楽天がRE100に加盟した。2025年までに自社の事業活動を再生可能エネルギーで100%賄うことを目指すことになる。J-クレジットの利用有無など具体的な方法の明示はない。
楽天本社をはじめ、データセンターや物流センターなどの拠点において、楽天が事業活動で使用している電力を2025年までに100%再生可能エネルギーにすべく、「楽天エナジー」をはじめとする社内外のステークホルダーと連携し、「RE100」達成に向けた取り組みを推進していきます。(出所:楽天ニュースリリース)
日本経済新聞は既にRE100に加盟した企業の再生可能エネルギーの達成状況を伝える。
18年に再生エネの比率が95%を超えたのは45社で、ほぼ全てが欧米企業。日本企業のほとんどは25%未満(73社)のグループに属する。19年7月に再生エネ100%を実現した城南信用金庫など一部を除き、大半の企業にとって目標達成は遠い。 先進的とされるリコーでも全社の再エネ比率は18年時点で9%。19年度中に多少高まるが、100%を実現するのは50年になる見通しだ。(出所:日本経済新聞)
欧米企業がすでに再生可能エネルギー比率95%以上を達成させている中、「再生エネの調達コストが高い日本で、どうやって実効性を高めるかが課題」と日本経済新聞は指摘する。
日本企業がRE100に加盟する背景には、取引条件として環境対応を重視する顧客の要望があるという。こうした背景もあってのことか、RE100加盟企業20社が以下の提言を発表した。
日本の電源構成における「2030年に再エネ比率50%」の達成を目指し、政策を総動員することを求める
1. 再エネの社会的便益の適切な評価と、それに基づく政策立案
2. 日本の電源構成について、「2030年に再エネ比率50%」を掲げること
3. 他の電源に対して競争力を有する再エネを実現する環境整備(出所:JCLPプレスリリース)
一方、すでに再生可能エネルギー100%化を実現したグーグルは、9月に欧州のデータセンターの拡大を発表、使用される電力がすべて再生可能エネルギー由来になるという。
こうした動きは、国内企業の先例にはできないだろうか。
このプロジェクトで、GEがグーグルの欧州拠点へ風力発電所の電力を供給する電力販売契約を組成したと電気新聞が伝える。
GEは9月上旬、スウェーデンのビヨークヴァトネット風力発電所(17万5千キロワット)に単機5300キロワットの陸上風車を33基供給すると発表した。同案件でGEは機器の供給と北欧のデベロッパー2社による事業開発や仏投資会社への事業売却も支援している。同下旬には発電した電力をグーグルへ販売する電力販売契約PPAの立案と交渉も手掛けたと公表。グーグルは、欧州のデータセンターが消費する電力の一部を風力発電で賄うとみられる。(出所:電気新聞)
電気新聞は、『日本では電源の開発から運営、売電契約まで単一の事業者が実施することが多いが、海外の再生可能エネ事業ではそれぞれ別の事業者が担うことも珍しくない』とも伝える。
グーグルは、米国、南米、欧州で合計1600MW(メガワット)となる18の新しい再生可能エネルギー購入についても発表している。電源の“追加性”を重視し、長期間の電力購入を表明することで新規建設を促すとしている。
国内でのユニークな取り組みをスマートジャパンが伝える。
積水ハウスは、非常に興味深いモデルを提供している。同社が販売するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、屋上の太陽光発電設備によりこれまで650MWを越える太陽光発電を供給してきた。余剰電力は今までFITによって電力事業者に買い取ってもらっていたが、2019年より順次FITが終了していくため、以降の余剰電力は積水ハウスが買い取ることになる。これにより、積水ハウスの顧客は「卒FIT」後も太陽光発電の利益を得られるようになる。
積水ハウスは2040年までに事業で用いる電力を再エネ100%にすることを宣言しており、このころまでに卒FITからの太陽光電力によって十分な再エネ調達が可能になる見込みだ。RE100を活用して顧客とWin-Winの関係を築いた好例といえる (出所:スマートジャパン)
海外では、すでにグリーン電力証書での再生可能エネルギー100%化から「自前の再エネ調達比率を高める」方向に変化が起き始めてるとスマートジャパンは指摘する。
グリーン電力証書を用いて再エネ100%を達成しても、「新規の再エネ投資を創出しない」という理由で環境団体などから批判を受けてしまう場合がある。そのため、欧米のRE100参加企業は、証書を使って再エネ比率100%を達成しても、「自前の再エネ調達比率を高める」という次の段階のチャレンジに進み、またそのチャレンジに高い価値を置いている。ややこしい話だが、RE100を達成した企業の間でも、さらに差別化がおこりつつある。(出所:スマートジャパン)
「RE100」は、国際環境NGO「The Climate Group」が、気候変動の情報開示を推進するNGO「CDP」とのパートナーシップのもと運営する国際的な環境イニシアチブだという。
その 国際NGO「CDP」に参加する森澤充世氏がForbesのインタビューにこう答えている。
エネルギー資源を輸入に頼っていた日本には、省エネを推奨する文化があります。再生エネルギーの波に少し乗り遅れていますが、再生エネルギーは今の日本に向いていると思います。
例えば、企業と自治体と電力会社で、地域単位の小規模発電を使ったサステナブルな地域活性化モデルを作れば、まだ電力が普及していない国や地域にも導入できる先進的な取り組みになるのではないでしょうか。(出所:Forbes)
再生可能エネルギー普及を国策が阻む状況が続く。森澤氏の指摘がする『企業と自治体と電力会社で、地域単位の小規模発電を使ったサステナブルな地域活性化モデル』にRE100実現の道筋を感じる。現実、東広島市や福山市で自治体主体のスマート電力会社が立ち上がり始めている。
日本が欧米に遅れをとっている分野の一つがサステナビリティの取り組みとその開示だと思います。日本人はすごく真面目で勤勉な人が多いのに、何が世界で評価されるのかに気づかず、損をしている。これがすごく勿体無いと思っていました。(出所:Forbes)
と、インタビューに答えた森澤氏の言葉が印象的だ。
欧米に遅れているとの印象を払拭することはできないが、彼らもまだ完全に達成しているわけでもないし、RE100や脱炭素化は今直ぐに解決できる問題ではない。日本企業が失地挽回する余地がまだまだあるはずだ。
RE100に参加する環境省が重い腰を上げた。「環境省の施設で使う全電力を2030年度までに太陽光発電などの再生可能エネルギーに切り替える方針を明らかにした」と日本経済新聞が伝えた。
小泉環境相は「環境省のRE100は再エネ拡大に向けたアクションのスタートだ。再エネ普及の妨げを打ち破り、各主体で同様の動きを加速化させていく」と述べた。(出所:日本経済新聞)
20年度は新宿御苑や屋久島の世界遺産センターなど計8施設で対応する。30年度にかけてほかの関連施設にも広げるそうだ(出所:日本経済新聞)
他国に比べ遅れている再生可能エネルギー100%化の改善は急務。環境省単独の政策であれば大胆な施策実行もできるのではないか。RE100参加企業の先例となるような行動が求められているのであろう。
「参考文書」