- CO2排出量が多い自動車業界では
- 欧州自動車メーカー、排ガス規制対応は「待ったなし」
- ダイムラー、39年に乗用車のCO2排出実質ゼロに
- 独フォルクスワーゲンは
- トヨタの動きは
- 次は中国が主戦場に?
- 2019年 ダボス会議「世界で最も持続可能な企業100社 Global100」トヨタ95位
気候変動が激化している。その原因は温暖化とみられている。温暖化の主要因であるCO2は年々増加している。
CO2排出量が多い自動車業界では
EUのCO2排出量規制がワンランク上がる。EU加盟国は、CO2排出量の平均目標を2025年までに15%減、2030年までに37.5%減となる60g/km(乗用車)とすることで合意した。規制を達成できなければ、メーカーは基準を1g超えるごとに1台当たり95ユーロの罰金が科せられることになる。
ディーゼルエンジン車やハイブリッド車では達成が困難な厳しい目標値となる。これまでCO2規制で世界をリードしていた欧州だが、電気自動車などの普及を見据えてハードルを引き上げた格好だ。HVなどで規制対応に有利とされた日系メーカーだが、規制値の引き上げが現実となったことで、方針の見直しも迫られる。
独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長も「投資計画の見直しが必要」と述べた。加えてEVの販売比率を高める必要性を挙げるほか、雇用減退の懸念も指摘する(出所:日刊自動車新聞)
欧州自動車メーカー、排ガス規制対応は「待ったなし」
ドイツのコンサルタント会社FEVの推計によると、排ガス規制の目標達成には21年までに乗用車のEVのシェアを3倍の6%に、ハイブリッド車(HV)のシェアを5倍の5%に引き上げる必要がある。しかしEVとEVを合わせた今年上半期の販売は前年同期比35%増にとどまった。
サンフォード・C・バーンスタインによると、メーカーが車のラインナップを変えなければ業界の21年の罰金は総額250億ユーロに達する可能性がある。メーカーは罰金を避けるために製品の大規模な見直しに取り組んでおり、このコストが利益総額の半分以上を吹き飛ばしそうだという。
ドイツのVWは小型EV「ID.3」に続いて来月には新型「ゴルフ」を発表する予定。(出所:Reuters)
ダイムラー、39年に乗用車のCO2排出実質ゼロに
独ダイムラーは13日、2039年に発売する新車から、乗用車が出す二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」にすると発表した。途中経過として30年に新車の50%を電気自動車(EV)か充電可能なプラグインハイブリッド車(PHV)にする。ガソリンやディーゼルなどの化石燃料だけで走る車両からの脱却を鮮明にした。
ケレニウス氏は「ぬるま湯から出る必要がある。この戦略は自動車業界を先導する地位で居続けるために必要だ」と強調した。(出所:日経新聞)
独フォルクスワーゲンは
小型EVのラインアップ拡充と拡販に動くと同時に、EVの性能を決めるプラットフォームの外販を決めたようだ。他社へ技術供給し、生産規模を拡大させることでEVの価格抑制を狙う。
VWはEV専用に開発した車台(プラットホーム)の外販に乗り出す。車台は車の性能を左右する完成車メーカーにとっては虎の子の技術。EVスタートアップ企業への供給が決まったほか、提携関係にある米フォード・モーターとも交渉しているもようだ。
急拡大するモビリティーサービス事業者向けにも販売することで、電動化シフトを進める狙いもある。自動運転やライドシェアといったモビリティーサービス事業者の車の大部分がEVになるもよう。車台の供給を受ければ、内外装部品などを取り付けるだけでEVを生産できるようになる。
VWの18年の世界販売は約1083万台で3年連続で首位。自動車業界の巨人がEVの基幹技術を幅広く外販すれば、IT(情報技術)事業者などのモビリティーサービスへの参入障壁が低くなる可能性がある。VWもEV事業の生産コストを削減できる。(出所:日経新聞)
規制が強化される中で、長期目標ではダイムラーが一歩抜きん出ている。独自動車大手VWのヘルベルト・ディース社長は、従業員を前に、CO2排出の割合を「2050年までにゼロにしたい」と述べたという。
トヨタの動きは
CO2排出量ではトヨタ「プリウス」が78g/kmと強みを持つ。欧州では、PHVはEVモードの走行距離に応じてCO2を軽減して計算できる措置がある。これをもとに計算すれば、トヨタ「プリウスPHV」はCO2排出量を28g/kmとなり、2030年のEU規制値に適合する。2030年を視野にすると、EVやPHVの拡販が課題となる。
2050年の未来に向け、トヨタが成し遂げるべき6つの環境チャレンジ
トヨタは成し遂げるべき6つのチャレンジを定義している。
Challege.1 新車CO2ゼロチャレンジ
Challege.2 ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ
Challege.3 工場CO2ゼロチャレンジ
Challege.4 水環境インパクト最小化チャレンジ
Challege.5 循環型社会・システム構築チャレンジ
Challege.6 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ
新車CO2ゼロチャレンジを確認すると、ダイムラーのような大胆さが欠けるものの、確実にCO2削減を実行しようとの姿勢が窺える。車両電動化を進めるとのことだが、メインストリームはハイブリッド車のままでガソリン依存となる。
(出所:トヨタWebページ)
Webページからすれば、トヨタのサステナビリティ活動は評価できるが、世界をリードする会社であればこそ、もっと大胆に積極果敢なチャレンジ目標で掲げて欲しいとも思う。
次は中国が主戦場に?
世界のCO2排出量が最も多い国が中国だ。中国政府もCO2規制を強化している。
中国政府は、年間3万台以上を販売する自動車メーカーのNEV販売比率を引き上げる方向で検討している。20年に12%という目標を14%に上方修正し、21年は16%、22年は18%へと引き上げる案を示した。その一方で、NEV補助金は来年で打ちきる。これは自動車メーカーにとって厳しい規制強化であり、各社はNEV量産拡大に向けて中国企業を活用しはじめた。それが今回のルノーやトヨタの動きである。(出所:Diamond)
2019年 ダボス会議「世界で最も持続可能な企業100社 Global100」トヨタ95位
毎年開催される世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で、サステナビリティの観点から世界各国の企業を評価する「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (Global 100 Index)」が発表された。
「Global 100 Index: 世界で最も持続可能な企業100社」(サスティナブルブランドジャパン)
日本からは、エーザイ、武田薬品工業、横河電機、積水化学工業、花王、トヨタ自動車、コニカミノルタ、パナソニックの8社がランクイン。日本企業のランクイン数は、2015年の1社から2016年と2017年は4社。2018年も4社を維持し、2019年は2倍の8社となりました。武田薬品工業は4年連続、積水化学工業も2年連続。またかつて常連であったトヨタ自動車も久々に復活しました。しかし、最上位がエーザイの73位と、なんとか100位以内に食らいついているという状況も否めません。(出所:サスティナブルジャパン)
自動車がダイムラー創業者のカール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーによって発明されてから約130年たつ。ダイムラーのケレニウス氏は「化石燃料が自動車業界を支配してきた年数を考えると、十分な時間があるとは言えない」と言ったそうだ。
気候変動は悪化の一途である。私たちに残された時間はあまりない。企業ばかりに頼ることなく、私たちも行動を変えていくことが求められる。
自動車を利用しようとするとき、メーカを選ぶ参考になれば。