2050年には、海洋中に存在するプラスチックの量が魚の量を超過するとの試算結果がある。IBMによれば、世界中の海にプラスチックが1.5億トンもあり、年間800万トンのペースで増え続けているという。驚くことに、「世界中に放置されたプラスチックをすべて回収してリサイクルすることができれば、その価値はなんと4兆ドルにものぼる」とIBMは指摘する。
海洋プラスチックは誰かが回収しなければ無くなることはない。
世界各国で海洋プラスチックを回収しようと環境保護団体が活動を続ける。こうした活動は多くのボランティアによって支えられ、また、自治体や企業からの支援も不可欠。活動を継続するためにも資金は必要になる。資金調達はこうした活動にとって切実な問題であろう。
Parley for the Oceans(パーリー・フォー・ザ・オーシャンズ)
米ニューヨークに本拠を置く環境保護団体「Parley for the Oceans(パーリー・フォー・ザ・オーシャンズ)」は、自分たちでエコバックやTシャツを作り、これらを販売している。
(写真出所:Perly for the Oceans Web page)
Plastic Bank(プラスチック・バンク)
カナダ バンクーバーに本拠を置く「Plastic Bank(プラスチック・バンク)」は営利団体だが、環境中のプラスチック廃棄物を減らし、開発途上国の貧困を軽減するという使命を表明する。Plastic Bankは収集したプラスチック廃棄物を企業に販売して資金を得て、ブロックチェーンでトークンを発行、廃棄プラスチックを収集した人々に還元する。
サーキュラー・エコノミー 環境保護団体 x グローバル企業
グローバル企業は、こうした活動と連携して、サーキュラー・エコノミーへとビジネスモデルの転換を図る。
「カビキラー」や「ジップロック」が有名なSCジョンソンは、Plastic Bankとの連携を発表した。
既にインドネシアの9か所に回収センターを設立する支援を行ない、世界各国に、合計509か所の回収センターや拠点設立にも支援するという。こうして集められる廃棄されたプラスチックが、SCジョンソンの家庭用掃除ブランド「Windex」の容器に使われる。
アパレルメーカーのステラマッカートニーは、環境パートナーにParley for the Oceansを選びコラボして、「サステナビリティ プロジェクト」を進めている。
サステナビリティで注目のグローバル企業
WWD Japanが、昨年、読者の環境意識をSNSで調査し、「注目しているサステナブル企業やデザイナーは?」という質問で、ステラ・マッカートニーがダントツの1位だったという。「ステラがサステナビリティという言葉を知ったきっかけになった」という声もあったそうだ。
「2位が「パタゴニア)」、3位が「ユニクロ」、4位が「アディダス」、5位が「ザラ(ZARA)」という結果になった。
「ユニクロ」や「ザラ」は、これまで大量生産・大量廃棄の代名詞のように扱われていたファストファッションとは別のサステナブルな企業イメージを持たれているようだ。(出所:WWD Japan)
グローバル企業であたり前になったサーキュラー・エコノミー
こうした企業は、声を揃えて「サーキュラー・エコノミー」という。
ステラはWebページで説明する。
循環性
さまざまな境界を打ち破り、現状に挑みながら、単に悪影響を抑えることから良い影響を生み出すことへと進化していくことが目標です。
ファッション産業の現状を完全に再考して、新しい循環型経済(サーキュラーエコノミー)へとシフトしていきたいと考えます。(出所:ステラ・マッカートニー Webページ)
SUSTAINABILITY コラボレーション
パートナーとコラボレーターは、ステラ マッカートニーの使命を達成するために不可欠な存在です。未来に相応しい、美しくモダンなファッションを創造するために、共に協力しているNGO(非政府組織)、ブランド、業界団体をご紹介します。 (出所:ステラ・マッカートニー Webページ)
NGOや環境団体などを支援、そこで集められる「廃棄プラスチック」を使って新たな素材を作り出せば、バージンの素材を使用しなくても、持続可能なサステナブルなものづくりができる。
まとめ
ステラのような企業が増えれば、いつしか海洋プラスチックは少なくなっていくのかもしれない。
環境保護団体などの活動が、ステラを支え、それによって「お金」も循環していく。海洋プラスチックが「資源」にもなる。
「ボランティア・市民活動(環境保護団体)」 × 「ものづくり(メーカ)」 × 「テクノロジー」=「サーキュラーエコノミー」
ということであろうか。
こうした活動で、海洋プラスチックのような社会課題がひとつひとつ解決されていくのか。
企業は、SDGsやサステナビリティを、CSR活動や企業イメージに役立てようとするだけではいけないのかもしれない。
「参考文書」