世界の海の底に1400万トンものマイクロプラスチックが堆積しているかもしれない。そんな研究結果をオーストラリアの研究機関が発表したとCNNが伝える。マイクロプラスチックスの被害状況が研究テーマになり、数々の報告がなされる。報告される内容は深刻さを増すばかりのようだ。
マイクロプラスチックスとは5mm以下になったプラスチックスの破片、海などに流出したプラスチックスのごみが波や紫外線の影響を受けて微小化すると言われる。CNNによれば、深海の海底にたまったマイクロプラスチックスの量を世界規模で推定した研究は初めてという。
船外機でマイクロプラスチックスを回収する装置を開発 = 自動車メーカ スズキ
船の船外機を製造販売する自動車メーカのスズキが、世界初となる船外機に取り付け可能なマイクロプラスチック回収装置を開発したという。国内で実施したモニタリング調査では、ウレタン系やナイロン系のマイクロプラスチックスの回収を確認することができたそうだ。
この装置は極めて単純な構造で、簡単な作業で取り付けることができるという。走行するだけで水面付近のマイクロプラスチックを回収することができる。
(資料出所:スズキ ニュースリリース)
船外機がエンジン冷却のために大量の水をくみ上げながら走行し、冷却後にその水を戻す構造であることに着目、その流路にフィルターを配置することでマイクロプラスチックスを回収するそうだ。
スズキによると、この装置は2021年からオプション用品として設定、その後、将来的には標準装備で取り扱うことも計画しているという。
競合メーカでも同じようなことができるように業界横断的な動きにして欲しいものだ。
スズキはこの発表に合わせ、海洋プラスチックごみに焦点を当てた「スズキクリーンオーシャンプロジェクト」の始動についても発表した。
スズキによると、これまで継続してきた水辺の清掃活動が2020年に10周年を迎えたことを機に、「私たちに今できること」「スズキの船外機にできること」は何かを考え、従来からの取り組みをさらに発展させるという。具体的には、スズキの船外機の製品梱包資材からのプラスチック削減活動を始め、純正部品についても、ポリエチレン製の梱包資材の一部を紙製素材に置き換えていくという。
スパイバーの人工タンパク質がいよいよ大量生産へ = バイオテクノロジー
バイオテクノロジーを使った人工タンパク質に注目が集まる。 原料を石油に依存しない人工タンパク質は、生化学的な資源循環が容易になり、アパレルにおける脱プラ、脱マイクロプラスチックスや脱アニマルのニーズに、役立つ可能性があるという。
この人工構造タンパク質を手がけるSpiber(スパイバー)が、米国で2022年以降、年数千トン規模の生産を始めるという。普及にむけ大量生産の準備が始まったようだ。
スパイバーは米穀物メジャーのADMと契約、米国での人工タンパク質Brewed Protein™(ブリュード・プロテイン)の量産で協業するという。ADMはスパイバーに59億円出資し、ADMがブリュード・プロテインの発酵工程を担う。
ブリュード・プロテインは植物由来のグルコースを原料とする。この発酵工程にADMの深い知見が活かされるという。
ADMで生産されたブリュード・プロテインはスパイバーの加工拠点に運ばれ、繊維や樹脂、フィルムなどの形態に加工され、アパレル素材や自動車の部品、毛髪素材など、多様な用途での活用が見込まれているという。
タイでは、既に数百トン規模の工場建設が始まり、2021年には稼働開始、商業生産開始になる予定だという。出荷される人工タンパク質は鶴岡市の本社内紡糸設備にて繊維に加工される。今後、紡糸設備の拡張・増設についても順次進める予定だそうだ。
スパイバーによると、このタイ工場はスパイバーの発酵・精製プロセスのマザープラントとしての位置づけになるという。マザープラントの地としてタイが選ばれた理由は、発酵の原料となるバイオマス資源が豊富でにあり、スパイバーが当面の重点注力分野として位置付けるアパレルや自動車産業が集積していることがあるようだ。
人工タンパク質の可能性
タンパク質は20種類のアミノ酸が直鎖状に繋がった生体高分子で、ほぼ無限に存在するアミノ酸の組み合わせパターンから様々な機能や特性を持ったタンパク質が生物の進化の過程で生み出されてきたという。人工構造タンパク質も同様に、ほぼ無限の組み合わせの中から目的に応じてデザインすることができるとスパイバーはいう。そして、その人工タンパク質は微生物による発酵で生産される。
タンパク質には酵素や抗体のように生理的な役割を果たすものと、細胞骨格やクモの糸のように構造的な役割を果たすものがあり、Spiberでは後者を「構造タンパク質」と定義しています。
毛や爪などを構成する「ケラチン」や、骨、皮膚などを構成する「コラーゲン」も構造タンパク質のひとつと言えます。 (出所:スパイバー ニュースリリース)
スパイバーの独自技術により、多種多様な特性や形態の素材に設計することができるという。その技術で生産される人工構造タンパク質は、繊維として布帛やニット、不織布への加工、樹脂、フィルム、ゲルへの加工、また、複合材料への展開も可能だという。応用範囲も無限ということであろうか。
昨年、ノースフェイスからブリュードプロテインを使った「ムーンパーカ」が発売され、話題になった。素材革命の本命だとWWD Japanはいう。1953年に開発されたポリエステルを超える可能性があるともいう。
スパイバーばかりでなく他社も、人工タンパク質素材の開発を進めている。そうしたメーカたちの供給体制が整い、この素材の利用が進めば、今ある環境問題の防止に役立つこともあるのかもしれない。素材が変わることで自然への負荷も変わることが期待できるかもしれない。
一方で、原料に食糧のような可食物が利用されると、食糧危機を助長しかねない。非可食物を原料とすることに努めてもらいたいと思う。そうすれば、スパイバーが言う通り新たなタンパク質素材の産業化が出来上がっていくのかもしれない。
「参考文書」