Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

気候危機と表現した「環境白書」、イノベーションにこだわる「産業技術ビジョン2020」

 

 環境省が、令和2年版「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」を発表した。

 白書は、「気候変動時代における私たちの役割」として、政府、自治体、企業、個人による脱炭素型、自立分散型の社会づくりに向けた具体的な取組、及び新型コロナウイルス感染症に対する環境行政の対応について記載しているという。

 

令和2年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書(概要)環境省

コロナ後の経済復興に当たっては、持続可能でレジリエントな経済社会へと再設計していくことが不可欠です。

白書においては、一人一人ができる取組の一つである食やエネルギーの「地産地消」など自立分散型の社会づくりに向けた取組を具体事例とともに紹介しています。

 (出所:環境省プレスリリース

 

 これら白書は、6月12日(金)に閣議決定され、国会に提出されたという。 

 日本経済新聞によれば、閣議後の記者会見で、小泉進次郎環境相が「環境省として気候危機宣言をする」と述べたという。

 

r.nikkei.com

 

「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」の冒頭『はじめに』では、「気候危機」という言葉を使い、2020年が節目の年になると指摘する。

 気候変動に関するパリ協定が本格的に運用されること、また、海洋プラスチックごみ問題の施策が本格展開されることをあげる。 

 また、SDGsについても言及し、気候変動、資源循環、生物多様性いずれの問題もグローバルな課題であるが、同時に私たちの生活とも密接に関係するローカルな課題でもあると指摘、各々の地域が持続可能であり、個々の地域レベルでのSDGsの達成が必要であるという。

 

今を生きる私たちの世代のニーズを満たしつつ、将来の世代が豊かに生きていける社会を実現するためには、従来型の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムを見直し、環境、経済、社会を統合的に向上する社会へと社会を変革していくことが不可欠です。

そのためには私たちには何ができるでしょうか。本白書の総説では、気候変動問題を中心に気候変動時代に生きる私たちの役割について考えたいと思います。

(出所:環境省 「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」

 

  昨年のFriday For  Future活動のことであろうか、若者たちによるデモが起きたことにも言及している。

 

 

 

 5月下旬、経済産業省は「産業技術ビジョン2020」を発表した。 

 ビジョン策定の背景で、近年、日本のイノベーションを巡る状況は芳しくなくとし、日本のイノベーションシステムが抱える本質的な問題を捉え、産業技術という切り口から中長期的な視点で解決すべき課題を特定し、イノベーションの創出に取り組む必要があると指摘する。 

 一方で、世界動向からは、価値軸が転換、資源・環境制約が急速に強まっていることなどから 「SDGs」 の重要性が増大、「サーキュラーエコノミー」を含む持続可能な地球環境の実現のためにはイノベーションが不可欠であり、イノベーションの在り方もサーキュラーエコノミーを前提としたものに変わっていくことが求められるともいう。

 

「産業技術ビジョン2020」とは、2050年に向けた5つのグローバルメガトレンドと世界の動向を踏まえながら、日本が抱える本質的課題を仮説として特定し、2050年の産業技術の方向性、2050年までに実現すべきこと等を取りまとめたもののようだ。

グローバルなメガトレンドに適応し、Society5.0実現に向けて変化にダイナミックに対応していくための鍵は、多様かつ有機的なイノベーションであり、知的資本の活用を基盤とする知的資本主義経済への移行は日本にとって不可避。

2050年に向けて、日本は、持続可能なグローバル・コモンズ(サイバー空間、リアル空間双方における人類の共有資産)を意識した価値観を内外に提示しながら、イノベーション産業の創出、すなわち技術や人材等の集積とネットワーク化、エコシステム形成において存在感を発揮し、国際貢献を果たしていく。 

日本のイノベーションの停滞は、根深く複雑な課題であり、単一の特効薬は存在しない。3つレイヤーの取組を一体的・総合的に推進し、イノベーションの歯車を動かしていく。 (出所:経済産業省

 

www.meti.go.jp

 

 

 

  何やらイノベーションの話が加わり、少しばかり複雑化してくるように感じる。イノベーションの方向性を特定して、産業界に強いているようにさえ感じる。

 こうしたことは、世界的批判につながった石炭火力発電の高効率化などが、その好例ではないであろうか。

 

 イノベーションには色々な定義があるだろう。

 大辞林によれば、「経済学者シュンペーターの用語で、経済成長の原動力となる革新。生産技術の革新、資源の開発、新消費財の導入、特定産業の構造の再組織などをさすきわめて広義な概念」という。

 いずれにせよ、社会が受け入れ、実装されなければ、イノベーションは成り立たない。

 

 国としてすべきことは、2050年のあるべき姿を想定して、それに対し必要な要素技術など基礎研究にとどめておくべきではなかろうか。

 結局、世界的なイノベーションは、今ある世界的な動きやトレンドの中からしか生まれてこない。

 

 今は、日本発のイノベーションにあまりこだわり過ぎず、環境白書に従った行動が優先されている気がする。

 

 

「関連文書」 

dsupplying.hatenablog.com

 

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