福岡県の三潴郡大木町が気候非常事態宣言を採択した。国内の自治体として5例目となる。世界で1000以上の自治体などが非常事態宣言を出していることからすれば、まだ少ないのかもしれない。一方で、気候変動の影響が危機的状況にあるとし、温室効果ガス排出抑制に向けての対応が自治体レベルから始まることになりそうだ。宣言を採択した自治体は今後具体的なアクション計画をまとめ実行することになる。
宣言内容は各自治体でまちまちではあるが、やはり再生可能エネルギーの活用が政策の一部となる。相次ぐ自然災害によって生じる大規模停電や断水が長期化する傾向にあり、従来のような大量発電、広域送電を見直し、地域の分散化電源としての推進につなげて欲しい。
日刊工業新聞は『一般家庭の太陽光発電システムは最も小さい分散型電源。今後の再エネのあり方として「自律」と「連系」がキーワードになる。』と指摘する。
再エネに蓄電池を組み合わせれば非常時、マイクログリッド(小規模電力網)としての運用できる可能性が広がり、電力系統との連系も容易になる。残念ながら現状のスキームには再エネ導入に併せて、蓄電池や地域間連系線などを整備する仕組みがない。新たな制度設計が必要な段階に差し掛かっている (出所:日刊工業新聞)
エコノミストオンラインは、青森県六ヶ所村の風力発電による分散化電源の活用事例を示す。東日本大震災の時も六ケ所村は停電することがなかったとその有用性を紹介する。
風力発電所から住宅地まで8キロメートルの自営線とスマートハウスを整備・建設した。その上で、発電所の大規模蓄電池、自営線付随の中規模蓄電池、家庭やPHV(プラグインハイブリッド車)の小規模蓄電池を用いて、自立した需給調整を行っている。東北電力からの受電は一切ない。開始して半年後に東日本大震災が起きたのだが、これらのスマートハウスが停電を免れたのは既述の通りだ。
その後、自営線は村の重要施設(庁舎、公民館、給食センター、小中学校など)まで2キロメートル延長された(延長分は村が所有)。これらの施設は通常は東北電力系統から受電するが、災害などで不通になった場合には自営線で自立運用することになった(出所:エコノミストオンライン)
また、『電力システム構築の基本は、まとまりのあるエリアごとに、いざというときに独立運転が可能な「自立型マイクログリッド(電力網)」といった形で設計しておくことである。日本でも、実証事業を経て現実に稼働できる状況になっている』と指摘する。
国の施策を待つのではなく、六ケ所村の事例のように再生可能エネルギーを主軸にした「自立型マイクログリッド(電力網)」を進めることはできないのだろうか。気候変動非常事態宣言がひとつの契機になって欲しい。
石炭火力発電が国際的な批判のもとになり、台風15号では千葉で送電用の鉄塔が倒れ、北海道胆振東部地震ではブラックアウトが起きたことも記憶に新しい。こうしたこともエネルギーの地産地消の後押しになるではないか。
この11月からの卒FIT問題が背景に、蓄電池への関心も高まっているという。使えそうな設備が点在し、また、制御系の技術開発も進んでいる。まったくゼロから作り始めることではない。実現できそうなことをやらない道理はないはずだ。
「参考文書」
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