スターバックス コーヒー ジャパンが、店舗で使用する電力をCO2排出量ゼロの100%再生可能エネルギーへの切り替えを進めている。北海道、東北、沖縄を除く、路面の直営店301店舗で2021年4月末までに切り替えが完了し、10月末には北海道、東北、沖縄を含めた約350店舗へ広がるという。
地域ごとに、みんな電力、中部電力ミライズ、北陸電力、関西電力、ローカルエナジー、中国電力、四国電力、九州電力を通じ、農業と自然エネルギー発電を同時に実現し、休耕地削減になるソーラーシェアリングや未利用の間伐材などを活用して地域の森林を豊かにする発電、災害時に非常用電源として活用できる仕組みを備えたものや地域の学校に還元、活用されていくなど地域貢献につながる電力を選定し、購入しております。 (出所:スターバックスコーヒージャパン)
スターバックスコーヒージャパンによると、日本国内のスターバックスの約2割にあたる、直接電力の契約が可能な路面の直営店において、再生可能エネルギーへの切り替えが完了するそうだ。
電力需要家となる企業が独立系発電事業者と直接、長期の電力購入契約(PPA)を結ぶことを 「コーポレートPPA(Power Purchase Agreement)」という。
今回のスタバの再エネ調達はこれに近い形なのだろうか。
経済産業省が3月、オフサイト型の「コーポレートPPA」について容認する方向性を示したそうだ。電気事業法上の「自己託送」の中で、再エネ電源の主体と需要家の間に密接な関係があるグループ内融通ということで解釈し、このスキームを認めるための条件を設定する方向で動いている。
アマゾンが日本国内での再エネ調達を進めようとする背景には、こうした制度の見直しがあるのだろうか。
「自己託送スキーム」による電力供給は、再エネ特措法上、再エネ賦課金の支払いの対象外となるため、利用者にとってはメリットがあるが、このスキームを活用しない需要家にとっては逆に負担が高まるなどの公平性の観点から課題があるそうだ。
こうした制度の見直しがビジネスチャンスになり、決定を待たずに動き出す企業もある。ソフトバンクグループのSBエナジーが再生可能エネルギーを使った小型発電所を設置して電力を供給する企業向けサービスを始めるという。
SBエナジーによれば、大阪のエコスタイルと業務協力し、電力需要家に代わる第三者が需要地から離れた場所に建設、運営する「第三者所有モデル」の再生可能エネルギーを、送配電事業者の託送によって企業に供給することで再生可能エネルギーの自家消費を可能とする自己託送支援サービスだという。
その一方で、再生可能エネルギーで電力量の5~6割を賄うようになると、発電などのコストが今の約2倍に膨らむという試算が、経済産業省の総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会でを示されたという。
試算を担ったのは公益財団法人地球環境産業技術研究機構、2050年のエネルギーミックス案をベースに、シナリオ分析が実施したという。その前提は、再生エネ:54%、原発:10%、水素やアンモニア火力:13%、CO2を大気中に放出しない技術を実用化したガス火力などが23%。また電力需要が3割以上増えることも前提とする。
東京新聞によれば、再生エネのコストが増える要因として、設備が消費地から遠いため送電線の増強が必要なことや、発電が不安定になった時のために蓄電池を備えておくことなどを上がったという。再生エネ以外でも、水素やアンモニアによる火力発電も燃料の輸送費などが高く、これらを要因に電気料金が上がると説明しているそうだ。
こうしたエネルギー問題の議論に疑問を投げかけるのはJCI気候変動イニシアティブ代表の大竹氏。
議論の参加者が、専門家や供給者側のインナーサークルに限られていることを課題にあげ、消費者が求めるエネルギーを供給するよう政策に軸足を移さなければいけないといい、「スタートダッシュで重要なのは、省エネと再エネの極大化だ」と言う。
さらに、「水素は夢の燃料、救世主という単純な話じゃない。水素のもつ良さと限界、活躍の前提条件を踏まえた議論が必要だ」とも指摘する。現実的な説得力のある言葉ではなかろうか。
夢物語に終わらすことのないよう、現行シナリオでのカーボンニュートラル目標未達という最悪も想定したバックアッププランも同時に検討、進めておく必要もあるのだろう。
カーボンゼロは、表には気候変動から地球を守るという大義名分があるが、裏ではゲームチェンジのメリットを吸収しようと虎視眈々(たんたん)と狙っている競争相手がたくさんいる。
今、金融が大きく変わり始めた。典型例が石炭火力への投融資を廃止する動きだ。ビジネスは金融を絶たれたらどうしようもない。弾を撃たない戦争が始まっている。 (出所:日本経済新聞)
脱炭素の実現に向け技術開発が進み、それが成長機会になり、国内での雇用拡大につながれば、それは望ましいことなのだろう。大義名分から外れて見当違いの方向に進むようなことになれば、今ある石炭火力や原子力発電のように、ムダなインフラばかり作ることになりかねない。脱炭素に脱原発、そして、消費者がメリットを享受できるしくみ作りが求められているのだろう。
GW期間中の東北、新潟エリアで5月4日11~12時の間、再エネ発電比率が87.7%を記録したという。
東京電力ネットワークによれば、期間中の昼間の一部時間帯において厳しい需給状況となる日もあったそうだが、火力発電設備の出力抑制や揚水発電設備の揚水運転等を実施することで、需給バランスを維持し、再エネの出力制御を回避することができたという。
好条件が重ねっての好記録かもしれないが、できないことはないということの表れなのだろう。