フランスの非政府組織NGOが、強制労働や人道に対する罪の隠匿の疑いで、「ユニクロ」のフランス法人を含む衣料、スポーツ靴大手の4社をフランスの当局に告発したと発表したと共同通信が報じた。受理されるかどうかは不明だという。
それによれば、人権擁護団体など3組織と自治区内のウイグル族収容施設の元収容者が告発したという。
グローバル企業に成長したユニクロをみなが注目するようになり、その影響の大きさに故のことなのかもしれない。難しい問題だが、ユニクロに求められている使命ということなのだろう。
そのユニクロが、英国のBRAND FINANCE(ブランドファイナンス)が発表した「BRAND FINANCE APPAREL 50 2021(ブランドファイナンス アパレル50)」で、昨年9位から7位に順位をあげたという。
このランキングは、アパレル企業のブランド力を数値化したもの。1位は7年連続でNIKE(ナイキ)、「サステナビリティ」に力を入れるブランドが上位を占める。
Brand Finance Apparel トップ10 ※()は昨年の順位
1位 ナイキ(1位) 2位 グッチ(2位)5位 シャネル(8位) 6位 ザラ(6位)
7位 ユニクロ(9位) 8位 H&M(7位)
9位 カルティエ(5位) 10位 エルメス(10位) (出所:Fashionsnap)
この結果からしても、それだけ「ユニクロ」の発言に重さが増しているということであろう。
ユニクロを有するファーストリテイリングが決算発表の会見を4月8日に開催、社長の柳井氏が登壇したという。この会見の中で柳井氏は「ウイグルに関しては、これこそ政治的なことなので、ノーコメントとさせてもらいます」と発言したというが、今後のフランスでの状況次第で、難しい対応を求められることになりそうだ。
会見で柳井社長は「サステナビリティ」の考え方について、「自分の得になるとか、会社が儲かるかとかいうことではなく、地球や人類にとって正しいことは何かを考えて行動する」と述べたという。
今の世界は誰もが自分の損得、目先の利害だけを考えて、本気で人類の将来のことを考えようとする人があまりに少ない。このままでは地球は今の世代で終わりになってしまいかねません。私は強い危機感を持っています。今こそ、全地球を視野に入れて、人類全体の将来を考えることが必要です。
次の世代のために、この地球をどうやって残すのか。そのための企業活動とはどうあるべきなのか。こういったことを本当に真剣に考え行動する必要があります。 (出所:WWD Japan)
今までは知らず知らずのうちに環境や社会に負担をかけていたのかもしれない。その負担を無視していても、これまでは企業は利益を手にすることができた。その負担を別の誰かが対応することで、様々な問題をオブラートに包むことができていたのかもしれない。しかし、行き過ぎた経済活動はそのオブラートを溶かしてしまった。そして、自然の自浄作用の限度を突破してしまえば、ただ矛盾だけが顕在化する。
柳井社長の指摘然り、これからは、企業が「限度を突破したところ」を、企業が責任をもって修繕していく必要があるということなのであろう。カーボンニュートラルで求められる「実質ゼロ」と同じように、今まで地球にかけてきた負担を、企業の責任で元に戻していくということが求められる。
柳井社長の発言内容から「SX : サステナビリティ・トランスフォーメーション」という言葉を思い出す。
ファーストリテイリングは、「サステナビリティ」を追い求めながらも、「企業のサステナビリティ」(企業の稼ぐ力の持続性)も実現した好例といいのかもしれない。
楽に儲かる方法はないかを考えるのではなく、お客さまに一番喜んでもらえる商品は何か、社会のために最も役立つビジネスは何か。それらをどうしたら提供できるか、真剣に考え実行する。
最初から業界の常識を前提にするのではなく、服とは何だろうか。今の社会は服に何を求めているのか。全ての人にとって究極的に良い服はどんなものか。こういったことを愚直に問いかけ、考え抜いて、具体的な商品の形にすることから、LifeWearの発想が生まれました。 (出所:WWD Japan)
環境や社会への配慮を大前提にしつつ、短期的な利益を追求するばかりでなく、持続的な経営変革を続けてきた結果が今ある結果ということなのだろう。
「SX : サステナビリティ・トランスフォーメーション」とはこういうことなのだろう。
「世の中にとって良い企業、人々の役に立つ企業であればあるほど、大きく成長する」
そう話した柳井社長の言葉がすべてを表している。