台風10号が九州に沿うように北上、通り過ぎていく。
7月の豪雨の被災地九州に最強クラスの台風とは......自然現象だからと片付けてしまっては少々むご過ぎる気がする。
時間経過とともに被害状況も明らかになってくるのだろうか。
様々な変化が急に起きているように感じる。コロナの影響もあったりするのだろう。
急速に悪化する経済に構造改革を余儀なくされる業界がある。コロナ以前からあった変化の波に乗れなかった企業が、対応を迫れているということだろうか。
石油元売りもその中のひとつのようだ。2020年4 - 6月期、国内の石油元売り3社は赤字決算となったという。
新型コロナの感染拡大で始まった移動制限で需要が減少したことが理由のようだ。
「今後の焦点は、原油の需要減少が想定より速まり、製油所の統廃合を前倒しで進める必要があるかどうかだ」とニューススイッチは指摘する。
ガソリン需要の中長期の低下を想定し合理化策を検討してきたが、「コロナの影響で(製油所再編の)計画を見直さないといけない。
複数の前提条件でシミュレーションしている」(尾沼温隆出光興産財務部長)と対応を迫られている。 (出所:ニュースイッチ)
欧州の石油メジャーBPやシェルは、「脱炭素」、「脱石油」に舵を切った。国内元売り3社にもそうした流れに乗れるか、試されているのかもしれない。
出光興産は、オーストラリア クイーンズランド州にある権益85%の石炭鉱山で、石炭と混合して燃焼させることが可能なバイオマス発電用燃料の試験を開始したと発表した。
降雨量が少ないクイーンズランド州でも生育する「ソルガム」という植物を石炭鉱山遊休地で栽培、7月までに順調な生育が確認され収穫を行ったという。
出光興産によると、このソルガムを使い、2020年後半には木質ペレットの半炭化試験を予定しているという。
木質ペレットを半炭化したブラックペレットは、従来の木質ペレットに比べて耐水性・粉砕性などに優れ、石炭と同様に取り扱うことができるため、石炭火力発電におけるCO2排出量低減が期待できます。 (出所:出光興産)
また、出光は、このプロジェクトでオーストラリア クイーンズランド州政府から補助金2万豪ドルを受託していると公表した。バイオマス発電燃料の大規模商業輸出基地となる可能性があることが受託の理由のようだ。
出光は、エネルギー源の多様化を進め、再生可能エネルギー普及を推進するという。
一足飛びに欧州の石油メジャーのように、「脱石油」路線への転換は進まないように見える。
出光は、19年4月に昭和シェル石油と経営統合した。石油需要減少を見越しての動きだったのであろうが、このコロナ渦で、一気に需要減少が加速した。
事業転換を模索する出光の苦悩が、今回の「ソルガム」発表から垣間見える。
昭和シェルとの経営統合では、当初、創業家が経営統合に反対した。そのとき、創業家が明かした反対した理由が週刊現代に手記として残っている。
出光興産は、これまで消費者本位、すなわち、消費者の利益を第一に考えて事業を行い、また、事業を通じて社会に貢献することを目指してきたはずです。
にもかかわらず、自社の利益を守るために、生産者間の競争を減らし、石油製品の価格を高止まりさせようとしているのは、大変残念ですし、消費者の理解を得られるものではないはずです。 (出所:週刊現代)
出光の創業者は、出光佐三、「海賊と呼ばれた男」だ。大型タンカー日章丸を就航させるなど、驚くようなことを実行しては、日本の石油産業を支えてきた。
創業者の「経営理念」は残っているのだろうか。
もし佐三が生きていたら、このとき、どのような選択をするのだろうか。
【余談】
出光興産は、プラスチックス関連事業も展開している。過去何度か出光製のポリカーボネート(PC)やポリスチレン(PS)の採用を検討したこともあって、少しばかり興味があった会社。
今回の「ソルガム」の話を聞いて、バイオ系に進出するのかと期待もあって調べてみた。
中期計画を確認してみて、中期計画策定に苦悩していることを明らかにする中期計画も珍しいと感じた。明確に未来を描けていないのかもしれない。経営的に難しい選択を迫られているのだろう。
出光を知らべてみて、BPの「脱石油」という決断と、戦略策定の努力は並大抵のことではなかったのだろうと感じる。
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