#脱プラ #生分解性プラスチック
日用品、飲料、衣料あらゆる産業で、脱プラの動きが拡大している。リサイクルPETの利用、容器の薄肉化や小型化など様々な方法が開発され利用され始めた。そんな中で注目されるのが生分解性プラスチック。コンポストすることで自然に帰っていく。
電機メーカに勤めていたとき、「リサイクルプラスチック」のうんちくを先輩からよく聞いていた。半ば強制的だったが、プラスチックのリサイクルに興味を持つようになった。その後、取引のあった欧米のPCメーカの環境基準を満たすために、その知識が役に立つとはそのときには思わなかったけど。
- 種類が多いプラスチック
- パソコン・家電でのプラスチックのリサイクル
- 植物由来のバイオプラスチックをNECが開発
- パナソニック、石油由来プラスチックとCO2削減を目指すセルロース複合プラを開発
- 欧州で急成長する生分解性プラスチック
- プラスチック最大手の東レは?
- ハウス食品が生分解性プラスチックに取り組むアミカテラに出資
- まとめ
種類が多いプラスチック
一言にプラスチックと言っても実は種類も多く、利用用途は広範囲に拡がっている。パソコンや家電、消費財や飲料の容器、食材の保存や保護、レジ袋、衣服に使われる化繊など様々ところまで入り込んでいる。今、注目される生分解性プラスチックもまた同様である。これらプラスチックについて、三菱総研が上手に整理、まとめてくれている。
パソコン・家電でのプラスチックのリサイクル
外部に積極的に公表はしていなかったけど、パソコンや家電では以前からプラスチックをリサイクルして使っていた。目的は、廃棄物削減によるコスト効果を狙ったものだった。全部が全部リサイクルしていた訳ではない。外装部分などはある制約があってリサイクルできなかった。
当時、NECが外装部分のプラスチックでもリサイクルできる新材料「エコ・ポリカ」を開発して業界では話題になった。
その後、より環境に配慮した素材、植物由来のバイオプラスチックがNECでも開発されるようになった。
植物由来のバイオプラスチックをNECが開発
NECでの植物由来のプラスチック開発の歴史は意外に古い。プラスチック起因による環境問題、例えば、燃焼時のダイオキシン発生問題などがあり、その対策も研究目的のひとつであった。2000年代初めには植物由来のバイオプラスチックを使用したガラケーも販売されていた。
当時から植物由来のプラスチックは注目されていたが、植物率を高めることが困難であった。そのためか他社ではあまり開発が進んでいなかった。
植物率を90%まで高めることに成功したが、生分解性がどの程度あったかは不明。脱石油、製造時のCO2排出量を約半減するなど、環境に配慮した材料であった。
その後も改良も重ね、トウモロコシなどのポリ乳酸由来のバイオプラスチックを開発、ノートパソコンの外装部分(植物率:75%)にも展開していった。
強さと美しさを実現した次世代のエコ素材 バイオプラスチック[NEC公式]
開発ストーリー
原料をトウモロコシなど食物とせず、非食原料である木材や茎などの主成分のセルロースを利用したプラスチックの開発にも着手した。植物率が70%以上のセルロース系バイオプラスチックの開発に成功しているが、製品には採用されていないようだ。このバイオプラスチックベースで漆調ブラックを出すことにも成功したと発表している。
NECはバイオプラスチックをパソコンなどの製品に使用することを目的としているためか、生分解性を求めるより、脱石油、CO2削減に目を向けているようだ。
パナソニック、石油由来プラスチックとCO2削減を目指すセルロース複合プラを開発
パナソニックでも同様にセルロース系の複合プラスチックが研究されていたようだ。素材のもつ自然感を活かす意匠表現に成功したとの発表が7月にあった。この技術を使い、アサヒビールと協働開発された環境配慮型リユースカップも同時に発表された。
このカップは、セルロース成分が55%になっているため、『廃棄する際にも紙製品(可燃物)として分類することができ、プラスチックごみの低減にも貢献する環境にやさしい素材です。』とパナソニックはコメントしている。
なお、生分解性については表記はない。
欧州で急成長する生分解性プラスチック
フランスは、2016年7月から石油系プラスチック製の買い物袋の使用を禁止しました。2020年の1月からは、あらゆる使い捨てのプラスチック製食器について生分解性素材を50%以上使わなければならないと法制化した。(出所:日経XTECH)
日経XTECHは、独化学大手BASFや仏石油メジャーTotalの動向を2017年の記事で伝えていた。BASFは日本にも進出しており、以下のような発表をしている。
ecovio® M2351で作られたマルチフィルムは、土壌中の天然に存在する微生物が、代謝可能な食物としてフィルムの構造を認識するため、収穫後に土壌に鋤き込むことができます。(出所:BASFジャンパン プレスリリース)
ドイツBASF社は完全生分解性の発泡プラスチック「ecovio」を発表しました。現行の発泡スチロールの代替製品です。材料は主原料がバイオベース。脂肪族芳香族コポリエステルにポリ乳酸(PLA)をある割合で混合させます。これによりPLAは発泡促進効果を持つため、良好な発泡体を造ることができるのです。この新材料の特徴は分解速度が速いことで、形状にもよりますが6カ月ほどで水と二酸化炭素に生分解します。世界中の発泡スチロールが置き換わる可能性があります。(出所:日経XTECH)
プラスチック最大手の東レは?
ユニクロとの協業で有名な東レ。東レの完全天然由来のバイオプラスチックや生分解性プラスチックの動向はどうかと思ったのですが、まだ開発中とのWebページに記載。今後に期待です。
ハウス食品が生分解性プラスチックに取り組むアミカテラに出資
ハウス食品は、㈱アミカテラに出資するそうだ。ハウス食品の工場で廃棄処分となる野菜などの植物繊維をアミカテラに提供するという。 アミカテラは生分解性プラスチックからストローや食器などを製造している台湾企業が母体。
「バイオプラスチックは高コスト」という市場イメージを完全に払しょくしますと宣言している。日本では「和民グループ」に竹由来のストローで取引している。
まとめ
欧州ではBASFのように石油、植物由来を問わず、生分解性プラスチックを加速させ、一方、日本では植物由来にこだわったバイオプラスチックの開発が主流なのかとの印象を持った。
日本のメーカからも生分解性プラスチックの供給は始まっており、ストローなどへ使用されるようだ。この点は、また別の機会に紹介したい。
BASFの技術を使えば、食品保存・保護に使うフィルムや容器を生分解性プラスチックにおきかえ可能ではと思ってしまうが、まだ価格の問題や、生分解性プラのごみ処理問題があるのだろうか。
生分解性プラスチックスもコンポスト処理できなければ、その特性を十分に活かした活用とは言えなくなってしまう。
シンガポールに住んでいたとき、たまたまBASFシンガポールの日本人と話す機会があった。取引をつくれないものかと思ったが、叶わず仕舞いだった。
あのときからBASFは気になる会社の一つになった。
そのBASFとアディダスが協業してランニングシューズをいくつか開発している。BASFとの名が出てくるとついつい目を引かれてしまう。
wired.jp この記事はバイオプラスチックとか生分解性プラスチックには関係ありませんが。
「参考文献」