世界で最も持続可能性の高い100社「グローバル100」に毎年のように武田薬品工業が名前を出すという。
今年のランキングは71位。アリナミンとか、ベンザで「タケダ」の名前は知っていたが、正直、あまり詳しくは知らない。
つい先ごろ始まった米モデルナの新型コロナワクチンの臨床試験(治験)を行なうのも武田薬品だという。また、その供給も武田薬品が担うそうだ。
その武田薬品が、2019年度、バリューチェーン全体でカーボンニュートラルを達成したと発表した聞き、少しばかり興味を抱いた。
薬は身近な存在だが、意外にもその製薬業界は競争が激化、体力のある少数の企業しか生き残れないというのが業界の常識だという。
国内では、武田薬品が唯一グローバル市場で通用する力があるといわれていると、ThePageは指摘する。
創業239年の老舗
2020年6月に「タケダ」は創業239周年を迎えたという。
1781年、初代近江屋長兵衞が、幕府免許のもと、薬種取引の中心地であった大阪・道修町で和漢薬の商売を始めたのが始まりだという。武田薬品によれば、薬を問屋から買い付け、小分けして地方の薬商や医師に販売する小さな薬種仲買商店であったという。
そして、1954年、「アリナミン」の開発に成功、発売を開始したという。その頃は、戦後の食糧難からくる栄養不足が問題になっていたという。その改善のため、食品強化用ビタミンの供給を始めた。
使命
「人々の健康と医療の未来に貢献するため、何事にも誠実に取り組みこと」、それがタケダのコミットメントだと、クリストフ・ウェバーCEOはいう。
そのタケダには、「メディカルサイエンスリエゾン(MSL)」という仕事がある。
「日々患者さんに接するドクターにお話を伺い、いまのお薬では解決できていない症状や、よりよい治療へとつながる道を切り拓く職業です」と説明する。
MSLは医学や薬学の先端知識をベースに日々ドクターと議論し、「アンメットメディカルニーズ」を探します。
それが論文や新薬に繋がる可能性もありますが、私たちが目指すのは、まだ知られていない病気や苦しんでいる患者さんをいち早く見つけることです。病で苦しんでいる人、悩んでいる人を誰一人として置き去りにしない。そんな思いを、高度な医薬学の知識で形にするのがMSLです。 (出所:タケダ )
こうしたことが製薬会社の使命なのだろうか。それはまた「人の生」を探求するということなのだろうか。
なぜタケダは「カーボンニュートラル」達成にこだわったのか
クリストフ・ウェバーCEOは「アンメットメディカルニーズ」の解決と同じように、CO2の排出量削減に取り組むという。
「人の生」とか「健康」を考えるその延長上に地球の健康もあるのだろうか。地球が健康でなければ、人の健康もありえない、そう言っているようにも聞こえる。
タケダは、「今回のカーボンニュートラル達成は、2040年度までの事業活動でのオフセットなしでのカーボンゼロ達成に向けた重要なマイルストンである」という。
今回はその達成のために、12ヵ国で30件以上の再生エネルギーやカーボンオフセットのプロジェクトに投資したという。その他にも、様々なプロジェクトを実行し、カーボンニュートラル活動を推進する。
- マラウイにおける飲料水の浄化:新たな深井戸を掘削すると同時に、破損した深井戸を修復し、安全な飲料水を提供します。その結果、水の煮沸や浄化を目的とした燃料用木材の使用量が減少しました。
- ワーキング・ウッドランズ・プログラム:米国テネシー州北東部に広がる8,600エーカー(34.8平方キロメートル)を上回る面積の民間所有の公園を保全し、米国の低所得地域においてレクリエーションを中心とした観光の振興を進めています。
- 日本での森林管理:日本国内における持続可能な森林管理の実践を通じて、自然の二酸化炭素吸収を促進し、地域の大気の質向上を図ります。
- 中国での太陽熱調理器導入:中国の辺境の地に居住する農家において、石炭に代えて太陽熱による調理器具を導入できるように投資を行いました。これにより、調理やお湯のニーズに応えるとともに、屋内の空気清浄化に寄与しています。
- インドでの太陽光エネルギー活用:太陽光エネルギーによる照明や温水暖房の開発を支援し、インド国内の複数の州において化石燃料使用量を削減します。 (出所:タケダ)
調べてみれば、なるほど、持続可能な企業の証である「グローバル100」に顔出す理由がわかる。
医療が、CSR社会的責務と深く結びついていることと無縁ではないののかもしれない。
誠実に本業に取り組めば、必然やらなければならないことも明確になる、そして、その中に気候変動の問題もあるということなのであろうか。
本来、どの業界も何かしらの社会的責務を負っている。その解決が本業ということなのだろうけれども、多くの企業がそれを見失っている、そんなことを考えさせられた。
「参考文献」