多くの企業がジャニーズでの性虐待の問題を受け、所属するタレントを起用した広告を取りやめることになりました。一方、「メディアの沈黙」と特別チームから指摘されたマスメディアの対応はどうなっているのでしょうか。
関連する各々の業界が、また個社それぞれが良心に従ってこの問題に向きあい対応していくべきなのでしょう。
人権デューデリジェンス
テレビ東京は、ジャニーズ事務所に対して、経営改革などの対応を急ぐように申し入れたそうです。
テレ東、ジャニーズに申し入れ 成果確認できるまで「新規の出演依頼は極めて慎重に判断する方針」【全文】 | ORICON NEWS
テレビ東京ホールディングスは本日、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」および政府の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に基づき、取引先との対話を通じて人権尊重を促進する人権デューデリジェンスの一環として、ジャニーズ事務所に対して、経営改革などの対応を急ぐよう書面で改めて申し入れました。(出所:ORICON NEWS)
テレビ東京は既存番組の出演者など契約済みのタレント起用を除き、10月の新体制発足で具体的な成果を得られたと確認できるまでは、ジャニーズ事務所への新規の出演依頼は極めて慎重に判断する方針といいます。また、今後も会社間の対話を続けていくそうです。リーズナブルな現実的な対応なのでしょうか。
責任ある広告主
広告を取りやめる企業が相次ぐ中、それとは一線を画す企業もあるようです。外資系の日用品大手のP&Gプロクター&ギャンブルジャパンは、タレントの起用を続ける一方で、再発防止に向けた具体的な行動計画を提出するよう事務所に求めているといいます。
P&G社長「責任ある広告主でありたい」 ジャニーズ起用続ける意図:朝日新聞デジタル
「責任ある広告主でありたい」と、ヴィリアム・トルスカ社長が朝日新聞のインタビューで述べています。
わが社には非常に高い倫理基準があり、サプライチェーンに関わる全員に同じ倫理基準をもってほしい。ジャニーズ事務所には、記者会見で発表した内容以上の再発防止に向けた詳細な計画を提出するよう求めています。その計画を評価して、再発防止に向けてどのように取り組むかを厳しく見ていきます。(出所:朝日新聞)
即断はせず、猶予を与えて改善を促すという姿勢なのでしょうか。それもひとつの判断なのでしょう。改善が進まないければ、その時はより厳しく判断するということなのでしょう。
個別契約
同じく外資系のアフラック生命保険はジャニーズ事務所との広告契約を解除する方針としたうえで、所属タレントに非はないとして、現在広告に起用している桜井翔さん個人との契約に変更することを検討しているといいます。
桜井翔さんと個人契約検討 アフラック、事務所は解除 | 共同通信
ジャニー喜多川氏による性加害は重大な人権侵害とし、事務所がこれまで発表している対応は不十分だと指摘、その上で「所属タレントの活躍の場が奪われてしまうことは遺憾」としたといいます。
わからないことではないですが、タレントだからといって特別に配慮する必要があるのでしょうか。タレントたちが自ら事務所を離れ、独立するとかの動きがあれば、それはそれでよいのでしょうが、過度な特別視は混乱を招きかねないような気がします。
政府・自治体
農林水産省が「ノウフクアンバサダー」に任命したTOKIOの城島茂氏のアンバサダー活動を当面見合わせる方針を固めたそうです。
TOKIO城島さんの起用見合わせ ジャニーズ問題受け―農水省:時事ドットコム
一方、福島県はTOKIOを起用した県産品のPR事業を継続するといいます。福島第1原発事故以降、TOKIOは風評被害払拭のための活動を続けてきており、県はポスターのほか、今秋放映予定のテレビCMでも、引き続き起用するそうです。県の担当者は「性加害については許されない行為。ただ、メンバーはずっと福島を応援してくれており、感謝がある」と説明したといいます。
しかし、政府の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」がある以上、それでよいのでしょうか。
政府もこの件について、関わりがあるのであれば、何らかの正式な態度表明が必要になっているのでしょう。国民感情を想えば、優先順位の高い課題であるような気がします。
海外メディア
思いのほか、海外でも多くのメディアがこの問題を報じているといいます。ジャニーズ事務所による謝罪会見はインドネシアの『ジャカルタポスト』やインドやスリランカのニュースサイト、アラブ首長国連邦のニュース衛星放送局アル=アラビーヤも取り上げれ、所属タレントのCM打ち切りについては、インドの『ニューデリータイムズ』も報じているそうです。
海外メディアは2000年時点でジャニーズ事務所性加害問題を報じていた、が? | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
情報が瞬時に世界を駆け巡るようになった現在だからこそ、ジャニーズ事務所の今後の対応が注目されると記事は指摘します。また、それは日本政府においても同様ではないでしょうか。
ファンクラブという存在
社名を変更すると、ファンクラブ全体の名称も変えなくてはならない。だが、会員の多くは社名変更を望んでいないという。(出所:デイリー新潮)
ジャニーズ事務所が社名変更しなかった特別な事情 会員1300万人、会費総額520億円の“ファンクラブ問題”があった(全文) | デイリー新潮
記事によれば、所属するタレントたちのファンクラブは日本一の規模で、全体の会員数は約1300万人にもなり、会費総額は1年で約520億円に上るそうです。「会員たちはCDを何枚も買い、同事務所のタレントが出演しているドラマはほぼ全て観てくれる。巨大な支援組織と言い換えてもいいだろう」と指摘しています。
ファンを想い、また所属するタレントを想うのなら、その期待を裏切らないためにも、事務所には毅然とした態度が求められているのでしょう。
やたらと何かと関連付けることはないのでしょうが、自民党とその岩盤支持層、また放送法にまつわる政府とメディアの関係を見ているような気にもなります。
「参考文書」
福島県、TOKIO起用を継続=テレビCM今秋放映へ | 時事通信ニュース
【中村竜太郎のタイガー&ドラゴン】ジャニーズ繁栄は歪んだ負の歴史の上に/芸能/デイリースポーツ online