2050年のカーボンニュートラルの達成に向け、温室効果ガスの排出削減への取り組みが始まっている。しかし、どんなに排出量の削減に努めても、排出が「ゼロ」になることはないのだろう。その不可避に排出された二酸化炭素などをオフセット、相殺してくれるのが森林の存在だ。森林が適正に管理されれば、森は二酸化炭素を吸収してくれる。
林業は、他の産業と同じように、もしくはそれ以上に重要なのかもしれない。国はどんな森林施策を実行するのだろうか。
カーボンオフセット
林野庁によれば、森林での吸収量の目安は、地域や樹種によって異なるが、スギであれば1年間にヘクタール当たり1~3炭素トン程度で、広葉樹であれば1年間にヘクタール当たり1炭素トン前後だという。
ただ樹木の年齢により、その吸収量には違いがあるという。その違いは樹木の呼吸量によって生じるという。若い樹木は二酸化炭素をどんどん吸収して大きくなり、一方、成熟した樹木は、呼吸量がだんだん多くなり、二酸化炭素の吸収能力が低下するという。
樹木も含め植物は、光合成により二酸化炭素を吸収し酸素を放出する一方で、私たち人間と同じように生きていくための呼吸もしていているので、酸素を吸収し二酸化炭素を放出しています。ただし、光合成に使われる二酸化炭素量は呼吸から出る二酸化炭素量よりも多いので、差し引きすると樹木は二酸化炭素を吸収していることになります。(出所:林野庁)
都市に第2の森林づくりを
人工林が利用期を迎えたことを理由にして、林業・木材産業の「成長産業化」を推進するとしていた「基本方針」が、今回、「森林を適正に管理して、林業・木材産業の持続性を高めながら成長発展させることで、2050カーボンニュートラルも見すえた豊かな社会経済を実現する」に変わった。
SDGsとカーボンニュートラルを意識した計画に変更したということだろうか。
そして、 森林・林業・木材産業による「グリーン成長」を掲げ、 この実現のために、5つの柱からなる施策を実行するという。
そのひとつに「都市等における「第2の森林」づくり」をあげる。
伐採した木材は二酸化炭素を貯蔵する。燃やさずに利用すれば脱炭素に貢献することができる。 建物の木造化・内装の木質化を進めれば、都市にも炭素を貯蔵できる。
国自らが率先して公共建築物等の木造化などを推進するそうだ。
カーボンニュートラルへ
2030年の国産木材の供給量を19年実績比35%増の4200万立方メートルに増やし、伐採した跡地に再び苗木を植える再造林や、建築物への木材活用拡大を通じて温暖化ガスの吸収量を増やし50年の脱炭素目標につなげると、日本経済新聞はこの計画を解説する。
国産材の利用が進めば、森林が適正に管理され、森林での二酸化炭素吸収量が維持されるのだろう。そればかりか、都市で木材の利用が進めば、そこに炭素を貯蔵することもできる。
そればかりか、ここ最近聞くようになった「ウッドショック」木材価格の高騰の緩和に役立つのかもしれない。
「カーボンニュートラル」、従来輸入に頼らざるを得なかった資源を国産化できるという副産物も生んでくれるのかもしれない。
再生エネルギーが主流になれば、輸入する化石燃料の必要量が減じる。ミドリムシなど藻類から作られる国産バイオ燃料も同様だ。燃料として使用するときは二酸化炭素を排出するが、原料になるミドリムシが育つ過程では二酸化炭素が吸収され、オフセットされる。
森林は国土の約3分の2を占める「緑の社会資本」、それを有効に使えば、カーボンニュートラルに貢献する。
その価値を持続的に発揮させていくためには、将来にわたって、森林を適切に整備及び保全していかなければならないと「森林・林業基本計画」は指摘する。