Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

解決されない社会課題、進まないデジタル化、減少続く実質賃金

 

 戦後から復興、高度成長期を経て経済規模で世界2位の国に駆け上がり、先進国の仲間入りして長い時間が経過します。子どもの頃はそんな日本を誇らしく思ったりもしました。まだ現実をよく理解はしていませんでしたが、学校でならなう知識ベースにして進んだ国と思っていました。もうしかしたら当時はそうだったのかもしれませんが、最近はそうではなくなったとつくづく感じます。どこで道を違えたのでしょうか。

 デフレ経済に長く苦しむようになり、政府主導で様々な問題提起がなされ、また政策が実行されてきました。しかし、どれも効果的な対策とは言えず、問題は解決されていないようです。極端に悪化することはなかったのかもしれませんが、常に問題を抱え苦しい状況が続いていることは間違いなさそうです。

 

 

 そして今では、急激に変化する世界情勢についていけずに、置いてけぼりになりかけているようです。唯一、安全保障に関しては、米国と結託するという政府の努力の甲斐もあって何とかついていけているのかもしれません。しかし、それも乏しい財源では苦しく、新たに国民負担を求めなければ実現できないというのですから、何とも情けない話です。

 政権が変わるたびに成長戦略が見直され、新たな問題提起がなされ、その解決を求められるようになります。理不尽だなと思うことも多いのですが、仕方ないことなのでしょうか。号令を掛けるの国でも、実行するのは企業であり、一人ひとりの国民です。

 コストプッシュ型で物価が高騰するようになりました。それを上回る賃上げの実現が強く求めれていますが、その進捗は期待通りではないようで、実質賃金の目減りは続いています。生産性向上のためのDX(デジタルによる変革)、リスキリング、労働移動などなど..... 問題解決のため、また国がやらなければならないことを押しつけてきています。

 しかし、いつの時代においても、こうした政府主導による施策がうまくいったためしはないようです。いつまでこんなことが続くのでしょうか。

 また悪い事例を伝えるニュースが流されています。なぜにこうもうまくいかないのかと思ってしまいます。

人事コンサルからの警告 学び直し元年、迷走する日本企業:日経ビジネス電子版

岸田さん肝煎りの政策だし、投じる予算も「5年で1兆円」でしょう? 大企業はほぼ動き出していますね。でも「とりあえずeラーニング導入しました」にとどまっている会社が多い。これではオンライン学習サービス会社が潤うだけですよ。

おっしゃる通りです。社員からすると「講座を受けて何になるの? 」と思ってしまうのでしょう。(出所:日経ビジネス

 社会課題を解決しようとすると、利権が絡んでしまうようです。もしかしたら逆で、利権が社会課題を作っているといったほうが正解のような気もします。

 

 

 今では多くの企業が社会課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献すると、理念なりパーパスを謳っています。その姿勢がESG経営が問われるようになり、市場で評価され、株価も上昇とするのかと思いきや、総じて結果はそうなっていないようです。PBR(株価純資産倍率)は1倍割れとなっている企業が多数あるといいます。

PBR「1倍割れ」に集中砲火 株主が株価低迷を追及:日経ビジネス電子版

 LINEとヤフーを傘下に持つ巨大IT企業「Zホールディングス」もその一例で、PBR1倍割れが続いているそうです。

 6月に開催された株主総会では、PBRと株価の向上策に関する質問が株主から次々と上がったといいます。それに対し、出澤社長は「成長戦略をしっかりやり遂げることで応えたい」と繰り返したといいます。

 PBRの向上には、資本効率と成長期待を高める必要があるそうです。

 インターネットが登場し急速に発展した日本のテクノロジー企業の残念な結果といっていいのかもしれません。

時は1999年。孫正義が新興株式市場のナスダック・ジャパンの創設を表明し、対抗した形で東証が11月にマザーズを開設。2000年3月から4月の間には、藤田晋サイバーエージェント堀江貴文のオン・ザ・エッジ、三木谷浩史楽天が次々と上場した。日本のインターネットビジネスが大きく伸びる、激動の時代だった。(出所:Forbes)

 米国では、こうした日本企業に先駆けてGAFAが生まれ、グローバル企業に成長していきました。

 既に20年以上の時間が経過しますが、GAFAに追いつくと息巻いた日本企業はいまだにその野望を遂げることができていません。そればかりか、株価にみられるように成長期待もすっかりしぼんでしまったようです。

 

 

いまも、コロナ禍をはじめ、世の中が一変する体験を多くの人がして、同時に生成AIのような新しいテクノロジーが台頭している。95年当時のような『時代が変わる感』がすごくあると思います。いま、私が20代だったら、真っ先にその波に乗ったでしょうし、40代の経営者としても、乗ろうとしています。

Zホールディングス 川邊健太郎「20代は、リスクに楽観的であれ」 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 Zホールディングスの代表取締役会長を務める川邊健太郎氏の言葉です。どうなのでしょうか。新しい波が到来すると、それに上手に乗る。それで本当の意味で問題を解決して社会貢献できているのでしょうか。

 確かにインターネットが登場したときに、いち早くその可能性に気づき、その普及のための環境を整えるこには意味もあったのでしょうし、それが商売になったのでしょう。しかし、今では資本主義の根幹でもあるはずの株主満足も達成できなくなっているようです。

多くの人にとって、eビジネスの「e」は「easy」の「e」になったのではないであろうか。(引用:巨象も踊る ルイス・ガースナー

 さらにガースナは、「easyな金儲け、easyな成功、easyな生活、だが、骨組みまでそぎ落とせば、eビジネスも結局のところ、ビジネスなのだ。そして、本物のビジネスは真剣なものだ」と語っています。

 ルイス・ガースナーは、eビジネスの幕を開いたIBMの当時のCEOです。

勝者は安易な方法を避け、eビジネスがビジネスであることを理解する組織の中から現れる。(中略)そして、プロセスの変革、SCMの統一、知識を基盤にした企業文化の構築といった地味な仕事をいとわない企業だけが目に見え、持続する利益を獲得できる。(引用:巨象も踊る ルイス・ガースナー

 この本が発刊となったのは20年前の2002年のことですが、その時、ガースナは「政府機関、銀行、病院、大学、小売企業での仕事の方法が変わり、物理的な処理がデジタル情報の処理に変わり、組織がネットに拡大していく。この変革が起こってはじめて、個人が支払い、資金の移動、株式の購入、運転免許の更新などをまったく違う方法でできるようになる」と指摘していました。

 

 

 今になってようやく当たり前に語られるようになったDXもネットが産声を上げて間もない頃に語られていたことです。答えはもうその時からあったのに、20年経っても未だに実現できていないのが日本のようです。

 まだまだやらなければならないことが多々ありそうです、マイナンバーカードではトラブルが続き、運転免許の更新もまだ昔のままなのですから。

 政府が利権に振り回されることなく、自らそれを排除し、DXを推進し始めるとき、世の中が動くことになるのかもしれません。

 

「参考文書」

高まる「生成AI失業」の脅威 リスキリング熱後押し - 日本経済新聞