JALが、衣料品の綿から製造した国産バイオジェット燃料によるフライトを実施すると発表した。日本初だという。
そのフライトは、 2021年2月4日のJL319便、13:00発福岡行を予定しているという。使用する機材はボーイング787-8型機。
10万着で飛ばそう!
JALがその経緯を説明する。
2018年10月、「10万着で飛ばそう!JALバイオジェット燃料フライト」というプロジェクトが始まったという。
3か月の衣服の回収期間中に全国から約25万着の洋服が集まり、その集まった衣料品の綿を原料としたバイオジェット燃料の製造が始まった。
2020年3月下旬、燃料の製造が完成、バイオジェットの国際規格であるASTM D7566 Annex 5の適合検査にも合格したという。6月中旬には既存のジェット燃料との混合が完了し、商用フライトへの使用準備が整った。
このバイオジェット燃料の製造には、Green Earth Institute㈱の技術サポート、公益財団法人地球環境産業技術研究機構が開発したバイオプロセス、国産技術を結集して実現したそうだ。
JALのカーボンニュートラル
JALは2020年6月、「2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指す」と発表した。
バイオジェット燃料の製造から使用までを、日本国内で完結させるこの仕組み作りに取り組めば、自身のみならず、国全体のカーボンニュートラルに貢献できる。
JALは、豊かな地球を次世代に引き継ぐ責任を果たし、地球にやさしいことが「当たり前」となるように、これからも気候変動への課題解決に挑戦していきます。 (出所:JAL)
JALは、この他にもCO2排出量の削減施策として、飛行中の空気抵抗の削減や地上移動時の片側エンジン停止などの「日々の運航での工夫」を実行するという。
サーキュラーバイオ™エコノミー 古着が飛行機の燃料に
このJALが使用するバイオ燃料は、プロジェクトに参加したGreen Earth Institute㈱の技術が生み出す。
Green Earth Instituteによれば、回収した古着の糖化からそのプロセスは始まるという。
古着(綿製品)をアルカリ処理したうえで、糖化酵素を用いて綿の成分であるセルロースを糖に変換するという。その糖を用い、コリネ型細菌を使用し、イソブタノールに変換、そのイソブタノールからイソブチレン(C4 オレフィン)を作り、そのイソブチレン同士を反応させて C8、C12、C16 オレフィンを作り(オリゴマー化)、その後、パラフィンに変換するそうだ。
ジェット燃料には沸点範囲の規格があるという。その規格を満足させるため、蒸留装置で分留、沸点範囲を調整、さらに酸化防止剤を添加して国産初のバイオジェット燃料は作られた。
難しそうなプロセスをいくつか経由して、古着の綿はバイオジェット燃料に変わっていく。
「世界的にはバイオジェット燃料の実用化が進んでおりますが、国産バイオジェット燃料を搭載したフライトはこれが初めてです」と、Green Earth Instituteはいう。
このバイオジェット燃料の特徴は、国内で集めた古着を原料とし、国内の複数の会社のご協力により国内の既存の設備を用いて国内技術で完成させた、いわゆる「純国産バイオジェット燃料」であることです。 (出所:Green Earth Institute)
「この製造経験を活かして、その大量生産技術を確立し、一日も早い商業化を目指す」
Green Earth Instituteは、石油を原料としないグリーン化学品の開発・事業化を進め、これまでの「廃棄物」が「資源」となる「サーキュラーバイオ™エコノミー」を実現し、地球規模の環境問題の解決に資する活動をする会社だそうだ。
脱化石燃料
資源開発最大手の国際石油開発帝石が、2050年のカーボンニュートラル、事業活動で排出する二酸化炭素を実質ゼロにする目標を発表したという。
国際帝石は世界約20カ国で石油や天然ガスの開発・生産を手がけるが、石油や天然ガスは脱炭素化で「需要の下押し圧力が強まる可能性がある」として事業構造を見直す。
朝日新聞によれば、上田社長が「今までの石油、天然ガスを中心とした会社から、新しい分野に挑戦する二面性を持った会社に変わっていく」と会見で話したという。
少しばかり化石燃料に未練があるような響きがある。長くそのビジネスを続けてくれば愛着があるのかもしれない。
また、カーボンニュートラル宣言をする企業がひとつ増えたようだ。
時代遅れな陳腐な技術は、新しい技術に飲み込まれていく。この先、化石燃料の需要は確実に減っていくのだろう。
「関連文書」
dsupplying.hatenablog.comdsupplying.hatenablog.com
「参考文献」