海洋プラスチックごみを原料にしたボールペンをパイロットが発売したと発表した。国内初だという。 海洋プラスチックごみ由来のリサイクル素材の活用を広げ、循環型社会の実現に向けた取組みを強化していくそうだ。
日常的に使う小さなボールペン、使うプラスチックスの量は少ないけれども、サーキュラー・エコノミーを始める企業がひとつ増えたことにほっこりする。
サーキュラー・エコノミー、循環型社会に移行してしまえば、こうしたことはもうニュースにならなくなっていくのかもしれない。
(写真:パイロット『スーパーグリップG オーシャンプラスチック』(価格:110円/税抜価格100円)2020年12月25日発売開始)
水先案内人 パイロット
パイロットによれば、日本国内で回収した海洋プラスチックごみからリサイクルした再生樹脂をボディの一部に使用し、その他のパーツにもリサイクル材を使用しているという。これにより消耗部分を除いた全プラスチック重量中の74%が再生材になるそうだ(エコマーク認定商品・グリーン購入法適合商品)。
ここでもリサイクルはテラサイクルが支えているという。テラサイクルの競合が増えれば、サーキュラー・エコノミーがもう少し定着していくことになるのだろうか。
国のグリーン成長戦略が公表された。2050年のカーボンニュートラルに向けた工程表も記されている。取り組むべき14分野を特定、カーボンニュートラルに向けた課題と対応をまとめている。そこには資源循環関連産業も含まれ、循環型社会形成推進基本法などにより取組みを推進、更なる再生利用拡大に向け、リサイクル性の高い高機能素材やリサイクル技術の開発・高度化、回収ルートの最適化、設備容量の拡大に加え、再生利用の市場拡大を図っていくという。
グリーン成長戦略とは
開示された資料をみると、「温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会と捉える時代に突入」という。
従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長に繋がっていく。こうした「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策 が「 グリーン成長戦略」だという。
「発想の転換」、 「変革」といった言葉を並べるたけることは簡単だが、実行するのは、並大抵の努力ではできないと指摘、産業界には、まだこれまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要がある企業が数多く存在するという。
電力部門は脱炭素化が大前提とし、電力部門以外は、「電化」を中心とし、熱需要には、「水素化」と「CO2回収」で対応するという。
必然的に、電力需要は増加し30~50%増を見込み、省エネ関連産業を成長分野にするという。「カーボンニュートラル」は電化社会と言い換え、蓄電の重要性を説き、 グリーン成長戦略を支えるのは、強靱なデジタルインフラとし、「車の両輪」だという。デジタルインフラの強化 していくためには、 半導体・情報通信産業を成長分野にしていくという。
目標
2018年、10.6億トンだった排出を、2030年ミックスでは、25%減の9.3億トンまでに減少させ、目標年である2050年には、排出+吸収で実質0トン、100%減を達成する絵を描く。
資料は、世界中において脱炭素社会をリードするビジネスの主導権争いが激化している中、研究開発で終わらず社会実装まで行うため、企業経営者には、この取組を、経営課題として取り組むことへのコミットを求めるという。
また、プロジェクトを採択される企業は、採択時において、経営者トップのコミットメントの下、当該分野における長期的な事業戦略ビジョンの提出を行い、経営者自身に対しても、経営課題としての優先順位を明確化させ、プロジェクト成功のための議論をする場への定期的な参画を求めると断じ、勇ましい内容を書き記す。
その上で、政府の2兆円の予算を呼び水として、民間企業の研究開発・設備投資を誘発(15兆円)し、野心的なイノベーションへ向かわせ、世界のESG資金3,000兆円も呼び込み、日本の将来の食い扶持(所得・雇用)の創出につなげるとまでいう。
反発
国のこうした戦略には批判はつきものなのだろう。原子力や火力発電も2050年になっても残すことを目標にしている以上、反発があっても当然のことなのだろう。政府を擁護する気はさらさらないが、こうした戦略は社会環境の変化や計画の進捗、技術の進歩に合わせ機動的に見直されるべきものだろう。
産業界にこうした変革を求め、コミットメントまで課すのであれば、まずは、行政、政治が自ら変革を起こし、行動変容の手本を示すべきなのだろう。クリーンな政治が、グリーン社会への近道なのかもしれない。
人は元来変化を好まないものである。絵に描いた餅に終わらせないためにも、信頼の回復が求められているのだろう。
希望
年末押し迫って様々ニュースが流れる。ブルームバーグの「見逃していませんか、今年の明るい話題-コロナ禍でも希望の光」と題した記事が気になった。
約100年で最悪の公衆衛生上の危機の渦中にあっても、安堵(あんど)や喜びをもたらしたり、少なくとも慎重な楽観につながったりする出来事もあったことを思い出してみよう。 (出所:ブルームバーグ)
グリーン成長戦略を希望の光と思えるようになればと願う。そうできれば、長引きそうなコロナ渦を耐える力になり、行動変容につながっていくのかもしれない。