「座礁貨物船の亀裂拡大 『真っ二つになる恐れ』」とのAFPのニュースを見ては驚く。
先月25日、インド洋のモーリシャスの南東のサンゴ礁に商船三井が傭船した「わかしお」が座礁し、船体の亀裂から燃料の重油が漏れているのが確認されていた。
ロイターによれば、モーリシャスのジャグナット首相は、破損した燃料タンク1基からの流出は止まったが、まだ他の燃料タンク2基に2000トンの重油が残っているとした上で「船体に複数の亀裂が確認されており、非常に深刻な事態に直面している。最悪のシナリオに備えるべきで、船体がいずれ崩壊することは明白だ」と語ったという。
AFPは、「既に1000トンを超える燃料がモーリシャスの青い海に流出し、世界中の観光客を魅了してきたサンゴ礁や白い砂浜、手付かずのラグーンを汚染している」と伝える。
モーリシャスの人々の暮らしや経済は、沿岸部の生態系に大きく依存している。専門家らは、船体の亀裂拡大によりさらなる重油流出が起きれば、繊細な生態系が取り返しのつかないほど壊滅的な打撃を受けることになると警告している (出所:AFP BB NEWS)
EURONEWSは、現地での油の回収について伝える。
ボランティアは被害を抑えるため髪とストッキングを使っているという。
「私たちはこの被害から回復させることはできません。しかし、私たちにできることは、できる限り軽減することです」と環境コンサルタントの声を紹介します。
「人々はサトウキビの葉とストローからオイルブーム(流出を防ぐために使用されるフローティングバリア)をすばやく作り、ペットボトルを使用して海に浮上させました」
「海岸では、ボランティアが空のオイルドラムを使用して、浅い水域にすでに浮かんでいる油を集めています」。
またもや石油のリスクが見られます。
気候危機を悪化させ、海と生物多様性を破壊し、アフリカで最も貴重なラグーン周辺の地元の生計を脅かしています (出所:EURONEWS)
「化石燃料製品を生産し、輸送、保管するための安全な方法は保証されていません」
「この流出事故は運命のねじれではなく、化石燃料へのねじれた依存症の選択の結果だ」とEURONEWは指摘する。
今回のような石油関連の流出事故は幾度となく繰り返されてきた。
2010年、英BPがメキシコ湾で原油流出事故を起こした。
Wikipediaによれば、技術的不手際から掘削中の海底油田から逆流してきた天然ガスが引火爆発し、海底へ伸びる5500mの掘削パイプが折れて大量の原油がメキシコ湾へ流出した。BPによると7月16日までの原油流出量は約78万キロリットル(490万バレル)であったという。被害規模は数百億USドルとされるという。
BPが賠償金や原油の回収、生態系の回復などに費やした資金は総額で424億ドル。さらに、BPは事故に全面的な責任があると判断すれば、最大176億ドルの民事制裁金を科され、経営が傾きかねない状況だ。 (出所:日本経済新聞)
このメキシコ湾での事故が起こった当時、パタゴニアは「メキシコ湾からのパタゴニア・ストーリー:環境保護団体と提携し、アメリカ史上最悪の原油流出事故を追う」という記事を出し、「石油に依存すべきではない」と指摘していた。長い引用となるが、そのままに転記する。
私はルイジアナを訪れる前に事故について見たり読んだりしたことと、被害の最も大きい地域で実際に起きていることに大幅な食い違いがあることに驚いています。ボランティアに参加する前、私はこの流出事故をおもに環境災害と捉えていました。記事やニュースでは、メキシコ湾沿岸地域の人びとに対する影響についてはほとんど取り上げていませんでした。プラクマインズ郡でさまざまな地域メンバーと話したり対話集会に参加しながら1週間を過ごしたあと、BP原油流出事故の影響に対する私の理解ははるかに明確になりました。この事故は私の生涯で最悪の環境災害であるだけでなく、地域全体の生活の糧に大打撃を与えるものです。
だからこそ、私の体験を皆さんと分かち合いたいのです。皆さんもこの現実に激しい憤りを感じ、できることをしようという気持ちなっていただけたら幸いです。簡単にできることはあります。BP原油流出事故について学ぶことによって、私たち自身や家族のために賢い選択をすることもひとつです。自分が暮らしていく上で賢い選択をすることによって、私たちの原油依存を減らすこともできます。私たちが購入もしくは消費するものを意識することによって石油関連製品の需要を減らし、また公共の交通機関や自転車、あるいは歩くことによって自動車の使用を削減することもできるのです。原油除去作業についての関心を示し、BPへ説明責任を要求することもできます。ひとりひとりの声が重要なのです。 (出所:パタゴニア公式サイト クリーネストライン)
規模の違いはあれ、モーリシャスの事故も同じことを示唆しているのかもしれない。
メキシコ湾で事故を起こしたBPは、長い時間がかかったが「脱石油」を宣言した。
兎角、日本の気候変動対策の取り組みの甘さを指摘される。
ロイターが、こうした背景に、鉄鋼、電力、自動車、セメント、電気機器、 石油・石油化学、石炭関連の7つの産業が業界団体を通じて積極的に国の政策に働きかけていると指摘、「パリ協定と整合する気候変動政策に反対の立場をとっている」という。
「このリポートの分析結果は、京都議定書の交渉や立法時など、現役行政官であった時に体感した政策形成環境と概して一致する。それが現在でも変わっていないとの指摘に驚いた」と、小林光・元環境事務次官はロイターとのインタビューで語った。
「いわゆる護送船団方式・横並び主義が、環境ビジネスへの挑戦を妨げているとすれば、日本経済が世界に劣後する原因の一つになるのではないかと心配になる」 (出所:ロイター)
そうはいっても、変化の兆しもあるのだろうか。
6月、経団連が「チャレンジ・ゼロ」を公表、脱炭素社会にチャレンジしていくという。
モーリシャス事故の様子を見て改めて「脱炭素」を進めていかなければならないと感じる。
今年2月、トヨタは、 「船舶向けに初の燃料電池システムを開発し、フランスの「エナジー・オブザーバー号」に搭載、再生可能エネルギーによる世界一周の航海をトヨタの燃料電池技術がサポート」と発表した。
トヨタによれば、「エナジー・オブザーバー号」は、太陽光や風力の再生可能エネルギーや海水から生成した水素を用いた燃料電池を動力とする、世界で初めての自立エネルギー型燃料電池船だという。
海運がこうした船を利用する時代になって欲しいとつくづくそう思う。
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