Up Cycle Circular’s diary

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【続く物価高騰】なぜファーストリテイリングは驚くほどの賃上げが実現できるのか

 

 東京都区部の昨年12月の消費者物価指数が、前年同月比で4.0%上昇したといいます。この指数は、全国の物価の先行指標といわれているそうです。理由は変わらず、 原材料高や円安を背景にした価格転嫁が続いているといいます。

東京の消費者物価40年8カ月ぶり4%台、食料品けん引-昨年12月 - Bloomberg

 諸外国と異なり、これといった有効な対策が政府・日銀によって取られていないのだから高騰が止まることはないのでしょう。

 一方で、企業は価格高騰を吸収しようとする努力よりも、転嫁する努力が勝っているようなのだから物価高騰が止まることは当面なさそうです。

 そうなると、期待は賃上げ、この高騰分を吸収することはできるのでしょうか。

 

 

なぜファーストリテイリングは大幅な賃上げができるのか

 そんな中、ファーストリテイリングは賃上げニュースには驚きます。3月から国内従業員の年収を最大4割引き上げるといいます。既に、パートやアルバイトの時給の引き上げも実施し、国内の人件費は約15%増える見込みだといいます。

ユニクロやアステラス、給与の世界共通化進む: 日本経済新聞

 記事によれば、製造から販売まで様々な工程でデジタル化を進めて生産性を上げることで、人件費増は吸収できるそうです。

 こうした前例があるのだから、同じ趣旨のことをすれば、どの企業も同程度の賃上げはできるということではないでしょうか。

 それともファーストリテイリングがグローバル企業だから成し得ることなのでしょうか。また、製造小売業だから、より効率化を進めやすいのでしょうか。

 製造小売業は「SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)」とも呼ばれ、企画から製造、販売までを垂直統合させ、中間流通業を排し、サプライチェーンのムダを省き、消費者ニーズに迅速に対応できるビジネスモデルといいます。リードタイム短縮が可能となり、生産調整をしやすくなる一方で、在庫リスクがつきまとうといいます。

 こうした特性を知り、それを活かすことに徹すれば、さらなる効率化は可能になるのかもしれません。また、効率化推進においては、最新技術を上手に活用することが常套手段です。それが今であれば「デジタル」ということでなのでしょう。

 

 

藁がないのなら自分たちで米を作ればいい

 藁焼きのかつおのたたきを作る水産会社は、藁の入手が難しくなったことから、藁を確保するために自ら米作りを始めたそうです。

藁のはなし | 明神水産株式会社

 必要なものを外部からの調達に頼るのでなく、自ら作ることでその難局を乗り越えることができるということなのでしょうか。そうなれば外部に頼ることなく、自分たちで生産性の向上にも取り組みやすくなりそうです。その上、米を販売することで収益もあがりそうです。

 形は違えど、こうした取り組みがあれば、製造小売業に近づくのかもしれません。

食糧調達における買い負けリスクを機会にできないのか

 食料調達においても、もしかしたら同じことが言えるのかもしれません。

穀物争奪「日本は買い負ける」 昭和産業・新妻社長: 日本経済新聞

 世界的なインフレ、円安、原材料高に輸送コストの高騰、天候不順などが絡み合って、食料品の値上げが相次いでいるといいます。また、この状態は世界的な食料問題にもつながり、日本においては食料調達における「買い負け」の懸念があると記事は指摘します。

 

 

温暖化の影響による干ばつなどで耕作地が限られてきています。また、化学肥料や農薬の過剰使用による土壌汚染で土壌劣化が起きているエリアもある。一方、日本は農業事業者の減少と高齢化で休耕地(耕作放棄地)が42万ヘクタール以上あると言われているんです。(出所:日本経済新聞

 日本最大級の穀物を取り扱う昭和産業の新妻社長は、「日本は米以外のほとんどの食料を輸入に頼っています。非常に大きな調達リスクを抱えている状況なのです」といいます。

 そうであるのなら、自ら休耕地を活用して生産すれば確実な課題解決につながりそうです。自分たちは食品会社で農業は本業ではないと言って言い訳している状況ではないのでしょう。

シンプルに、創意工夫

「創意工夫」が求められているのでしょう。「創意」とは、新しい思いつき、今まで考え出されなかった考えのことをいい、 「工夫」は物事を実行するために、よい方策をあれこれひねり出すことをいいます。

 シンプルなことですが、こうしたことを忘れてはいないでしょうか。

 こうしたマインドがあれば、生産性は常に向上し、それが原資となって賃上げにつながるのではないでしょうか。

 

「参考文書」

SPA(製造小売業) | 用語解説 | 野村総合研究所(NRI)