Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【逃れられない脱炭素 トランザクション・ファイナンス】トヨタはカーボンニュートラルを15年前倒しへ

 

 世界の石油消費が2022年下期に日量1億バレル超、つまり、コロナ危機前の水準を回復するとIEA 国際エネルギー機関が予測しているという。先進国の新型コロナ感染拡大が収束することが理由のようだ。

コロナ禍による社会の変化の結果として石油需要は既にピークを過ぎたとの観測に根拠がないことを示唆した。 (出所:ブルームバーグ

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 ブルームバーグによれば、IEAはOPECプラスに対し、昨年の需要減小で落とした生産量の回復を続けるよう求めたという。

 まだ脱炭素体制が出来上がったわけではないのだろう。経済が回復すれば、従来のままで動かざるを得ないということであろうか。

 しかし、それでいいのだろうか。脱炭素化に動き出す世界に逆行する力が作用することはあるのだろうか。

 

 

 脱炭素への移行事業に調達資金を充てる「トランジションファイナンス」が日本で登場したという。経済産業省環境省金融庁が共同して「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」を策定した。これに合わせ分野別のロードマップも策定していくそうだ。

トランジションファイナンス」とは、気候変動対策を検討している企業が、脱炭素社会の実現に向けて、長期的な戦略に則った温室効果ガス削減の取組を行っている場合、それを支援する目的の金融手法のことと経済産業省は定義する。

 脱炭素化が困難なエネルギー転換部門や、鉄鋼や化学などの産業部門において、脱炭素への「トランジション(移行)」を促すことが狙いのようだ。資金供給し、着実な低炭素化に向けた取組や長期的な研究開発などを促進していくという。

 その背景には、グリーンか、否かで整理する「EUタクソノミー」への対抗があるのだろうか。

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 早速、この「トランジションファイナンス」を利用する動きがあるようだ。

 その第1号となったのは海運のK LINEこと川崎汽船ブルームバーグによれば、川崎汽船は3月、LNG 液化天然ガス燃料による環境対応の自動車運搬船の資金調達で、約59億円のトランジションローンを活用したそうだ。

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 川崎汽船LNGG燃料船は従来の重油燃料船に比べてCO2排出量を最大30%抑えられるが、ゼロにはできない。開発を進めている水素などの新燃料の運用開始は30年ごろになるとしている。 (出所:ブルームバーグ

 

 

  同じ海運業の商船三井も、LNG燃料のフェリーや、LNG燃料供給船を建造するための資金をトランジションローンで調達することを検討しているという。

 脱炭素に向けた取り組みの織り込みがないと「ファイナンス、特にボンド関係はなかなかうまくとれない時代になりつつある」と商船三井CFOが述べたと ブルームバーグが伝える。それだけ市場の見方が現実厳しくなったのだろうか。

 市場環境などを見極めながら、個人向けの「トランジションボンド」を含めて考えていきたいと語ったとそうだ。

トランジションファイナンス」によって、排出産業が年間最大1兆ドル(約110兆円)の資金を調達する可能性がある。(参考:ブルームバーグ

 エネルギー部門では、東京電力ホールディングスと中部電力が共同出資するJERAが利用を検討しているという。

 ブルームバーグによれば、火力発電所で燃焼時にCO2を排出しないアンモニアを石炭に混ぜるアンモニア混焼事業での資金調達が対象となるようだ。

 アンモニア混焼といえども、石炭火力であることに変わりない。CO2排出は減っても「ゼロ」になることはない。支援を受ける以上は「脱炭素」から逃れることはできなくなるのだろう。

 

 

 一方、トヨタ自動車は、全世界の工場でのCO2排出量をカーボンニュートラル、実質ゼロにする目標の達成時期を2050年から35年に前倒しすると発表した。

 共同通信によれば、生産手法を工夫し排出削減を加速させるという。

nordot.app

 トヨタの生産担当の岡田政道執行役員が「CO2を極限まで減らし、なくす技術を開発し、カーボンニュートラルまでの期間を短くする」とオンライン会見で表明したそうだ。

 石油需要の回復は一時的なものにとどまるのではなかろうか。否、確実にそうしていかなければならないのだろう。