Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【脱炭素】気候変動対策と脱資源の主導権争い

 

 EU欧州連合2035年以降の域内の新車を、排ガスを一切出さないゼロエミッション車に全面的に切り替えることを提案する方針だといいます。

 ブルームバーグによると、欧州委員会は、30年からは新車の排ガスを今年の水準から65%削減し、35年からは100%削減することを義務づける計画だといいます。

www.bloomberg.co.jp

 こうした環境基準の厳格化は、各国政府に自動車充電インフラの強化を求める規則で補完されるそうです。

 ゼロエミッション、廃棄物を一切出さないということ。「emission」とは、放出物、排出物を意味する英語で、煙突からのばい煙や自動車からの排気ガスなど大気中に排出される大気汚染物質を意味します。

 EUは、EVやFCVに傾注し、e-fuel、バイオエタノールなどにCO2などのエミッションなどを伴うものは許さずとの姿勢なのでしょうか。

 

 

 原油価格が高騰しています。1バレル=US$75を超えているそうです。

 脱炭素には追い風になりそうですが、足下では経済への悪影響が心配されているようです。

jp.reuters.com

  原油価格の高騰は、クリーンエネルギーへの移行を迫られているエクソンロイヤル・ダッチ・シェルなどの石油大手にも追い風のようで、風力や太陽エネルギーなどに投資できる軍資金が増えるだろうとロイターは指摘します。

米エネルギー省は最近の報告書で、プラグインハイブリッド車の維持費が1マイル当たり0.06ドルと、内燃エンジン車の同0.10ドルを下回っていると指摘した。油価が上がればこの構図に拍車が掛かるだろう。(出所:ロイター)

 

 石油価格の上昇はクリーンエネルギーの追い風になりそうだとロイターはいいます。

 価格上昇の悪影響抜きで、脱炭素を志向するライフスタイルへの転換のインセンティブになるのでしょうか。

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「資源争奪の世界史」を日経スタイルが紹介しています。

  資源国や石油メジャーが石油や天然ガスといった資源をコントロールすることで世界の主導権を握ったように、エネルギー転換においては、石炭をはじめとする従来型の化石燃料依存から脱却する技術を制する者が主導権を握ることになる。
(引用:「資源争奪の世界史」149ページ via日経スタイル)

 再生可能エネルギー、地理的な差はありますが地球上の誰もが等しく使えるエネルギーです。

 サーキュラーエコノミー循環型社会、新たな資源採掘を最小化し、今あるものを再利用する経済社会を目指します。

 つい最近まではその資源の権益を守るために争いを続けていました。利用する資源を変えることで争いがなくなるのであれば、それを推進しない理由はないように感じます。

 

 

 化石燃料に頼らない脱炭素社会の推進は、電化の推進とも言われます。まだ国内には乗り遅れている企業も多数あるようです。

 ブルームバーグによると、日本銀行が次の金融政策決定会合で、気候変動対応投融資を支援する新たな資金供給制度の骨子を公表するといいます。金融機関の利用残高に応じてプラス金利を付利することを通じて、日本経済のグリーン化を後押しする仕組みになるとの見方が出ているそうです。

www.bloomberg.co.jp

 欧州ではすでに中央銀行が気候問題への取り組みを主導いているといいます。一方で、中央銀行が特定分野に肩入れしたり、権限が際限なく拡大し、政府との責任の所在が曖昧になってしまうことを懸念もあるといいます。

 深刻になった気候変動の問題が未来が描けないなら、こうしたことも許されるのではないのでしょうか。これまでの画一的な経済の概念を改めていくべきではないかとも感じます。

 

【変わり始める太陽光発電の風景】新電力が始めるソーラーシェアリング、ソーラーカーポート

 

 鹿児島県と宮崎県、熊本県に「大雨特別警報」が発令されたといいます。またも大雨になっています。被害が拡大しないことを心から祈るばかりです。

weathernews.jp

 気象庁が今朝、臨時の記者会見を開き、担当官が「これまでに経験したことのないような大雨となっています......」と話されていました。こうしたたとえはどうなのだろうかと感じます。

 ここ数年で、嫌なになるほどに大雨被害を見てきています。梅雨末期の大雨が常態化しているように思います。表現を変えてもいいのではないでしょうか。

 

 

 静岡県伊東市で、メガソーラーの建設計画が「公共性ない」として不許可になったと毎日新聞が報道しています。

mainichi.jp

 このメガソーラーは訴訟にまで発展、高裁判断を受け、改めて不許可としたといいます。

 毎日新聞によると、小野達也市長は、隣の熱海市で土石流の大きな被害が出たことも踏まえ、「山の上の事業について新たな規制が必要だ。国にもっと厳しい規制をかけてほしい」と述べたといいます。

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(写真:みんな電力)

 その一方で、新電力のみんな電力が再エネ発電事業に参入、岡山県で自社ソーラーシェアリング発電所「原木シイタケ太陽光発電所」を稼働させたと発表しました。

太陽光パネルの下では、シイタケ菌を打ち込んだ自然木で「原木シイタケ」を栽培します。

原木シイタケは人工栽培による菌床シイタケと異なり、収穫量こそ少ないものの、農薬や肥料は使用しておらず、肉厚で豊かな風味が特徴です。

暗くて湿気のある環境で育つため、遮光率90%でも栽培ができ、ソーラーシェアリングに適した農作物といえます。 (出所:みんな電力)

minden.co.jp

 みんな電力は、農地や作物はそのままで、発電設備を設置でき、遮光ネットやパネルの角度で作物への光量を適切化できるなど、農家がソーラーシェアリングに挑戦しやすいシステムになっているとし、全国へソーラーシェアリングを普及拡大につなげていきたいといいます。

 

 

 中部電力は新電力のLooopと協業し7月15日から、法人向けサービスとし、大規模駐車場を対象としたカーポート一体型の太陽光発電設備(ソーラーカーポート)の自家消費サービスの提供を始めると発表しました。

miraiz.chuden.co.jp

 中部電力によると、工場や店舗などの駐車場に、ソーラーカーポートを架台も含めて初期負担ゼロで設置するサービスだといいます。駐車スペースはそのままに太陽光発電所を設置することができるようです。保守・メンテナンスは中部電力側が行い、顧客側は、使用電力量などに応じサービス利用料金を支払うといいます。

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(写真:中部電力

 街中や郊外にもまだまだ無理なく太陽光を設置することができるスペースがあることを思い起こしてくれます。ビルや住宅の壁面なども設置できるはずです。

 太陽電池が進化すれば、さらにその制約がなくなっていくのかもしれません。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 気候危機への適応としての太陽光発電の設置規制、気候危機緩和のための太陽光発電の設置加速推進、その使い分けを明文化しなければならないのかもしれません。

 太陽光発電が自然破壊を引き起こすことはもっての外です。それに加え、設置された太陽光発電が災害発生時に凶暴な武器にならないようにすることも求められているはずです。

 企業のモラル向上が求められています。

 

【SDGsは善か欺瞞か】持続可能な社会と脱成長の資本主義

 

 『人新世の「資本論」』、気になる本です。

かつてない環境危機を迎えている現代。

気候変動を放置すれば、この社会は壊滅状態に陥るが、それを阻止するには今の資本主義の仕組みを変えなくてはならない。(出所:MEN’S NON-NO

でも、資本主義を捨てた文明に繁栄などあるのか? 

世界的に注目を浴びる著者が、豊かな未来社会への道筋を具体的に描き出した画期的な警世の書 (出所:MEN’S NON-NO

 

 

SDGsは『大衆のアヘン』である」という文言で、この本は始まるといいます。

「それに衝撃を受けたという反響がすごくありました」と 、本の著者斎藤幸平氏がMENS NON-NOのインタビューで話しています。

 色いろな記事でこの本が紹介され、主張には大まか賛同はできるのですが、いくぶん抵抗感もあり、気にはなっても、読む気になっていませんでした。

環境の保全と経済成長を両立させようという動きが活発です。

でも、その両立は、本当は無理なんですよ。

科学者たちが警鐘を鳴らしているように、環境を守るためには脱成長するしかない。経済成長しながら、二酸化炭素の排出量をゼロにすることはできないのです。

だから、政府や企業がSDGsの行動指針をいくつかなぞったところで、気候変動は止められない。

むしろSDGsは“やっている感”を演出するだけの、アリバイづくりであって、目下の危機から目を背けさせる効果しかありません。 (出所:MEN’S NON-NO

www.mensnonno.jp

 少々過激と思えるような発言にも感じます。

 さらに、「レジ袋削減のためにエコバッグを買っても、オーガニックコットンのTシャツを買っても、ほとんど無意味です。それどころか、温暖化対策をしていると思い込むことで、今本当に必要とされているもっと大胆なアクションを起こさなくなってしまうので、有害とさえ言えるかもしれません」といいます。

 一理はあるかなと思いますが、今、誰かが行動しないと、何も変わらないのもまた事実なのかと。

 

 先日、ミドリムシユーグレナ社が自社製バイオ燃料を使った初フライトしたと発表しました。理論上、バイオ燃料を使えば、カーボンニュートラルに近づきます。

 この先、すべての飛行機がバイオ燃料を使えば、さらにカーボンニュートラルに近づき、気候変動の抑制に役立つかもしれません。

 ただ如何せん、まだ価格が1万円/リットルと高価過ぎて、誰も使うことができません。スケールメリットを活かさなければ、価格は下がりません。

いま何より求められているのは、二酸化炭素を削減し、しかも一番安く調達できる燃料のはずです。 (出所:Business Insider Japan)

 今の経済システムを是として、その中で最善を模索する。

www.businessinsider.jp

 ユーグレナ社はSDGsへの貢献を掲げ、様々な事業と活動を続け、「サスティナビリティ」、持続可能な社会の実現を目指しています。

 そのSDGsのゴールは2030年とされています。どれだけ目標に近づいていくのでしょうか。

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 「2050年には、世界は相当危機的な状況になる」と、人新世の「資本論」は主張します。

 2050年、ポストSDGsは、どんな世界を目指すことになるのでしょうか。脱成長、脱資本主義の世界に近づいていくのでしょうか。みなが、幸せを感じることができるようにする、そのことを忘れてはならないはずです。

 

【SDGsと善き社会】遅れる企業の対応が規制ばかりの社会をつくる 

 

 東京に4度目の緊急事態宣言が発出される見込みだといいます。悪い時には悪いニュースが続くもので、なかなか明るい話題を見出すことができません。

 東京オリンピックが始まれば、雰囲気が変わるのではないかと淡い期待を抱いていましたが、それもはかなき夢となりそうです。兎に角、深刻な状況にならないことを願うばかりです。

 

 

滴滴の株価が急落、それが意味することは?

 目を世界に転じてみると、中国配車アプリ大手の滴滴出行の株価が急落しているといいます。米国でIPO直後に、CAC中国国家インターネット情報弁公室が、アプリストア運営各社に対し、滴滴を除外するよう命じたことが発端と言われています。どんな波及があるのかと心配していますが、今のところ滴滴の株価下落だけにとどまっているようです。

 今回の中国当局の動きには少々驚きました。目的は何であろうかと。

 表向きは、個人情報の保護が目的のようで、データセキュリティーや国際間のデータ移動、機密情報に関する規則も改定するそうです。が.....。www.bloomberg.co.jp

「中国政府の戦術は2つの目標を持っているように見受けられる。企業幹部を締め付けつつ、中国よりも米国の投資家が主に痛手を被るよう仕向けることだ」と、ブルームバーグが報じたある市場ストラテジストの言葉で妙に納得しました。

 当局の行動に唖然としますが、 滴滴の側の「ガバナンス」の問題があったのかもしれない。事前にCACからの連絡があったというのだからもう少し慎重な対応も必要だったのではないでしょうか。 

太陽光発電の無秩序な開発にブレーキ =山梨県

 山梨県では、土砂災害の危険がある区域や山林などで、太陽光発電施設の新設を原則禁止する条例案が、県議会本会議で全会一致で可決、成立したといいます。

 無秩序な開発にブレーキを掛けつつ、防災や森林保全を重視した「地域共生型」の発電事業を推進する狙いと毎日新聞が報道します。

mainichi.jp

 熱海市で発生した大規模な土石流の近隣にも太陽光発電所があり、その影響が疑われているときのニュースだけに、少しばかり安堵もありました。国も熱海の件を受け、太陽光発電の立地規制の検討もありうるとのことです。

 なぜこうして規制しなければならないほどに、無秩序な開発が続くのかと疑問は感じます。企業倫理、ガバナンスを如何に向上させていくのかも問われているのでしょう。

 

大手銀行に対し温暖化対策の強化を要求 = 英国機関投資家

 英国では、機関投資家が大手銀行に対し温暖化対策の強化を求める共同書簡を送ったといいます。ロイターによると、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に沿った形で融資を行い、気候変動問題に一段と取り組むべきだと主張しているそうで、来年の株主総会で各行の取り組みを評価する可能性があるといいます。

jp.reuters.com

 SDGs、ESG、ステークホルダー資本主義、様々なことが言われていますが、規制がなければ暴走してしまう企業や人がまだまだ多くいるということなのでしょうか。

 根の深い問題のように感じてしまいます。「善き社会」を築くためには何が必要なのでしょうか。当局が用意する規制だけで十分なのでしょうか。

 

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【ESG投資】上手にアピールする企業に潜むウォッシング行為

 

 先日、GPIF年金積立金管理運用独立行政法人が2020年度の運用収益を発表しました。

 その成績はプラス25.15%の37兆7986億円と、市場運用を開始した01年度以降で最高となったといいます。

www.bloomberg.co.jp

 ブルームバーグによると、GPIFの宮園雅敬理事長は会見で、「リスクを低水準に抑えながら超過収益を安定的に出していけるというポートフォリオの構築に一歩進んだのではないか」と説明したそうです。

 このうち、ESG(環境・社会・ガバナンス)指数に連動した株式運用は10.6兆円と、前年度の5.7兆円から増加しているそうです。

 

 

ESG投資とは、環境(Environmental)と社会(Social)、健全な企業運営(Governance)に配慮した企業への投資を促します。

 VOGUEはファッションを事例に、「環境や社会に対する企業活動の影響について注目されるようになった背景には、ファストファッションの製造過程やサプライチェーンに厳しい目が向けられるようになったことが大きい」といいます。そして、この身近な例のおかげで、一気に認知が高まったと指摘します。

www.vogue.co.jp

人々が仕事に金銭的報酬に加えてやりがいを求める傾向が強まっていることも大きな要因だ

「投資家と社員の双方が、利益を上げるだけではなく社会に貢献できるような目的意識を持った企業活動を望むようになっている」という。「働く側もただ給料をもらうだけではなく、自分の仕事に目的意識を見出したい。ESGの要素をビジネスモデルに取り入れることは、そのためのよい方法です」。 (出所:VOGUE)

 

 

 環境ばかりでなく、Social 社会にも注意が向くようになってきたのでしょうか。

 関連の管理職ポストには、女性や若手を積極的に登用する事例が目立ち、年配男性が担ってきた日本の伝統的な企業経営に変化の風が吹き始めた。 (出所:ブルームバーグ

 サステナビリティ「持続可能性」に特化した部署や役職を新設する企業が増えているとブルームバーグはいいます。

www.bloomberg.co.jp

 記事は、リクルートアデコなど総合人材サービス企業における取り組みを紹介します。

リクルートホールディングスの瀬名波文野氏(38)は女性取締役に抜てきされた一人だ。3年前に執行役員に加わり、同社が5月に発表したサステナビリティー方針の内容策定にも深く携わった。同社方針では、2030年度までにグループ全体における上級管理職・管理職・従業員それぞれにおける女性比率を約50%にすることを目指すと明記した。 (出所:ブルームバーグ

 これはこれで間違いなく善い流れなのでしょう。

 世界経済フォーラムが3月に発表した最新の「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は120位にとどまり、男女平等の観点では大きな後れを取っているとブルームバーグは指摘します。

 しかし、全国の自治体で働く「非正規公務員」の人たちは、年収が200万円未満であったり、またそうした現実から「給与額が低い」「将来が不安」などと待遇改善を求めているといいます。

 

 米国務省が先日発表した世界各国の人身売買に関する報告書では、日本の外国人技能実習制度が問題視され、多くの実習生が劣悪な環境でも働き続けるしかない状況に追い込まれていることが指摘されています。

 少しばかり矛盾を感じます。ジェンダー平等は極めて重要なことです。それは喫緊に改善すべきです。しかし、それだけでは、自社を善く見せることだけに終始していないかと思えてしまいます。

 自らが提供する人材サービスによって、もし誰かが「不都合」を感じることがあるのであれば、それによって成り立つ企業がSDGsやESGで高評価を得ていては、全然「サスティナビリティ」じゃないじゃんって感じてしまいます。

 搾取のようなビジネスのままでよいのか、そういことに自ら鋭く切り込み、サービスを利用するみなが「しあわせ」を感じるようにして、はじめて「サスティナビリティ」が成立するのではないでしょうか。

business.nikkei.com

合法的なら何をやってもいいのが従来の資本主義だが、そんな企業倫理に消費者は厳しい目を向けるようになった。さらに、環境や社会に負担をかけ続けて問題が生じれば、ビジネスの根幹にも支障が出る恐れがある」。

環境破壊や労働者の搾取によって、厳しい規制が発生する事態になれば、企業の減益にもつながりかねない。 (出所:VOGUE)

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「社会的課題の解決を前提とし、そのビジネスモデルによって業績が最大化されるという資本主義の新しい形を定義しない限り、持続可能な開発は実現しない」。アデコの小杉山氏がそう語ったとブルームバーグはいいます。

 綺麗なことばで済ましてはならないはずです。社会課題を解決したつもりが、新たな社会課題を生んでいるようでは、持続可能にはなり得ません。

ESG投資の内実は多岐にわたるのに、企業がそのラベルをはり出すだけで、社会や環境に十分な貢献をしているという免罪符として扱われる危険性がある

とVOGUEは指摘しています。

 こうした事例がウォッシングということのような気がします。

 

【カーボンプライシング】噛み合わない環境省と経産省、企業はどっちを向くか

 

 二酸化炭素の排出に課金する炭素税や排出量取引など「カーボンプライシング(CP)」についての議論が進んでいます。前向きな環境省と、経済活動への悪影響を懸念する経済産業省との間で齟齬があるようです。

 国の「カーボンプライシングに関する有識者検討会」が、「カーボン・クレジット市場」の創設検討を中間報告に盛り込むことを目指していると日本経済新聞が報じています。

www.nikkei.com

 それによると、経団連は「政府が排出上限の規制をかけることなく、企業の自主的な取引を活性化させることが重要だ」との意見を出したそうです。CO2の排出が多い、鉄鋼、電力業界の意見がもとになっているのでしょうか。

 

 経産省は「クレジット市場」への企業の参加を任意としているといいます。経団連の意見を聞き入れたのでしょうか。CO2削減の実効性が課題となると日本経済新聞は指摘します。

新市場は、排出量の実質ゼロを目標に掲げる大企業などの参加を見込む。

排出削減で先行する企業は売り手として収益を得られる。自社の削減計画の達成が難しい企業が買い手になることを想定する。 (出所:日本経済新聞

 一方、環境省は企業に削減義務を課す規制の導入を目指しているといいます。社会全体として脱炭素に向かう推進力とするのが狙いのようです。

 何事も、できないと感じたことは、実現するのは難しいといいます。「できない」を基準に論理展開されれば、「できる」との結論を得ることはありません。常に導き出されるのは、「できない」言い訳です。できないと考える人を説得することは並大抵の努力ではかないません。

 互いが納得できる妥協点を見いだせるのでしょうか。鶴の一声が必要なときもあるのでしょう。

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「脱炭素」、2050年のカーボンニュートラルを目指す企業がカーボン・プライシングに反対する理由があるのでしょうか。

 自社に不都合なものを社会全体の負担に変えようとする論理には無理があるように感じます。
「脱炭素」が既に国際社会の大きな流れになっている中で、それに抗えば、競争力を失するばかりで得るものは何もないはずです。

 表面では「カーボンニュートラル」を謳いながら、その裏側では別な他のことを考えているようでは先行きが思いやられます。そんな悪しき習慣を断ち切る機会なのではないでしょうか。このチャンスを逃すようであれば、競争力の復活も、GDPの成長も期待できそうにもありません。 

 

 

 東京電力ホールディングスの新会長に三菱ケミカルの小林喜光氏が就任しました。

 かつての小林氏には「サスティナビリティ」とのイメージがあります。もうだいぶ前のことですが。そのイメージからすると、会長就任に期待したいなと感じたりします。

小林にとって持続可能性の象徴の一つが「脱原発」である

僕は放射線化学を専攻したから怖いんだよ。やはり制御できない。時間軸は必要だが、今までの延長線上でもの考えるのはやめるべきだろう」。

小林は自然エネルギーを選択し、最終的にCO2をエネルギーに変える光合成の事業化を目指している。それは研究員時代に挫折したC1化学への再挑戦であり、放射線化学と隣接する「光」への回帰でもある。

それにしても、三菱グループには原発の恩恵に浴する企業が少なくない。にもかかわらず、の脱原発伊藤忠商事会長の小林栄三が言う。「言葉と腹の中が一緒。計算して発言している感じはないよね」。 (出所:東洋経済オンライン 2012年の記事)

toyokeizai.net

 小林氏の東電会長就任には賛否両論があるようです。どんなに優秀な人でも得手不得手があるのでしょう。

 これからの脱炭素を占う意味でも、東電の動向が気になります。以前の小林氏だったら、当然環境省の意見に従って、カーボンプライシング導入に積極的なアクションを取るようなると思われます。

 ただ、人の「志」には変節があるのかもしれません.....

www.nikkei.com

 

「参考文書」
biz-journal.jp

【脱プラ】EUで使い捨てプラ食器類の消費削減、市場流通規制などが始まる

 

 EU 欧州連合で、プラスチック製の使い捨て食器や食品容器の市場流通を禁止する新規則が施行されました。

 共同通信によれば、禁止対象は外食産業の使い捨てスプーンやストロー、皿など海岸を汚す上位10品目を選んだそうです。

nordot.app

 欧州委員会は海洋ごみの80%がプラごみと推定し、この新規則の実施で欧州の海岸を汚すごみが70%減ると推計していると共同通信が伝えます。

 もう少し詳しく確認してみることにします。

 

 

 JETROによりますと、EU各加盟国が2019年7月に発効したEU指令「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令」を国内法制化することで、7月3日から指令の一部適用が開始されるといいます。 

適用が開始されるのは、次の9種の使い捨てプラスチック製品とオキソ分解性プラスチック製の全製品の市場流通禁止措置

綿棒の軸、風船棒

皿、ストロー、マドラー、

カトラリー(ナイフ、フォーク、スプーン、箸)

発砲スチロール製食品容器

発泡スチロール製飲料容器(含:キャップ、ふた)

発砲スチロール製飲料用カップ(含:カバー、ふた) (出所:JETRO

eur-lex.europa.eu

 指令は特定の使い捨てプラスチック製品について、消費削減や市場流通規制、製品設計、ラベル、拡大製品者責任などに関するさまざまな措置の制定を加盟国に求めるものとJETROは解説しています。

 また、適用開始に先立ち欧州委員会は6月に、ガイドラインを発表しました。

Commission notice
Commission guidelines on single-use plastic products in accordance with Directive (EU)
2019/904 of the European Parliament and of the Council of 5 June 2019 on the reduction
of the impact of certain plastic products on the environment

 このガイドラインは法的拘束力を持つものではないようですが、指令に含まれる「プラスチック」や「使い捨て」などに関する定義や、市場流通が禁止される9種の使い捨てプラスチック製品の定義、その定義によって入る製品を例示しています。

 オキソ分解性プラスチック製の製品に関しては、使い捨てのものに限定せず、また生分解性かを問わず、全て指令の対象となることも明記しているそうです。

www.jetro.go.jp

 飲料用カップ、生理用品、ウェットティッシュ、フィルター付きたばこ製品など特定の使い捨てプラスチック製品に対するプラスチックの含有情報や廃棄物管理方法などに関するラベル表示の義務化も7月3日に開始されるといいます。

 

 

 EU指令を確認してみると、次のことを指摘します。

 海洋ごみを減らすことは、持続可能な開発のために海洋、海、海洋資源を保護し、SDGs国連の持続可能な開発目標の#14を達成するための重要な行動ですとその意義を強調します。

 EUの調査によると、海外で確認された海洋ごみの80〜85%がプラスチックスであり、使い捨てのプラスチック製品が50%を占めているといいます。また、漁業関連の製品が全体の27%を占めているそうです。

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 使い捨てプラスチック製品は、提供される目的からして一度使用された後、廃棄され、リサイクルされることはめったになく、ごみになりやすいといいます。また、市場に出回っている漁具のかなりの部分は、処理のために集められていないそうです。

 海洋ごみの状況は深刻な問題で、海洋生態系、生物多様性、そればかりでなく、観光、漁業、海運などに深刻なリスクをもたらしていると指摘します。

 欧州プラスチック戦略の目的は、2030年までに、EU市場に投入されたすべてのプラスチックパッケージを再利用可能または簡単にリサイクルできるようにすることです。

 しかし、これらの対策が海洋ごみに与える影響は十分ではないとも言います。

 

 

 EUは環境意識が高く、日本より先行しているとのイメージがあります。しかし、EU指令を確認してみると、同じように海洋ごみの問題を抱え、その対処に苦労していることを窺い知ることができます。

 欧州企業の様々な先駆的な取組がありますが、それもほんのごく一部で、実態を改善するには至らず、状況は深刻のままのように感じます。

 EUは対象物を禁止し、日本では有料化との措置をとります。EUはまたパッケージにラベルを貼り付け、ポイ捨てや不適切な処理の防止に役立てようとしています。

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(画像:EU ウェットティッシュの例)

  有料化すると、そちらに目が奪われ、時に不毛な議論に発展します。必要に応じて、禁止という措置があってもよいのではないでしょうか。選挙受けするような施策ばかりでは、本質的な解決につながらないのではないかと感じたりもします。