Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【止まらない気候変動】熱海伊豆山の災害をみておもう気候変動の適応と緩和

 

「寒い冬よりは暑い夏のほうが好き」とのんきなことを言えたのはもう昔のこと。暑すぎる夏に、凶暴な大雨が続くようになり、最近では憂鬱な夏と感じます。

 昨日の熱海伊豆山付近の土石流の映像にはただただ驚きました。被災された方々にお見舞い申し上げます。

mainichi.jp

 映像を見ると、避けえない災害と思わざるを得ませんでした。 改めて「気候変動への適応」、「防災」の重要性を感じます。が、対処のしようもないとき、どうすればいいのだろうかと考えてしまいます。

 人命は非難行動で救えても、大事な資産が一瞬のうちに飲み込まれていってしまう。ほんとうに恐ろしいことです。

 

 

「脱炭素」、気候変動の緩和策のひとつです。

 しかし、即効性はなく、世界の国々がパリ協定の目標を達成し緩和があっても、それでも今より温暖化が進むというのだから、この先の未来を考えると憂鬱になるばかりです。

 それに加え、最近では無秩序なメガソーラーの設置などで、災害の危険性を高めているよう開発が多く見受けられます。何が目的でそんな危険なことをするのだろうかと、耳を疑いたくなります。

 奈良テレビ放送は、「平群町メガソーラー問題」をリポートしています。

nordot.app

 それによれば、奈良県平群町櫟原などの山林では、甲子園球場約12個分にあたる約48ヘクタールで、メガソーラーの建設が進められていましたが、開発業者が提出した書類に誤りがあったとして、建設工事が停止されたといいます。

 問題となったのは排水路の勾配だといいます。これを受け、「立地が適切だという判断をするのは申請者の申請書をそのままうのみにしないように、ガイドラインを作るようにという指示はしています」と新井知事が述べたといいます。 

 災害は起こらないだろうみたいな甘さがあるように感じてしまいます。開発業者にモラルはあるのでしょうか。

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「脱プラ」、間接的かもしれませんが、気候変動の緩和に役立つのでしょう。

 昨年7月1日からレジ袋が有料化され、コンビニでのレジ袋辞退率が75%を超えたといいます。少しばかり脱プラが定着し始めているのでしょうか。

 JCASTニュースがレジ袋メーカーをリポートしています。

www.j-cast.com

「国を恨んだりすることはないですね」。そう話すのは、セブン‐イレブンなどにレジ袋を提供してきた創業1905年の老舗「スーパーバッグ」。

 レジ袋有料化で大幅に売上を落としたといいます。

 

 有料化そのものについては、環境を重要なファクターとする世界的な流れと、その会社では理解を示しているそうです。

国にこうしてほしいというよりも、会社としては、消費者や企業のニーズや動きに即した商品を展開するのが重要だと考えています

マイバックや紙袋に向かうニーズの変化にうまく合わせた事業を検討しているところです。国を恨んだりすることはないですね。(中略)

レジ袋を元の水準に戻すのは無理があり、紙袋や紙器にシフトしたり、単価の高いバイオ関連製品、海洋で生分解する新素材を使った製品を主力にしたりする努力をしていこうと考えています。リサイクルできる、環境に優しいパッケージにしていこうということです。(出所:JCASTニュース)

 国が決めた施策の先には顧客がいて、顧客が望むことをして、その解決に役立てば、それは事業として成立するのでしょう。ずる賢いことを考えることが不必要に思えてなりません。こうした事業者が増えれば、いいのかもしれません。

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「気候変動への緩和」、企業が責任をもって対応することが求められているのでしょう。その「適応」、防災インフラなどの整備は国や自治体頼りになりますが、その実作業は企業が担っています。

 今、目の前で起きていることを真摯に受け止め、安全・安心の確立を進めてもらいたいものです。

 不正、不祥事を伝えるニュースでなく、明るいニュースが増えれば、少しは憂鬱な気分は改善されるのかもしれません。 

 

【荒ぶる気候変動】北米を襲う熱波、そんな中、国産バイオジェットがまた空を飛ぶ

 

 静岡県から関東地方南部で停滞する梅雨前線が活発化、大雨が続いています。

 近年多発するようになった大雨災害を目の当たりにして、この季節の大雨情報がものすごく気になるようになります。

 雨雲情報を見ていると、線状降水帯が出現するのではないかと心配します。

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(画像:tenki.jp AM7:50雨雲レーダー図)

 

 

北米を襲う熱波

 米ニューヨーク市を猛暑が襲い、全世帯と事業者を対象に節電を促す緊急アラートが出たといいます。電子レンジなどの家電やエアコンの使用を控えるよう呼び掛けたそうです。

 ブルームバーグによると、セントラルパークの気温は華氏98度(摂氏37度)を観測し、2013年以来の暑さとなったといいます。

www.bloomberg.co.jp

 記録的な熱波が北米を襲っています。

 カナダ リットンという小さな町では、観測史上最高となる49.4℃を記録したそうです。

 その小さな町を山火事が襲い、町の9割が焼失したといいます。

 

米国立気象局(NWS)によれば、ポートランドの気温は28日に華氏116度(摂氏47度)と3日連続で過去最高を更新し、シアトルでも観測史上最高の108度を記録。 (出所:ブルームバーグ

 米北西部の各地で、高速道路の破損や公共交通機関の混乱が生じ、計画停電を余儀なくされる電力事業者も出ているとブルームバーグが報じています。

www.bloomberg.co.jp

 気温上昇を背景に、天然ガス先物相場は約3年ぶりの長期上昇局面に向かっており、電力料金が上昇。東部の州でさえ電力不足に陥る恐れが浮上していると、ブルームバーグはいいます。

ヒートドーム現象

 BBCは、熱波の原因を上空の高気圧が熱い空気を閉じ込める「ヒートドーム」現象が起きたためと解説しています。

「ヒートドーム」現象では、停滞する高気圧が、加熱中の鍋の「ふた」のように機能する。BBCのニック・ミラー気象予報士によると、「ヒートドーム」は厳密には気象用語ではないものの、広範囲の高気圧が晴天と高気温をもたらす。高気圧が長期間続けば続くほど、熱波も続き、気温は日に日に上昇を続けるという。

北米大陸に現在かかる高圧帯は米カリフォルニア州からカナダの北極圏、内陸のアイダホ州まで、広大な範囲を覆っている。 (出所:BBC

www.bbc.com

 気候変動の影響なのでしょうか。

「気候変動が異常気象の頻発につながると専門家の間で言われているが、個別の気象事案を気候変動と結びつけるのは容易ではない」とBBCは指摘します、が.......

 

 

ユーグレナの国産バイオジェットがまた空を飛ぶ

 ユーグレナ社が6月29日、Japan Biz Aviation(JBA)が運航管理を行なうプライベートジェット機ホンダジェット エリート(HondaJet Elite)」に、バイオ燃料「サステオ」を使用し、鹿児島空港から羽田空港まで約90分間飛行したと発表しました。

 今回のフライトには800リットルの燃料が使用され、1970.4kg、約2tの二酸化炭素を排出するといいます。

 バイオ燃料も通常のジェット燃料と同じように二酸化炭素を排出します。が、その原料であるミドリムシも廃食油の原料も植物で、その成長過程では光合成によって二酸化炭素を吸収します。このため、燃料を使用して排出する二酸化炭素はオフセットされ、カーボンニュートラルの実現に貢献するといわれます。

www.euglena.jp

「日本の空をグリーンにするこの取り組みに一生懸命取り組んでまいります。この『サステオ』、サステナブルなオイルの生産量も順次拡大をして、みなさまに(バイオ燃料を)当たり前のように使っていただける、そういう時代を2050年までに必ず実現いたします。」と、ユーグレナ社長の出雲氏が、会見の中で述べたといいます。

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(写真:ユーグレナ

 ミドリムシは自然の中に存在します。そのミドリムシを大量培養し、その光合成によって二酸化炭素を吸収、ミドリムシ自体は食物関係やジェット燃料などに活用していく、そんなビジネスモデルに可能性を感じます。ただその実用化にはもう少し時間がかかりそうです。

 気候変動に対する即効性のある対策はないのでしょうか。毎年やって来るであろう猛暑を耐え忍ぶしかないのでしょうか。今年の夏、電力不足にならないことを願うばかり。

 

【バラ色でない脱炭素】まだまだ設置が求められるメガソーラー、強まる省エネ規制

 

 日本中の住宅の屋根や農地を太陽光パネルが埋め尽くす、そんなシナリオも荒唐無稽なものではなくなりつつあるとブルームバーグがいいます。

  国の脱炭素政策あってのことか、急激に太陽光発電が急拡大しているといいます。IRENA国際再生可能エネルギー機関によると、太陽光発電能力は20年時点で中国と米国に続き世界3位となっているそうです。

www.bloomberg.co.jp

 日本は主要国の中で、国土面積1平方キロメートル当たりの導入量が最大だといいます。それでも、50年時点の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を約5~6割にするためには、260-370GW規模の太陽光が追加で必要との見方を経済産業省が示しているとブルームバーグは指摘します。

 

  それによりますと、屋根置き型:107GW(ギガワット)規模、地上設置型:152GW規模、メガソーラー発電所:110GW規模。これまでに約67GW導入されてきたことからすると、その規模の大きさがわかります。

 この数字を是とするなら、相当大胆な施策実行がなければ、実現できないよう気もします。逆にそれだけ大胆にアクションできれば、必然経済成長するということでもあるのでしょうか。

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 省エネと効率性改善の必要性を痛切に感じます。

 国の脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会が6月3日に開催されました。

 日本経済新聞によると、国や自治体が公共建築物をつくる場合は原則として太陽光発電設備を設置し、再生可能エネルギーの導入量を増やすといいます。新築住宅での太陽光の設置義務化は見送ったそうですが、断熱材の活用などの省エネ基準を満たすようにするといいます。

www.nikkei.com

 外壁や窓に高断熱材を使ったり、高効率な空調、発光ダイオード(LED)照明を導入したりする対策が重要になる。

国交省の試算では、平均的な戸建て住宅で省エネ基準を満たすには約11万円の追加費用が必要で、光熱費が下がって回収できるまでに37年かかる。

補助金などの支援の拡充も模索する。 (出所:日本経済新聞

 

 

 米政府が、中国の太陽光発電関連企業5社が新疆ウイグル自治区で強制労働を行っているとして、その関連企業からの輸入を禁止したといいます。その影響が心配されます。輸入規制の対象となる太陽電池の主原料ポリシリコンの高騰、それに伴うパネルの高騰などの憂慮もあるようです。

business.nikkei.com

 そのポリシリコンの世界の供給量の45%は、新疆ウイグル自治区で生産されているといいます。

  国内ではシリコンに頼らない新たな太陽電池の開発が進んでいるようです。次世代の太陽電池として普及が期待されているのが、ペロブスカイト太陽電池。次世代の本命として実用化競争がすでに始まっているといいます。従来のシリコン系の太陽電池より製造コストの低減が期待でき、また、発電効率もシリコン系と同等の20%の水準までに達してきているといいます。

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(写真:GSアライアンス

 軽薄短小となれば、場所の制約がなくなり、効率化の改善は設置面積を縮小させることが可能になります。また、サプライチェーンの制約がなくなれば、シリコン系のような高騰の危機にさらされることもなく安定的な調達が可能になるのではないでしょうか。

 これまでの太陽光発電関連の様々な失敗の経験を活かして欲しいものです。無秩序な設置を抑制することも求められるはずです。適度に規制があることで、SDGsに準拠した持続的な経済成長にもつながっていくはずです。

 

【過渡期のSDGs】Jリーグと環境省が提携、萌芽する地域での活動

 

 サッカーのJリーグ環境省と連携して、気候変動対策や使い捨てプラスチックの削減、地産地消の推進などの取り組みを展開していくと発表しました。

www.env.go.jp

 オルタナによりますと、「ピッチがなければサッカーができないように、地球が健全でなければ経済も暮らしも成り立たない」、小泉環境相がこう語ったといいます。

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地域からの変革」を重要視する環境省は、地域に根差し活動するJリーグを「欠かせないプレーヤー」とみたようです。

 Jリーグ環境省が結んだ協定では、脱炭素社会や資源の再利用などに取り組む循環型の経済社会への移行を進めるため、普及活動などで協力することや、それぞれのクラブのホームタウンで地産地消の取り組みを進めるなどとしていると、NHKは解説します。

 

 

 都内自治体でも脱炭素の動きが広がっているようです。新宿区や北区が「ゼロカーボン」を表明し、稲城市では市営電力会社を検討しているといいます。

 建設通信新聞デジタルによりますと、新宿区では、民間事業者も巻き込んだオール新宿で脱炭素施策を展開する方針を強調しているそうです。

「牛込保健センター等複合施設の建て替えで事例を示し、未着手だった民生部門も工夫できることを伝えていきたい」と、新宿区の吉住健一区長が定例会見でこう述べたといいます。

www.kensetsunews.com

環境に配慮した電力調達や建て替え時の方策などを盛り込む。民間施設誘導に当たっては、再開発事業の補助金交付の際にZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を義務化するなどの仕組みを想定する。 (出所:建設通信新聞デジタル)

 こうした地方発の事例が日増しに増えているようです。SDGsや脱炭素も、黎明期を通り過ぎ、過渡期に移ったということでしょうか。

過渡期」、古いものから新しいものへと移り変わる中間の時期のことをいいます。過渡期を過ぎると、成長期を迎え、その後全盛期となります。

 過渡期には、さまざまな新たな取組があちらこちらに萌芽し、取捨選択されることで、次の成長につながっていくのでしょうか。

 

 

 上水道施設を利用したマイクロ水力発電を開始とリコーが発表しました。

 山梨県大月市に「東部地域広域水道企業団施設内小水力発電所」を設置し、6月から発電を開始したとのことです。

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(写真:リコー)

 今回設置された上水道施設向けのマイクロ水力発電システムは出力約20kWとのことです。リコーによりますと、従来のマイクロ水力発電の課題であった費用対効果を改善したといいます。

jp.ricoh.com

 太陽光発電は日差しがなければ発電できません。風力発電も風任せで、再生可能エネルギーは自然任せと思われがちです。 が、川や水道管を利用して発電する「マイクロ水力発電」なら、稼働率は高くなります。水道管は一日中流れが止まることはありません。

 そればかりでなく、水力発電は高効率に発電することができる再生可能エネルギーです。エネルギー損失は、水車の機械損失と発電機の損失だけという優れた発電方式なのです。

 水道設備の付加価値を高める、地域の再生可能エネルギーの普及促進につなげる、そうした想いをリコーは抱いているようです。全国各地に広がれば、エネルギーの地産地消に少し役立ちそうです。

 こうした小さな活動の積み重ねがあって、過渡期から成長期へと移っていくことになるのでしょう。そして、それが大きな変革となれば、SDGsも全盛期を迎えるようになるのかもしれません。

 

 「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

【沸騰するESG】ESGバブルと名ばかりのESG投信

 

 SDGsやESGが一般化してきたのでしょうか。それに呼応するかのように、「名ばかり」「ウォッシュ」、そんな言葉も頻繁に聞くようになってきました。

 ロイターによると、「ESG投資信託」について、金融庁が今夏にも実態把握に乗り出すといいます。投資信託を管理する資産運用会社や販売会社への聞き取り調査を実施し、問題がある場合は是正を促すそうです。

jp.reuters.com

 実態把握の結果を踏まえ、金融庁はESG投信のルール整備も検討し、年度内にも「ESG」の名称を冠する際の定義や基準について方向性を示すことを視野に入れているといいます。

 多くの企業が脱炭素計画を開示するようになり、すべてがESGに該当するのかといえば疑問も沸きます。一定の基準、定義があった方がよいのかもしれません。

 

 

 銘柄選びの基準が不透明な「名ばかりESG」もある、運用成績が必ずしも良いとは言えず、金融庁は目を光らせていると朝日新聞が言います。

 アセットマネジメントONEの投資信託商品「未来の世界 ESG」。この人気投信に金融庁が昨年12月、疑問を呈したそうです。

www.asahi.com

より丁寧に銘柄選定の基準などを説明すべきではないか」。

組み入れ銘柄が既存投信の「未来の世界」と9割も重なり、それらがESGにどう取り組んでいるのか不透明。「名ばかりESG」とも見える商品性に対する異例の注文だった。 (出所:朝日新聞

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 GPIF年金積立金管理運用独立行政法人の前経営委員長平野英治氏がブルームバーグのインタビューに答え、ESG投資に対してコメントしています。

今はESGバブルのよう。光と影を過不足なく認識することは大事

政府が気候変動問題に力を入れ始めたこともあり、GPIFは本来の姿に戻り、「本当にESGはもうかるんですか」といった分析が必要だと語った。ESGを巡る基準の標準化についての検討も必要だと主張した。 (出所:ブルームバーグ

www.bloomberg.co.jp

 ブルームバーグによると、GPIFの運用資産約178兆円のうち、ESG指数に連動するのは外国株対象も含め約7兆円だそうです。

 

 

 金融庁の動きが気になります。

「ソーシャルボンド検討会議」が継続的に開催され、ソーシャルボンドの発行に当たってのガイドラインの策定が検討されています。

www.fsa.go.jp

 この他にも、金融審議会では、「企業情報の開示のあり方に関する検討」なども検討され、ESG要素を含む中長期的な持続可能性に関する開示の充実などについても議論されているようです。

 外堀が埋まれば、ESG投資、ESG投信などについても定義しやすくなるのかもしれません。まずは一度整理した方がよさそうです。

 宮城県登米市バイオマス発電所の建設が計画されているといいます。事業を企画するのは東京の都市開発研究所。地域住民が清流の水質悪化を懸念しているといいます。

kahoku.news

 こうした案件を進める事業者はESG投信の対象となるのでしょうか。

 また、アマゾンや楽天などはどうなのでしょうか。どちらもサスティナビリティには積極的な印象があります。

www.businessinsider.jp

「名ばかり」「見せかけ」とは何かもわかるようになるといいのかもしれません。

 

【SDGs社会の矛盾】続く不祥事、マッチングサイトの憂鬱

 

 ベビーシッターのマッチングサイト「キッズライン」に登録しているシッターが利用者宅で窃盗事件を起こしていたといいます。

 キッズラインの登録シッターの事件が絶えません。昨年、利用者への強制わいせつなどの疑いで相次いで逮捕された事件がありました。そればかりでなく、今年1月には法律で義務づけられている都道府県への届け出をしていないシッターがいるなどの問題を内閣府から指摘されていたともいいます。

www.asahi.com

 ここ最近、こうしたマッチングサイト絡みの問題がたびたびニュースになっているようです。

 利用者にとってはありがたいサービスかもしれませんが、不正の温床になりかねず、ビジネスモデル自体への危惧も指摘され始めているようです。

 

 

 「キッズライン」のようなマッチングプラットフォームは、あくまでユーザーとサービス提供者をマッチングする場とBusiness Insiderはいい、その問題を指摘します。

プラットフォーム運営会社がサービスに対する責任を直接は取らない

運営会社による、サービス提供者への審査や教育は直接契約や雇用に比べれば簡易で、ゆえに運営会社側のコストを抑えることができ、利益を上げられるモデルだ。 (出所:Business Insider)

www.businessinsider.jp

「問題を防止する努力は審査や教育にコストをかけることで実現するはずだが、マッチング型は審査や教育を簡略化することで手数料の大半を自社の利益にすることができる構造になっている」と説明します。

 また、そもそも保育の領域で、利益と質の担保を両立しえるのかと疑問も呈しています。

 

 

 「関係者が悪いことをしない前提で設計されているビジネスモデル」というのは、ITmediaビジネスオンライン。同じマッチングサイトであるウーバーイーツを事例に、こうした問題は「性善説の想定外」や「欠陥」といったワードが用いられ語られるといいます。

www.itmedia.co.jp

 従来なかったサービスが、ギグワーカーという新しい働き方を生み出しました。

 その「正」の面からすると、それは働き手にも利用者にも、双方にとって、便利で理想なものだったのかもしれません。

 しかし、時間が経つと直ぐにそれを悪用しようする人が現れます。それにしても多いような気がします。「想定外」というのも、それはそれで理解はできます。

 今まで人を抑制していた箍がなくなったことで、「不善」が顕在化するようになったのでしょうか。 

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性善説が示すのは、「人は生まれつきは善であるが、その後の人生で悪行を学ぶ」というものであり、性悪説が示すのは、「人は生まれつきは悪であるが、その後の人生で善行を学ぶ」というものだ。そうすると、性善説であっても性悪説であっても悪は生じ得るのだ。 (出所:ITmediaオンライン)

 と記事は指摘しますが、違和感をおぼえます。

性善説」も「性悪説」も前提は異なるにせよ、そのオチ、言わんとすることは同じで、「学習」の必要性を説いているにすぎません。

性善説」は、人間の本性として「善」(四端)を、努力して伸ばさない限り人間は禽獣(きんじゅう)同然だとします。

 一方、「性悪説」は人間の本性を「欲望的存在」として、学問など「偽」(人為の意)を後天的に身に付けることによって公共善に向うとします。

 両者も「人間の持つ可能性への信頼」が根底にあります(参考:Wikipedia)。

両者の違いは、孟子性善説)が人間の主体的な努力によって社会全体まで統治できるという楽観的な人間中心主義に終始したのに対して、荀子性悪説)は君主がまず社会に制度を制定して型を作らなければ人間はよくならないという社会システム重視の考えに立ったところにある。 (出所:Wikipedia

  この思想をもとに、プラットフォームビジネスを考えれば、学習なきシステムでは「私欲」が跋扈(ばっこ)してもおかしくないということなのかもしれません。

 荀子が指摘するように、システム的な工夫で私欲を抑えることが求められているのでしょう。

 

 記事は、出前館の事例を示し、雇用契約に基づくアルバイトや正社員が中心で、本人確認や教育を行き届かせようとする例もあると指摘します。しかし、その出前館は赤字で苦しむといいます。

 社会はSDGsとESGを目指し、公益と利益の両立を求めています。マッチングサイトはその流れに抗っているようにも見えす。

 システム利用者の便益が確保してはじめて、サービス事業は利益をあげられるはずです。利用者保護が優先されず、利益をあげるようであれば、それこそサービス事業の「不善」になりはしないだろうと危惧します。

 過ぎたるは猶及ばざるが如し、中庸の精神が求められているのでしょう。それはSDGsの概念に近いのものかもしれません。 

 テクノロジーはこの問題を解決できるのでしょうか。「性悪説」の荀子が指摘するようにシステムに私欲を抑制する仕掛けを設けることが求められているのかもしれません。

 

jp.reuters.com

 G20の労働相会合は共同声明で、ギグワーカーが雇用形態の分類上、「正規従業員と同等の保護と権利」が受けられないような状況を避けるとロイターが報じました。

 

 こうした声明を聞くと、マッチングサイトが搾取の温床のように聞こえます。「ギグワーカー」の保護に向けて規制を強化することで合意されています。その前に、SDGsの精神に従い、改善されていくことを期待します。

 

【財閥系商社と気候変動】脱炭素は商社の重石なのか

 

 三井物産が、インドネシア・ジャワ島で運営している「パイトン石炭火力発電所」などの持分株式全てを売却することで合意を得たと発表しました。

www.mitsui.com

 三井物産伊藤忠商事は積極的に脱石炭を進めているといわれます。それに反し、三井と同じ財閥系商社といわれる三菱や住友は動き鈍いといわれます。

 住友商事には、オーストラリアのNGO「マーケット・フォース」が気候変動対策の強化を求める株主提案を提出しました。その株主提案は否決されましたが、東洋経済オンラインの報道によりますと、20%の賛同が集まったそうです。

toyokeizai.net

 NGOであろうがなかろうが、株主の声を無視することはできません。今回は可決されませんでしたが、住友商事は3月26日に株主提案を受けた後、「気候変動問題に対する方針の見直し」を5月7日に公表したといいます。

 今回のNGOによる住友商事への株主提案は、商社に対しては始めただといいます。それだけ、商社のアクションが他の業界に比して遅いということなのかもしれません。

 

 

 財閥系商社、資源に強いというイメージがあります。旧財閥が鉱山などを多数保有していたことの影響があったりするのでしょうか。

「人の三井、組織の三菱、結束の住友」といいます。

 三井は高名な経営者を何人も輩出し、日本の経済をリードしました。三菱の創始者は、坂本龍馬の盟友岩崎弥太郎。その弥太郎の強烈な個性の元、組織の三菱が出来上がったのかもしれません。結束の住友、その結束の強さが「脱炭素」の足枷になったりするのでしょうか。

 商社のビジネスモデルはわかりにくく、「日本の商社は、要するにハンズオンの投資ファンドだ」と説明する人もいます。それだけ、取引先との関係性が強いのかもしれせん。

 私が入社した電機会社は住友グループでした。当時の上司には何か困ったことがあったら住友商事に相談しろといわれていました。それだけ結束が強かったのかもしれません。実際、仕事の上で何度も住友商事には助けていただくことになりましたが....

 

 

 

そんな経験からしても、商社が「脱炭素」に強く動き出せば、大きな変化が起こりそうな気がします。商社がスコープ3でのカーボンニュートラルを目指せば、その影響は途轍もなく大きなものになるのではないでしょうか。そのサプライチェーンは膨大であり、物流を含れば、排出量削減に大きく貢献できるはずです。

www3.nhk.or.jp

 遠い過去において、人々を豊かにしてきたのは、資源であり食糧であり物資、そして外貨でした。それらを世界中からかき集めてきたのが商社の役目でありました。

 時は移ろい、人々が必要としているものも大きく変わっています。

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 三菱の第四代社長 岩崎小弥太の頃の経営理念は「国家社会に対する奉仕-国利民福」で、小弥太は次の言葉を遺しています。

我々は国家より斯くの如く生産をいう重大な任務を委託されるのであるから「国家の為にする」ということが事業経営の最終目的であり、この目的のために最善の努力をすることが我々の理想でなくてはならぬ。この重要な任務を遂行することが、我々の職業の第一義である。

正当な利益を得ることも重要な目的ではあるが、それは第二義であり、第二義は何処までも第二義であって、第二義のために、第一義の使命を犠牲にすることは断じて許されない。 (引用:「岩崎弥太郎と三菱四代」河合敦)

 

  戦前の三井物産を仕切っていたのは石田禮助氏。

 商社の仕事は口銭だけではだめ、スペキュレーション(投機)も含め、新しく作り出すものが加わってはじめて大きな稼ぎができる。満州の大豆の場合、取引所を通じて買うのは易しいが、それでは決まった口銭だけだけで終わる。しかも大量に..... (引用:「粗にして野だが卑ではない」城山三郎

石田は「日本の人口問題と食糧問題解決にためには、とにかく外貨がいる」といって奔走していたといいます。そして、「モラルあってのソロバンである。正々堂々働き、正々堂々生きよ」と石田が話す言葉を城山氏は紹介します。

 

  彼らが活躍した時代とは異なった問題を抱えている日本。脱炭素が世界的な命題になり、「脱石炭」が喫緊の課題になっています。逃げてはいけない問題なのでしょう。先人たちの功績に恥じぬよう、商社には振舞って欲しいと願うばかりです。

 

 

 城山三郎著作の「雄気堂々」に、大河ドラマ主人公の渋沢栄一三井物産初代社長 益田孝、三菱の岩崎弥太郎との交流が描かれています(どこまで史実に沿っているかは不明ですが)。

 明治の頃とは時代が違いますが、何か近い雰囲気もあるのではないかと思ったりもします。それまでの社会体制が崩壊し、新たな社会が誕生したのが明治ではなかったでしょうか。それまでの価値の大転換だったのかもしれません。今まだあってものが急速に価値を失うということでは、この時代もまた同じではないでしょうか。

 世界が「気候変動」という大きな課題に立ち向かっているこの時代、商社にとっては大きなビジネスチャンスがあるように思えてなりません。事業ポートフォリオを鋭く変えていくことが求められているのではないでしょうか。