Up Cycle Circular’s diary

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深刻なダイハツの認証不正問題、気になる真因、その再発防止策

 ダイハツの全車種が出荷停止になり、生産工場も稼働停止に追い込まれました。認証試験での不正が理由です。あってはならないことが起こってしまったようです。ダイハツへの信頼が失墜、社会に大きな影響を与えています。

「別会社になるくらいの抜本的改革が必要」トヨタ豊田章男会長がダイハツの不正問題に言及 - 自動車情報誌「ベストカー」

 親会社のトヨタ自動車も事態を深刻に受け止めているようです。トヨタ豊田章男会長は、絶対にあってはならない行為とし、いまダイハツ車へ乗るユーザー、納車を待っていたユーザー、事態を知らされていなかった販売店のスタッフやダイハツ従業員へ深く謝罪するといい、「迷惑をおかけして本当に申し訳なく思います」と語ったといいます。

 

 

「世界中の人々に、1mm・1g・1円・1秒に拘ったダイハツらしい商品を届けることを使命としています」、このスローガンが、いつしか社内で曲解され、不正へとつながっていったようです。

ダイハツ不正、スローガンの「1秒へのこだわり」が社内で曲解…第三者委「経営陣はリスク察知が必要」 : 読売新聞

「スローガンは企業である以上問題はないが、経営陣はリスクを察知する必要があった」と第三者委員会は指摘し、経営陣の責任を強調したそうです。

 ダイハツは、トヨタグループにあって、トヨタの小型車戦略を担ってきました。また経営トップもトヨタ自動車から受けれいたといいます。そうであるにも関わらず、その現場においては、トヨタ生産方式「TPS」が活かされていなかったのでしょうか。

  今後、「TPS」を徹底させ、組織風土を変革させるいくことになるのでしょうか。

 その「TPS」は「IE:インダストリアル・エンジニアリング」を基礎として、そこから発展したとものと言われます。

IE」は、最適ワークシステムを志向するエンジニアリング・アプローチで、人間、機械、ものおよび情報を総合し、最適(最経済)なワークシステムを設計・確立することをいいます(引用:「IEの基礎」藤田彰久)。

IEは改善技術」「IEの目的はコストダウン」との見方を「IEの基礎」の著者藤田は否定しないものの、そう捉えてしまうと、研究開発やマーケティングシステムに関わる課題、収益増大志向の課題、経営レベルでの課題などは扱わないということになりかねないといいます。

 現状の見直しにはじまる「改善」は重要としつつも、エンジニアリングである以上、本来機能は「設計」にあり、現状に立脚しながらも、他方では自由な発想からの飛躍や転換を試みるものであるとし、「最適システムを志向する」とのニュアンスの中に、「不断の、そして無限の改善」が含まれるとしています。

 

 

 また、藤田が説く「最適」という言葉には「経済性」が含まれるといいます。ただ「経済性」という言葉を狭く解釈すると、利益さえ得られれば環境問題や人間性尊重の問題はどうなってもよいというような最近にみられるような類の発想になることから、その誤解を避けるために「最適」という言葉を用いているといいます。

IEの基礎

IEの基礎

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「TPS」の基礎となっている「IE」を再考してみると、ここ近年にみられるようになった諸課題もシステムが持続的に改善されずに陳腐となって、時代に適合しないまま運用するために問題となり、それが不祥事や不正に発展しているのではないかとも推測できます。

 元来、システムは「仕事中心のシステム」と「仕事をする人間中心のシステム」を接合して成り立つものでなければならないといいます。システムも目的に対する手段に過ぎず、真に必要なものは正しい哲理組織を貫く共通理解、またタイミングよく行動することだと藤田は指摘します。さらにこのシステムが効果を上げ生産性を改善していくためには、トップの理解と意欲、またそれによってもたらせる全社的な空気づくりが何よりも大切といいます。

 新しいテクノロジーの登場などによる環境変化やそれに従って移ろいゆく人の心理を受け入れ、それに合わせて不断に改善、改革を続けていくことが求められるということでもあるのでしょう。

 

 

 トヨタ自動車では「TPS」は生産現場が主体で、事務や技術系の職場に導入されてまだ3~4年といいます。

 何が正常かよく分からない。納期がときどき変わるし、上の気分によって変わる場合もある。そういう職場においては、「異常管理」ができないと豊田会長は指摘します。

異常管理=正常ではないと分かるから、異常だけ管理すればいいのです。そうすると現場で、「あ、間違えた」というのが分かるから、管理者に相談しやすい。それができているのは、技能系職場なのです。(出所:Car Watch

 少々意外なような気がします。異常管理ができない職場において、異常管理ができるようにするのがまた「改善」の醍醐味のような気がします。技能系職場と同様にワークフローを定義し、定常業務を標準化(必要に応じてテクノロジーを活用して)させることができれば、異常管理できそうな気がします。豊田会長がいうるような「納期がときどき変わる」「上の気分によって変わる」これが異常であって、問題なのではないでしょうか。これを管理・マネージし、それを次の改善のネタにしていく。それを繰り返していけば、いずれ異常や問題は減少し、事務・技術系職場にも余裕が生まれることになっていくのでしょう。この余裕時間を時間を使って、最新テクノロジーを学んだり、自己を研鑽するための学びにあて「正しい哲理」を探求してみるのもいいのかもしれません。これらが次の高度な改善につながっていくように思います。

「TPSの本当の目的は仕事を楽にすること」と豊田会長はいいます。「楽(らく)」と書いて、「楽(たの)しい」となります。「やっている仕事は楽しいのか?」「まず自分が楽しくしよう」といいます。

 そういう職場になれば、誰も好んで不正や不祥事に手を染めることは無くなっていくのではないでしょうか。

 

「勤勉な国」日本で組織的不正が起こる根因 「アイヒマン実験」が教えてくれる教訓 | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン

 

「参考文書」

トヨタ 豊田章男会長にダイハツの認証不正問題について聞く 「174項目をしっかり説明していく。間違えた認証についてはやり直していく」 - Car Watch

ダイハツ不正生んだ風土 「で、どうするの?」現場追い込む管理職:日経ビジネス電子版

ダイハツが全車種出荷停止、不正64車種に拡大 「経営陣に責任」 | ロイター

<社説>ダイハツ不正 親会社の責任も重大だ:東京新聞 TOKYO Web