政府が2050年のカーボンニュートラルの達成を目標とすると、またこれに従って多くの企業が同じ目標を掲げるようになる。
東電もカーボンニュートラルを目標とするようになるのだろうか。
カーボンニュートラルの政府目標に追従するものたち
朝日新聞もその可能性を指摘し、長崎桃子常務執行役にインタビューする。
「50年カーボンニュートラル」にはどう対応しますかと、朝日新聞は長崎氏に質問をぶつける。。
いま対策を検討しているところ。
CO2ゼロに向けて一番最適な近道とミクスチャー(割合)を考えたい。ただ、いくらグリーン電力を供給できるようになっても、使われなければカーボンニュートラルにならない。社会のみなさまに使っていただく『電化』に積極的に取り組んでいきたい。 (出所:朝日新聞)
脱炭素社会の実現に向けて動き始めると、その目的達成のための弱点が見えてきたりする。各々の産業での弱点を批評する意見も増えてくる。
弱点を直ちに改善できれば、労せず事を成就することができる。しかし、現実はそう甘くない。様々な障壁、課題が存在するというところであろうか。
SDGsをもう一度見直しアップデートする
その弱点の改善活動がSDGsに紐づけば、SDGs活動と本業が一致することになり、SDGsバッチだけの会社と言われることもなくなるのかもしれない。
ハフポストが「SDGsバッジをつけるだけで満足する人にならないために、今知っておくべきこと」との記事を投稿する。
記事は、11月27日に開催された「MASHING UP カンファレンスvol.4」の「企業が社会に届ける価値」のセッションから学んだそのためのヒントを伝える。
そのひとつの事例として、アクサ生命保険の取り組みを紹介する。
「気候危機に対して、保険会社に何ができるの? と思われるかもしれません。我々は、保険金をお預かりしてこれを株や債権などで『運用』しています。ですから、気候変動を悪化させるような企業・業種には投資しない、と決めることができるのです」 (出所:ハフポスト)
気候変動はわかりやすい事例なのだろう。企業がカーボンニュートラルに取り組めば、今一番ホットな国際的なアジェンダに取り組むことになり、SDGsへの貢献につながる。そして、それが生命保険などの機関投資家たちから評価され、ESG投資にも繋がっていく。
脱炭素、カーボンニュートラルであれば、どの企業でも取り組むことができる。まずは自社で使うエネルギーをCO2を排出しないものに切り替える。また、自社の事業活動でもカーボンニュートラルを目指す。できればサプライチェーン全体を含めたライフサイクル、スコープ3でのカーボンニュートラルに挑戦していくのがいいのかもしれない。
スコープ3まで検討できれば、もしかしたらSDGsの他の項目についての貢献にも気づきがあるかもしれない。
SDGsとESG 非財務価値の上昇にも
東電の長崎常務は、誤解を恐れずに言うと前置きし、「かつては弊社にとってESGとか脱炭素はコストだと考えていたが、今はもう、バリューアップだと定義している」と、従来、脱炭素に消極的だったのかと朝日新聞に問われ、そう答える。
首都圏を支えるエネルギー事業者としての使命と同等以上というか、ビジネスの機会ととらえて、ESGに取り組んでいる。私たちがESGに力を入れるのは、端的にいうと、東電の非財務価値を上げることによって、全体の企業価値を上げるねらいがある。
これからの企業価値は、財務価値だけではなくて、非財務の価値が非常に重要。ただ、財務価値も同時に上げていくESGではないと意味がないので、同時に達成していくことにチャレンジする」 (出所:朝日新聞)
少しまどろっこしい表現であるが、ESGもSDGsも同じなのかもしれない。
(資料出所:年金積立金管理運用独立行政法人公式サイト「ESG投資」)
思いやりという網の目
「経営者には、企業価値を上げ、社会に還元する、あるいは内部にキャッシュをためて、福島の復興に役立てていきたいという強い動機がある」と話す東電長崎常務の言葉が印象的だ。
通り過ぎた過去を取り返すことはできない。その現実を受けとめ、前向きな方向へ変えていくことしかできない。それは自分たちばかりが成功するということではなく、自分たちが関わる人々が成功できるように手助けしていかなければならない。そうあって、はじめてことが成就し成功と呼べるのかもしれない。
SDGsもESGも結局は、人間と人間を善意で結びつけるということなのだろう。その結びつきを網の目のように広げていけば、過去より良い世界になり、そして、SDGsもまた成就していくのかもしれない。もちろん、その網の目には従業員も含まれている。
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