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【道徳のジレンマ】要請を拒む飲食店に東京都が「休業命令」、従う店、従わない店 グローバルダイニングが意見表明

 

 東京都が緊急事態宣言による休業要請を拒んで、酒類の提供を続ける都内の飲食店33店舗に対し「休業命令」を出したという。共同通信によれば、店名は公表していない。3回目の宣言で命令に踏み切ったのは初めてのことだそうだ。

 先の宣言時、外食産業のグローバルダイニング社が時短命令に従わず、時短要請を違憲だとして、訴訟を起こした。今回の命令には、またグローバルダイニングは含まれたのだろうか。

www.nikkan-gendai.com

 日刊ゲンダイによれば、「カフェ ラ・ボエム」のホームページには、「当社はこの度の緊急事態宣言下におきましても、時短・休業要請には応じず、平常通りの営業を続ける方針です。酒類につきましても、提供させていただきます。ただし、一部の商業施設内の店舗につきましては、施設の方針に準じ、営業時間の短縮(または臨時休業)、酒類の提供休止等の措置を取っている場合がございます」と記載しているという。

 

 

少し古いが(2011年)、「『いい人』ほど収入は少なくなる:研究結果」という学説をwiredが紹介する。

 コーネル大学のベス・A・リビングストン、ノートルダム大学のティモシー・A・ジャッジとウェスタオンタリオ大学のチャーリス・ハーストが行った研究によると、「協調性の高さと収入のレベルは反比例する」という。

wired.jp

この実験結果は、お人好しの男性はモノにならないことを示唆している。

というのも、人々はそういった人物に対して少しばかりの偏見をもっているからだ。協調性のある人々は解雇されにくいだろうし、人を監督する立場になるだろうが、賃上げ交渉にはあまり役に立たない。

言い換えれば、非協調的な人が経済的な利益を享受するのは、彼/彼女らには自分の望むもののために戦う(たとえ他人を不快にさせるにしても)意欲があるからだ。

さらにリビングストンらが主張するのは(中略)、我々は最悪な人間に期待し、最高の人間に罰を与えているのだ。 (出所:wired)

 

 

 朝日新聞によれば、グローバルダイニングが東京都を訴えた理由に、社長がサイトで意見表明したことへの「見せしめ」「狙い撃ち」で、表現の自由の侵害があったともいう。

 訴状で同社は、「適切な補償もなく要請に応じれば経営維持は困難になる」と指摘、感染対策を徹底している店まで一律に対象にするのは「営業の自由への過剰な制約だ」と訴えた。 (出所:朝日新聞

www.asahi.com

 wiredが紹介した研究結果に従えば、グローバルダイニングの長谷川社長の主張も理解できる。

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 ビジネスは本来、有益なサービスを顧客に提供し、その対価を頂戴することで成立する。今ある環境下で、営業を続けることが有益なことなのだろうか。

 しかし、会社は黒字になったというのだから、それなりに繁盛しているということでもあるのだろう。また、訴訟費用もクラウドファンディングで調達し約1700万円が集まったというのだから、それだけ支持もあったのだろう。

 日刊ゲンダイによれば、4月30日に発表した1~3月の決算は、増収増益で、営業利益1億9600万円となり、赤字の前年同期から黒字転換を果たし、いかなる状況でも営業を続けてきたことが結果として実ったという。

 グローバルダイニングで働く人たちはどんな感情を抱いているのだろう。来店する顧客の姿を見て、働くことに真の満足を得ているのだろうか。何か違和感をおぼえたりはしないのだろうか。

 

 

 少しばかりwiredの記事に反論を試みれば、協調性の高い人々は、そうでない人に比べ、利他的な行動をとることによって、そこで金銭には変えることのできない利益を享受しているのかもしれない。それに本人が気づいているか否かは別として。

 コミュニタリアニズム共同体主義)の代表的論者であるマイケル・サンデル教授が主張した「共通善」を思い出す。特定の個人ではなく、共同体の成員によって達成すべく合意された普遍的価値、または集合的目標をさす言葉で、中世キリスト教世界では、社会の安寧が共通善とみなされていたという。

 今、このコロナ渦で交わされる様々な議論に、「道徳のジレンマ」を感じたりする。

さて、司法はどんな判断を下すのだろうか。気になるところだ。

 

2021.5.19 追記

 東京都が「休業命令」を出した33店舗のうち、23の店舗がグローバルダイニング社のレストランだと、グローバルダイニング社が発表した。その理由を同社の公式webで表明している。

「違法命令」に従うことで、従業員や取引先を苦しめていいのか?
私たちはそうは思いません。このようにして私たちは、これまで通り営業を継続することを選択しました。
命令に違反することで、おそらく東京都は裁判所に過料手続きを取るでしょう。
しかし私たちは今回の「命令」に対しても、その「過料」に対しても徹底的に争います。

弊社レストランを必要とするお客様のため、従業員を守るため、お取引先を守るため、営業を続けさせていただきます。 (出所: グローバルダイニング「通常営業継続のお知らせ」

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