ポストコロナ、アフターコロナで、「もう二度と同じ世界に戻れない」との言葉を聞くようになった。一度、身に纏った習慣を変えるのは難しいということなのかもしれない。
コロナがあまりにも危険なウィルスであることはもう誰も否定できまい。密を避ける行動や、ソーシャルディスタンスが当たり前になり習慣になる。こうしたことを起点にして、また次の新しい習慣ができあがっていく。ただそれまでにはもう少し時間がかかるのだろう。
米国では、「公共交通機関を避けて自動車を使いたいと考える人が増えている」とロイターが伝える。
大いなる変化なのかもしれない。ビフォーコロナでは、ミレニアル世代を中心に、車離れが指摘され、ライドシェアやMaaS (=モビティアズアサービス)の時代かと言われていた。
複数の世論調査によると、都市部に住む米国民の中には初めて自動車を購入しようとする人々もおり、新型コロナで打撃を受けた自動車メーカーにとっては追い風となるかもしれないが、都市計画担当者が環境対策の目標を達成する上では難題を突き付けられることになる。 (出所:ロイター)
制限解除から2カ月たった中国でも、大都市では公共交通機関の利用者数が危機前を約35%下回り、自動車の購入が増えているとロイターは指摘する。
JETROは、中国での新車販売状況を伝え、ロイターの指摘とも符合する。
JETROによれば、米フォードと協業する長安フォードは、前年同期38%増の2万465台だったという。長安汽車集団としては、4月、前年同月比32.0%増の15万9,557台販売したという。
一見、同じ世界に戻るかとの気になるが、どうも違うようである。
子ども5人とブルックリンに住む夫妻は、これまで自動車を所有したことがなかったが、4月初め、ついにホンダのオデッセイを買うことを決めた。「地下鉄を使っている自分たちをすごく誇りに思ってきたが、今は出掛けるのに自動車が一番安全だ」と夫は話す。 (出所:ロイター)
オフィスのあり方にも変化がおきるのだろうか。緊急事態宣言が解除された後もテレワークが求められている。この先もテレワークが働き方の主体になるのだろうか。
ニュージーランドのアーダーン首相は、「たくさんの人から、週休3日制にすべきだという話を聞いている。これは究極的には雇用主と従業員の間の問題だ」と説明したそうだ。「しかしこれまでも言ってきたように、私たちはCOVID-19から多くのことを学んでいる。在宅勤務の柔軟性が、生産性を上げている」と述べたとBBCが伝える。
これを機に、長く語られてきたワークワイフバランスや働き方改革が進むのだろうか。
「こうした柔軟な働き方は、アルバイトの学生や、母親になったばかりの人、子どもと多くの時間を過ごしたい親、高齢者の世話をしている人などに、より良いワーク・ライフ・バランスをもたらしてくれる」 (出所:BBC NEWS)
3月25日の東京都の緊急会見翌日から全社員を対象にテレワークへ切り替えを行ったENECHANGEグループは「ウィズコロナ時代における働き方改革宣言」を行ったという。
1.テレワーク制度を恒久的に導入し、働き方の選択制度を設けます
全社員週2日テレワークを原則とし、最大週5日のテレワークも選択可能とする制度を全社員に恒久的に提供します。柔軟な働き方ができる選択制度を採用することで採用力の向上や離職率の低下にも繋げます。また、情報セキュリティ強化への対策を積極的に行い、テレワークに伴う情報リスクに対処します。
2.オフィススペースを縮小します
一度に出社する人数が減少すること、大規模な社内集会はオンライン開催に原則移行することからオフィスを縮小し、削減される原資は、社員の生産性向上(モニターなどのテレワーク環境整備)のために還元します。
3.ハンコ文化を取りやめ、契約書や請求書は電子契約へ移行します
政府の指針に先駆け、お客様との取引に必要な契約書や請求書のすべてを原則電子契約へ移行します。押印による出社が必要な社員をなくしていき、ペーパーレス化を目指します。
4.コミュニケーション手当を新しく導入し「出社を楽しく」します
リモートワークでは直接的なコミュニケーションが取りづらくなることが想定される中、社員同士で情報交換できる場を積極的に設けることで(ランチに対する手当など)、テレワークに伴う新たなストレス対策、リフレッシュ効果による集中力や生産性の向上に繋げます。(出所:PR Times 「オフィスを縮小し「集まりたいときに集まれる場所」へ 積極的に変わることを選ぶ、新しい働き方「ウィズコロナ宣言」を発表」 ENECHANGE株式会社)
こうした企業がふえていくのだろうか。
「COVID-19の流行が収まった後、柔軟な働き方を求める従業員の雇い方を雇用主が学んでくれれば、人材管理の大きな勝利となるだろう」とBBCは指摘する。
そればかりではない。働き方が変わることで、都心のオフィス事情が変わるかもしれない。
ベトナム ホーチミンでは、「オフィス賃料は値下げ、長期的に下落の可能性も」とJETROが報じている。
ヘッドオフィスは小さくなり、郊外にサテライトオフィスがあってもいいのかもしれない。
人事考課、給与体系には変化は起きないのだろうか。
こうした今まで習慣にしてきたことが変化するのだろうか。静かな変化がゲームチェンジを引き起こしていくのかもしれない。
それは、「二度と同じ世界には戻れない」不可逆な世界になるということなのであろうか。
「参考文書」