「ミドリムシで空を飛ぶ」
そのことばに興味を持った。それがユーグレナを知るきっかけだった。研究開発がともなうプロジェクトの事業化には時間が掛かるのだろう。ミドリムシが食品などに応用されたとのニュースを目にすることはあったけど、「空を飛ぶ」ことはあまり耳にしなかった。
昨年、ミドリムシを使ったバイオ燃料の試験プラントが完成したとニュースを見て、ようやく事業化の目途がたったのかと思い、再びユーグレナのことが気になるようになった。
不可能と思われるような社会課題でも解決し得ることを可視化していきたいのです。
と、ユーグレナの出雲社長はサスティナブルブランドジャパンのインタビューに答える。その言葉には出雲社長の強い信念を感じる。
立ちはだかる壁
その空を飛ぶプロジェクトを実用化するためには、バイオジェット燃料の製造技術の国際規格であるASTM D7566規格を取得する必要があった。この規格を取得できなければ空を飛ぶことができない。
鶴見の実証プラントに導入した技術「BICプロセス」が、この規格に合格したことで、国土交通省が認可通達を出した。
ユーグレナのバイオ燃料の使用が認められたことで、実用化へのハードルをまたひとつ乗り越えた。早ければ8月にも実用化されるという。
ミドリムシで空を飛ぶ日が一歩近づいた。
なんとか彼らが、健康に生活できるような栄養源をみつけたい
ユーグレナの始まりは、出雲社長が、栄養価の高いミドリムシに出会ったとき、バングラデシュの栄養失調に苦しむ子供たちを救いたいとの思いがあったからだった。学生時代にバングラデシュの農村でみた風景が出雲社長のビジョンの源になった。
今、ユーグレナはバングラデシュに「ユーグレナクッキー」を900万食以上届けている。
ユーグレナから販売されている商品の売上の一部が、このユーグレナクッキーになり、バングラデシュ支援に活かされているという。
ユーグレナの支援で育った子どもたちが、今度は自分たちでミドリムシを育て、次の世代の子どもたちに「ユーグレナクッキー」を手渡していく、そんな連鎖が生まれるといいのかもしれない。
自分たちの未来を創る 17歳のCFO (=Chief Future Officer)誕生
昨年、ユーグレナは17歳のCFO(=Chief Future Officer)を採用した。業務は、会社と未来を変えるためのすべてだという。
ユーグレナCFO(Chief Future Officer) 決定までの軌跡
若者たちが自分たちの力で未来を創っていける。
そんな理想も実現しようとしているのがユーグレナだ。
新たな試練
そんなユーグレナだが、足元は、少しばかり業績が悪化しているようだ。
永田暁彦副社長は、売上高が減少した主要因は、広告投資を抑制した健康食品の直販・流通部門の不調が最大の要因だと説明。健康食品の直販では、約12億700万円の減収となった。
新たな成長軸として見込んでいたドラッグストアなどでの売り上げ(流通部門)が伸び悩み、結果として売上高全体も減った形だ。(出所:Business Insider)
「バイオ燃料事業の継続性の維持は、ユーグレナのヘルスケア事業の成長の上に成り立つというのがユーグレナのメインストーリーです」 (出所:Business Insider)
2005年の創業後、リーマンショックと東日本大震災が起きました。その前と後で私たちは違う世界にいます。
従来のやり方の延長線上には、幸せな社会はないと多くの人が気付いています。
(出所:サスティナブルブランドジャパン)
ユーグレナ自身も気づいていることであろうけど、今までと同じやり方では、今までの企業と同じ結果しか生まれてこない。
顧客とつながる何か新しい方法を見つけなければならない。
糸口
『商品を持続可能なやり方でつくっていることを示したかったのです』
と、出雲社長はサスティナブルブランドジャパンのインタビューに答える。
ユーグレナの存在意義、パーパスは明確なはずだ。
生みの痛み、成長企業の痛みということなのだろうけど、なんとか答えを見つけ出して欲しい。若きCFOに託された思いなのかもしれない。
会社が始まって15年、まだまだ伸びしろはあるはずだ。
「関連文書」
「参考文書」