Up Cycle Circular’s diary

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【サステナビリティの要諦】過剰品質の排除に動き出すトヨタ

 

 トヨタ自動車が、「過剰品質」を見直し、仕入先の負担を減らすため、消費者の目に留まりにくい箇所や外から見えない部分を中心に、仕入先から調達した傷などのある部品を採用していると明らかにしたという。

トヨタ、性能に支障ない「傷アリ」部品採用 仕入先の効率・収益改善 | ロイター

 資材の高騰が続く中、サプライチェーン全体で生産効率を高め、仕入れ先の収益改善にもつなげるためとロイターはいう。

「過剰品質」とは、顧客が求めている以上の品質を提供することでもいうのだろうか。もちろん、緩和しても性能や安全などに影響を及ぼすことのない品質のことである。

 

 

「過剰品質」とは厄介な問題である。正すべきものと理解できていても、どこまで緩和できるかを決めることは現実的には難しい問題である。

 部品における傷などの外観不良は設備異常の予兆であったりする。使用する原料成分のばらつきによることもある。そうした変化点を見つけることができるのも外観などの不具合だ。鉄板表面の塗装に傷がつくのも、塗装面の微妙な摩擦の変化だったりする。

 客先でクレームにならないであろう範囲で、外観基準を設定し運用する。そこに異常が発生すれば、製造元である部品メーカと共同して調査の上、都度、使用可否を判断する。必要に応じにその対象部品が使用された商品のシリアル番号を記録しておき、客先からクレームがあれば、即座に対応できるようにしておく。一種のトレーサビリティである。電機会社に勤めていた時はこんな対応であっただろうか。

 トヨタが示したように外観を対象とすれば、「過剰品質」の緩和は可能なのかもしれない。ただ運用面で定着させていくためにはそれなりに労力がかかるのではなかろうか。

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(写真:トヨタ自動車

 ロイターによれば、トヨタは2017年年末から仕入先と過剰な品質と性能を適正化する活動を開始したという。

19年からは仕入先各社にトヨタ社員を送り込んで現場の悩みを直接聞き、仕入先と過剰になり過ぎない品質水準の合意形成に取り組んでいる。(出所:ロイター)

 

 

 どんなしくみをつくったのだろうか。キズなどの外観異常と原因系の相関なり、因果を突き止めたうえで、合理的な判断基準を設けたのだろうか。

「思ったより車(の価格や性能)が高くなってきているというのが活動の発端」と説明。(出所:ロイター)

 この改善がコストに転換されれば、一種のコストダウン活動ともいえる。また、それによって生産性も改善されるかもしれない。そうなれば一種のムダ取りともいえる。

 サステナビリティの勘所といっていいのかもしれない。過剰を止め、廃棄を少なくする。それによって、効率性がアップし、生産性も改善される。

例えば、3列目のシート格納時の固定用フックを手掛ける5次仕入先は、消費者にはまったく見えないフックの裏側でも傷などがあると全て廃却しており、不良品は毎週約5000個にもなっていた。トヨタが品質基準であいまいな表現の指示を出していたことも背景の一因で、適正化活動後はフックの不良率がこれまでの4分の1に減った。(出所:ロイター)

 トヨタの品質基準があいまいということはないのだろう。それだけ発生するキズが一定ではないということなのだろう。こうしたものもAI判定すれば、効率化できるのかもしれない。ただそれだけ投資する意味があるのかとの検討も必要になったりする。

 逆に言えば、人の目は優秀で、どんなに些細なもので見つけることができ、それによって思わぬ事故を防ぐこともできたりする。一方で、過剰生み出し、ムダを作り出したりもする。人間の弱みなのかもしれない。

 

 

 過剰は敵だと理解しつつも、基準は緩和しにくものである。顧客からのクレームがないとしても、その小さな異常が大きな品質事故につながることはないのだろうかと心配となる。

基準を緩和するのは「非常に勇気がいる」としつつ、仕入先の声も聴きながら、「外観は大事にするが、お客様があまり気にされない部位はもう少しグレード、見え方、シビアさを減らしてもいいのではないかという動きを広げている」。(出所:ロイター)

 品質は命取りになる。理論で説明できても、最後はKKD、経験と勘と度胸に頼らざるを得ない。

 アップルに製品を納めているころ、アップルは製品を分解した際の美しさもこだわっていた。顧客の目に触れない部品の色にまでこだわり、過剰品質ではないか思っていた。しかし、いつなんどき製品が分解されないかわからないし、美しくないと品質が悪いように見えてしまう。

 それは様々な商品にも言えることではなかろうか。たとえば形の悪い野菜がそうであるように。難しい問題である。