花王が、「2050年にカーボンネガティブを目指す」と発表した。
「気候変動が大きな課題になっていると思います。脱炭素についてはどうお考えですか」、と今年の株主総会で個人株主が質問したという(参考:日経ESG)。
花王は2019年、ESG経営に舵を切ったが、これまで「脱炭素」については宣言を出していなかった。株主が背中を押すことで、今回の発表になったのだろうか。花王のニュースリリースの文面からすると、その影響があったのではなかろうか。
●新たな脱炭素目標:2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブをめざす
●CO2リデュースイノベーション / 2040年カーボンゼロに向けた目標
スコープ1+2におけるCO2排出量(絶対量)を2030年までに55%削減(基準年2017年)に引き上げ●使用電力を2030年までに100%再生可能電力化 (出所:花王)
●製品ライフサイクルにおけるCO2排出量(絶対量)を2030年までに22%削減(基準年2017年)- 原材料削減、天然原料の利用、節水製品の展開、包装容器のプラスチック使用量削減や再生プラスチックの利用を引き続き推進
●花王の製品・サービスを利用することで社会全体でCO2を削減する量 2030年までに1000万トン - コンシューマープロダクツ事業やケミカル事業における、社会のサステナビリティに貢献する製品・サービスや、技術開発を推進。
●CO2リサイクルイノベーション / 2050年カーボンネガティブに向けた目標 - CO2を原料にする技術を開発
(出所:花王)
2019年に発表されたESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を読み、コンサバな目標設定と感じたが、積極的にコミットする姿勢に変わったように感じる。株主のことも意識したのだろうか。
「脱炭素」というフレーズが気になった。
有機化学の研究歴を持つ佐藤健太郎氏の記事を読んだからかもしれない。「炭素を抜きにしては、社会も文明も一切存在し得ない」と佐藤氏はいう。
さらに「他のあらゆる元素とは異なり、炭素はお互いに長くつながり合って安定な分子を作ることができる」と指摘、「このため炭素は、極めて多彩な物質群を作り出すことができる。これまで発見され、作り出された物質の8割は、炭素を含んだ化合物だ。100以上もある他の全元素が束になってかかっても、炭素の作り出す物質世界の足元にも及ばないのだ」という。
我々の体を構成するDNAやタンパク質、脂肪などや、木材、紙、プラスチック、アスファルトなどの重要材料も、みな炭素が骨格を成している。
本当に「脱炭素」などしてしまった日には、文明社会どころか全生命が成り立たなくなってしまうのだ。 (出所:Foresight)
炭素を含んだ化合物、一般にこれを有機化合物という。Wikipediaによれば、炭素原子が共有結合で結びついた骨格を持ち、分子間力によって集まることで液体や固体となっているため、沸点・融点が低いものが多いという。
花王の祖業である石鹸もまた有機物である。花王が今回発表したように、また他のCO2リサイクル同様に、二酸化炭素を原料にした商品の開発があってもいいのかもしれない。化学メーカの花王だからこそ、できる二酸化炭素の資源化、炭素の有効活用があるのかもしれない。
花王がライオンに引き続き、競合であるユニリーバと協働するという。
花王によれば、「みんなでボトルリサイクルプロジェクト」をユニリーバ・ジャパンと協働で始めるそうだ。東京都東大和市で日用品の使用済み容器の回収、ボトル容器からボトル容器へのリサイクルをスタートさせるという。回収開始日は2021年6月1日から。
循環型社会の実現のような大きな社会課題の解決には、たとえ競合、ライバルといえども、協働した方がはるかに効率的に、より現実的に対処できるのだろう。
日用品なだけに変化を感じやすいのかもしれない。「脱炭素」や「循環型社会」をより身近に感じられるような商品やサービスの登場が待ち遠しい。
「参考文書」