人工クモの糸で注目されるスパイバー。
そのスパイバー初の量産工場がタイに完成、開所式を行ったという。構造タンパク質「ブリュード・プロテイン」繊維の原料を生産する。
日本経済新聞によれば、生産規模は年数百トン。2021年末までに生産を始める見通しだという。
サトウキビやキャッサバを原料に、微生物の発酵によってタンパク質素材「ブリュード・プロテイン」の原料となるパウダーを生産。山形県の本拠地に輸出し、製品化する。 (出所:日本経済新聞)
人工タンパク質素材は、1953年に工業生産を開始したポリエステル以来の革命的な素材。
本格的に普及することになれば、衣服の歴史に新しい1ページが加わることになる (出所:WWD Japan)
いよいよ人工クモの糸も量産になるのかと思うと感慨深い。テキスタイル事業開発マネージャーの募集も始まったようだ。どんな商品になって市場に登場してくるのだろうか。
スパイバーの関山社長は、この先の食糧危機にも強い懸念を示す。人工クモ糸の原料の非可食化が次の目標になっていくのだろうか。
もうひとつ注目のバイオベンチャー ユーグレナ社が、バイオマスプラスチックスのコンソーシアム「パラレジンジャパンコンソーシアム」を設立したと発表した。
循環型経済の実現に向けたバイオマスプラスチックスの技術開発を行うという。
ユーグレナによれば、コンソーシアムでは、バイオマスプラスチックス「パラレジン」の原料となる「パラミロン」と誘導体の規格化と製品化を進める。
「パラレジン」とは、ミドリムシに含まれる糖類である「パラミロン」と樹脂を意味する「レジン」を組み合わせた造語で、従来の石油由来ではなく、ミドリムシ由来のバイオマスプラスチックスのこと。
その原料「パラミロン」はミドリムシから抽出され、ミドリムシの培養には、古紙や食物残渣などのセルロースを酵素糖化技術によって分解した糖化物を栄養分として用いるという。
このコンソーシアムでは、ユーグレナ社、セイコーエプソン、NEC日本電気が幹事社になり、 それぞれの強みである要素技術を持ち寄り、協働することで進化させ、よりサステナブルな社会に変革していくことを目指すという。
エプソンは、ユーグレナ(ミドリムシ)の培養に必要となる栄養分を作り出すため、紙などの繊維材料からあらたな素材を作り出すエプソンの独自技術「ドライファイバーテクノロジー」を応用し「糖化プロセスの確立」に貢献するという。
NECは、2000年代のはじめからバイオマスプラスチックを開発、自社製品への適用してきた。2010年以降は木材や稲わら、藻類などの非可食性バイオマスの有効活用を始め、セルロースやパラミロンといった多糖類を用いたバイオマスプラスチックスの製造やリサイクルに関する要素技術を開発してきた。
その経験を活かして、このコンソーシアム活動を通して、多糖系バイオマスプラスチックの社会実装の潮流を作り、低炭素・資源循環型社会の実現に貢献するという。
「ユーグレナ、ミドリムシプラ開発で連合」と日本経済新聞が報じ、その内容を解説する。
日本経済新聞によると、2030年までにミドリムシ由来のバイオプラを20万トン供給することを目指すそうだ。
サンプル品として皿やスプーン、無線操縦の小型ヘリコプターの尾翼などが公開されたという。
バイオマスプラスチックス、その可能性が評価される一方で、その原料をサトウキビやトウモロコシなどの可食物に頼るなら、SDGsの時代、食糧危機が指摘されるこのとき、疑問がつく製造方法になのかもしれない。
このコンソーシアムが目指すのは「循環型経済」サーキュラーエコノミー。古紙などの廃棄物、いわゆるごみを原料にしてバイオマスプラスチックスを作りだそうとする試みだ。
ごみを資源に「非可食バイオマスプラスチックス」による資源循環システムの構築を目指すところに斬新さを感じる。
この新たなプラスチックスが実用化されるには、用途開発やそのための物性調整、リサイクル性の確認など乗り越えていかなければならないハードルがまだ存在するのかもしれない。いきなり、今あるワンウェイプラスチックス使い捨てプラの代替になることはないかもしれないが、他の石油由来のプラスチックスの代替となっていって欲しいものだ。
「関連文書」