所:ダイヤモンドオンライン)
これが今のトヨタの源流といってもいいのだろうか。
一方、豊田自動織機は会社名の通り今も自動織機を作っているが、この他にも「トヨタL&F」のブランドで、フォークリフトや自動倉庫、無人搬送車の開発から販売まで、多岐にわたる事業を展開しているという。
その豊田自動織機が自社工場で排出される二酸化炭素と水素を反応させるカーボンリサイクル技術の「メタネーション」の実証試験を始めるという。
民間ベースでカーボンリサイクル技術の取り組みが進めば、工場における有力なガスの脱炭素化につながる可能性が高いとニュースイッチはいう。数年かけて規模を10―50倍に引き上げ、将来は全工場への技術導入を目指すそうだ。
ボイラで発生する排ガスから回収したCO2を利用する。当初は1時間当たり5キロワット時の熱量のメタンを生成してボイラで活用する。
高浜工場にはすでに太陽光発電による電力で水を電気分解して水素を生成する施設があり、この「グリーン水素」を使ってメタンを合成する。できたメタンは再度ボイラで利用する。工場から発生したCO2を燃料にして蒸気をつくり、それを工場に戻す形でのエネルギー循環を想定する。(出所:ニュースイッチ)
ニュースイッチによれば、メタネーション実証は自社の低炭素化の動きを加速する目的に加えて、自社技術の応用範囲や、脱炭素に関連する一部技術の内製化の可能性を探る狙いもあるという。
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頼れない国もまた事業環境ということなのかもしれない。そうなれば、まずは自から問題解決を図るしなないのだろう。それが、これまでのトヨタの歴史なのだろう。
シンプルに捉えれば、コアとなる経営手法が確立されていて、なおかつそれが実践され、顧客志向を徹底していく。
ただ、まだトヨタにも力足らずのところもあるのだろう。トヨタのような企業があともう2~3社あれば、雰囲気は変わっていくのだろうか。
余談だが、ファーストリテイリングの柳井社長も大野耐一氏の「トヨタ生産方式」を買って読み、学ばれたという。
ただ熟読されたけれど、何が書いてあるのかよくわからなかったそうだ。その後、柳井社長は『トヨタ物語』という本を読んで、その内容が納得できたといいます。
ユニクロ柳井社長「僕がトヨタという"ベンチャー企業"から学んだこと」 自分なんてぜんぜん甘かった | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
確かに、生産でも販売でも、現場には文字にできない重要なことがいくつもあるんです。働く人間の意識、心構え、チームワーク。そういったものは文字にすることができないし、ビデオに撮ってもわからない。指導者が現場に行って、やって見せて、そして、自分の言葉で伝えなくてはならない。大野さんはそうやってトヨタ生産方式を伝えたのでしょう。(出所:プレジデント)
「この本は生産方式を解説する本ではない。ここに書いてあるのはトヨタの本質です」と柳井社長はいう。