Up Cycle Circular’s diary

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反トラスト法で提訴されたアップル、巨大テックの功罪、遅れたままの日本

 欧米の規制当局がアップルなど巨大テクノロジー企業に厳しい目を向けているそうです。先日も米司法省が反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでアップルを提訴しています。

アップル、時価総額1130億ドル失う-米欧で訴訟や全面調査の動き - Bloomberg

  巨大テックが長年にわたり、支配的地位を利用して競合企業の動きを阻害し、利益を拡大してきたといいます。一方で、アップル製品の人気は世界のどこにあっても高く、日常生活の一部としての地位を確立し、それによってテックが有することに力に規制当局が一段と警戒心を強めているといいます。そして、今、国家と巨大テックの全面対決が始まろうとしているようだといいます。

 

 

 インターネットとコンピューティングの発展とともに成長、巨大化したテクノロジー企業によってもたらされた様々な新しいサービスによって、利便性は驚くほどに向上しました。しかし一方で、富の独占などの弊害も確認されています。また、急成長する生成AIにおいては著作権法の侵害などの問題も取り沙汰されています。

 ディープフェイクやデマがネット上に拡散され、クリックさせるための虚偽・誇大な表現「クリックベイト」も問題となっています。こうしたこともテック企業のビジネスモデルの弊害との指摘もあります。

AIが生み出す富をスター経営者に独占させない方法:日経ビジネス電子版

さらに大手テック企業は、検索機能やメールなどの「無料」サービスを通してユーザーから個人データや著作権保護対象の素材を採取し、これらを使ってAIモデルを訓練することで、莫大な利益とそれに伴う市場支配力を得ている。同業他社によるチェック機能が欠如する中、こうしたサービスの質は徐々に低下している。(出所:日経ビジネス

 生成AIなどの活用によって、これから始まるであろうシステミックな変革には個人の努力以上のものが必要になるといいます。

 しかし、圧倒的な力を持つ巨大テック企業が市場を独占し続けてしまえば、利益もまた独占され続けることになってしまいます。そうではなく、その利益が適正に労働者にも消費者にもフェアに公平に分配されるよう、政府が介入を進めるべきときが来ているといいます。欧米の政治家らが、巨大テック企業が労働市場に与える影響の検証に集中しているのは正しいことだが、こうした取り組みだけでは不十分ではないといいます。

 

 

 市場経済の繁栄には、政府と民間セクターによる市場の共同運営が不可欠になっているといいます。しかし、未だに巨大テック企業は、税負担を最小限にするためにさまざまな法の抜け穴を利用し、見方次第なのかもしれませんがサービスの質を悪化させ、それに加え著作権法違反の疑いも生じさせています。ビジネス優先で本来あるはずの暗黙の合意を弱体化させてきているとの指摘もあります。今こそ、変革の可能性を秘めた技術をすべての人に恩恵をもたらすために、効果的な制度的構造を確立すべきといいます。対決するのではなく、介入し規制が必要になっているのでしょう。

分断される世界

今、僕たちは情報過多の時代に生きています。インターネットの発達により、容易に世界中の情報に触れることも、発信もできるようになりました。しかし、その一方で、特にSNSの普及により、自分の興味や意見と近い人々だけをフォローすることで、情報が偏ってしまう、いわゆる「エコーチェンバー」「フィルターバブル」などはすでに広く認識されている問題ともなっています。

エコーチェンバーとは、自分と似た考えを持つ人々だけで固まることで、まるで洞窟の中で自分の声が反響するように、同じような意見ばかりが響き渡る状態を表す言葉です。SNSのタイムラインには、自分の興味関心に沿った情報ばかりが流れてくるため、知らず知らずのうちに自分の世界が狭くなってしまう。異なる意見や考え方に触れる機会が減り、多様性が失われていく。そんな中で、人と人との断絶が生まれ、社会の分断が進んでいるのではないでしょうか。

さらに、AI技術の発達によるレコメンデーションシステムの浸透も、この問題に拍車をかけています。AmazonNetflixなどのサービスは、ユーザーの行動履歴から興味関心を予測し、似たような商品やコンテンツを次々と提案してきます。確かに便利ではあるのですが、気づかないうちに自分の趣味嗜好に閉じこもってしまう危険性もはらんでいるのです。(引用:「本棚が開くドア - ブクログの原点と20年家入一真

 

 

 他方、プライバシーやセキュリティなどについては、テック企業に頼っている現実もありそうです。そこに国家がどこまで介入し、規制していくのかと問題があるのでしょう。それらをひっくるめて独禁法との関係も明確にしていくことが求められているということでもあるのでしょう。

 周回遅れの日本はこの問題にどう対処していくのでしょうか。今の政治では到底対応できそうにありませんし、かと言って、それに対応できるテック企業も存在しないように思います。まだまだデジタル後進国なのでしょうか。ある意味規制が強化されることによって、次の技術革新イノベーションや進歩がありそうな気がします。

 

「参考文書」

国家vs巨大テック、全面対決へ Apple独禁法違反の疑い - 日本経済新聞

米司法当局、独禁法違反でアップル提訴 スマホ巡り、巨大ITに逆風:時事ドットコム

本棚が開くドア - ブクログの原点と20年|家入 一真