周回遅れと言われ続けていたにもかかわらず変化を拒んできた日本にも少しずつ変化の兆しが表れ始めたきたのでしょうか。ここで変わっていかなければ、どん底に叩き落されそうな状況だということがようやく薄らぼんやりとわかってきたのかもしれません。
30年の長気に渡って続き慣れ親しんだデフレ経済が終わりを告げようとしているのであれば、これまでの常識が通用しなくなるということでもあるのでしょう。政府がいうリスキリングとは別に、学び直しをしてもよさそうです。
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、サプライチェーン改革を推進し、生産パートナーの集約を進め、原材料調達まで全工程を自社管理する生産体制を確立させていくといいます。
ユニクロが環境・人権念頭にサプライチェーン改革、生産業者集約へ - Bloomberg
世の流れになった人権や環境保護を念頭に、持続可能性と事業の成長を両立する新たなビジネスモデルへの転換を進めるそうです。
持続可能なサプライチェーン構築を服作りの上流工程まで拡大し、少数精鋭の生産パートナーに取引を集約。品質や生産体制、環境・人権対応などに関して生産の全工程で自社基準を適用し、サプライチェーン全体を管理することを目指す。また、生産拠点の多様化の観点から主要拠点である中国生産の拡大に加え、東南アジアでの生産が伸びるほか、インドでも生産を拡大していく予定だ。(出所:ブルームバーグ)
「LifeWear = 新しい産業」ファーストリテイリングが掲げるビジョンに合致していそうです。
これからやるのではなく、すでに始めているのだ。同社が販売する全ての商品について、どの産地のどういった品質の原材料を使って、どこの工場がどのように糸を造り、どの工場で生地として織られたり編まれたりし、どのように縫製されているかを、全てデータベース上で可視化している。(出所:日経クロステック)
サプライチェーンの専門家が驚きの声をあげています。
「2023年春夏シーズンからは、ユニクロの全商品で原材料レベルまでの商流を把握している」、「これは真にすごいことと言わざるを得ない......」と。
製造業の模範となるか、ファストリがサプライチェーン透明化の大作戦 | 日経クロステック(xTECH)
この専門家の反応の方が衝撃です。そんなに驚くようなことではないような気がします。時流に逆らうのでなければ、遅かれ早かれ、こうせざるを得なくなるはずです。これがもっとも効率的で効果であるのでしょうし、すでに取り組んでいる企業は他にありそうな気がします。
多くの企業はサプライチェーン上の透明性を向上させようと努力している。ただ、アンケートなどで実態を把握しようと努めているものの、結局は不透明さが解消されるまでには至らない。法令・人権順守などの点で懸念があったとしても、是正に向けて積極的に活動するまでの熱情は持ち合わせていない。(出所:日経クロステック)
本気でなくても、形式上は出さねばならない宣言もあるのだろうから...
「消費者がサプライチェーンの透明性に敏感になっていくことに影響を受けるのは間違いない」「企業はこれまで以上に、徹底したサプライチェーンへの姿勢を求められるだろう」とこの専門家はいいます。
こんな意識が変化の遅れを助長してきたのではないかと感じたりします。まずは専門家が自らこれからの時代に即した知識を学ぶ必要があるのかもしれません。
次なるトレンド「ネイチャーポジティブ」
生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」への注目が経済界で高まっているそうです。
次の世界的メガトレンド。動き出したネイチャーポジティブ経済 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
日本企業の多くがサプライチェーン上のトレーサビリティを追えていないという弱みが浮き彫りとなるはずだ。これには、大企業が調達の多くの部分を商社に依存している日本固有の産業構造が影響している。昨今では、半導体や木材といった需要が高まる原材料などで日本企業が国際的に買い負けする状況が起きている。商社からの調達が難しくなったとき、サプライヤーと直接交渉ができる関係をつくるという意味でも、トレーサビリティの確保は重要だ。TNFDを通じて、自然資本のレジリエンスだけでなく、ビジネスのレジリエンスの向上にもつなげてほしい。(出所:Forbes)
制約があってはじめて創造が生まれるといいます。「できる」と思って取り組めたとき、自分ならではの付加価値が生まれるそうです。これまでの数多くの制約があったはずなのに、それらを機会にできていなかったということなのでしょう。これをチャンスに変えることはできるのでしょうか。
かつてファーストリテイリングは、中国・新疆ウイグル自治区での強制労働の疑いが指摘された「新疆綿」で、米税関当局によって輸入を差し止める事態になりました。輸入禁止措置違反ということが理由と言われます。こうした苦い経験を通して、世界のトレンドに敏感に反応、他社より先んじて対応するようになったのでしょうか。
「参考文書」
日本企業はTNFDにどう向き合うべきか | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
「LifeWear = 新しい産業」 説明会を開催 持続可能な成長に向けたサプライチェーン改革を推進 原材料調達まで全工程を自社管理する生産体制へ | FAST RETAILING CO., LTD.
ユニクロ:ユニクロ、原材料まで把握 大手初、供給網一元管理 人権対応、苦い経験糧に | 毎日新聞
ファストリ、サプライチェーン改革で取引先を集約 | 日経ESG
「選択の科学」 本能と意志の力が生む神秘 | 日経BOOKプラス