コロナ特需の反動に加え、景気減速懸念で米ハイテク業界に人員削減の波が押し寄せています。「GAFAM」5社のうち、アルファベット、メタ、アマゾン、マイクロソフトの4社が顕著のようで、それぞれに1万人以上をレイオフしているといいます。
増やし過ぎた人員を減らし、成長事業への投資は続けるそうです。
その中で、アップルは例外のようです。他社に比べ効率的な採用を行ってきたがゆえ、大量解雇せずに済んでいるとの見方があります。
アップルが大量解雇しない理由、グーグルやアマゾンと違う経営の質 - Bloomberg
アップルの経営が他のハイテク企業に比べて優れていることを示すものだ。他社はパンデミック時のシグナルを明らかに読み間違えた。(出所:ブルームバーグ)
アップルの倹約志向
レイオフをする企業の多くはコロナ禍の最中に需要増を見込んで採用を増やし過ぎたことを認めているといいます。これに対し、この間のアップルの採用増は20%増にとどまっていたそうです。
アップルの経営陣は株主からの資金をどう管理し、どんな成長機会に投資すべきかしっかり見極めていることに他ならない、「アップルは根っからの倹約志向だ」とある専門家は述べています。
一方、メタのマーク・ザッカーバーグ氏は決算説明会で「効率」重視を繰り返し、アルファベットのスンダー・ピチャイCEOは、投資の「規律」強化を強調し、成長を追うあまり経営規律が緩んでいたことを素直に反省していたといいます。
新たな波
こうした米国大企業における人員削減は起業を増やし、スタートアップへの人材移動を促しているそうです。
米企業経営のダイナミズムと記事は指摘します。そうなのかもしれません。
ITバブル後の00年代にグーグルが育ち、リーマン・ショック後にフェイスブックが急成長したのが好例だ。今再び新興勢力の大揺籃(ようらん)期が始まったといえる。(出所:日本経済新聞)
米国から遅れて、やがて日本にも景気後退の波が押し寄せるといわれています。そのとき、古い雇用慣行に縛られたままで、その難局を潜り抜けることはできるのでしょうか。
リスキリング
テクノロジーが進歩すれば、それに合わせて企業内の教育や訓練が行われていなければ、その環境変化に対応できない、との言葉があります。当たり前のことなのかもしれません。
社員に求める職能要件が変わるときに、新たな職能の訓練をするのは会社の仕事である。(引用:「IBMを世界的な企業にしたワトソンJr.の言葉」)
また、ワトソンJr.は、そうしていない企業はそうすべきだし、自分の会社で社員を再訓練する代わりに、政府のプログラムを利用するのは経営者として間違っているといいます。
IBMの工場では新たな登場する製品へと転換するたびに、製造工程で次々と問題が発生し、工員ばかりでなく、管理職の人々にも影響していたといいます。新しい技術に対応する再訓練が求められ、ときには社員の四分の一が同時に再訓練を受ける部門もあったといいます。
教育と再訓練はどの部門にとっても重要で、営業担当者は仕事すなわち学習というのが日常であるはずだといい、また、カスタマーエンジニアなら常に最新の知識を得て、新たな技能を身につけなければならないといいます。
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「仕事」とは何だろうかと考えてしまいます。やらなければならない業務もあるのでしょうが、それを如何に効率化させ、その上でどれだけ学習する時間を確保できるようにするのかということなのかもしれません。
ワトソンJrがいうように、企業がそうできるように仕向けるべきなのかもしれません。そうあれば、停滞することなく成長があるのではないでしょうか。