Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【SDGsと自然破壊】 パタゴニアの「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」に学ぶ

 

 自然環境の中に大規模人工物があると、何か違和感を感じる。目的があるにせよ、自然環境を破壊してまで、作る必要があったのだろうかと。人工物を作れば、少なからずとも生態系に影響する。自明だろうと思ってしまう。

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諫早湾干拓事業と捻じ曲げられた司法判断、有明海の自然破壊、環境変化

 諫早湾干拓事業がまだ記憶に残っている。当時の自民党政権下、水門工事が断行された。ニュースで映しだされた海を遮断する工事、次々と鋼板が海に落とされ、変わる自然を見て悲しかった。こんなことまでして必要なことがあるのだろうか。 

www.asahi.com  

 

 

 その諫早湾干拓事業がまだ揉めているという。結果論になってしまうが、こうした構造物を作らなければ、何もここまで揉めることもなかったのではないであろうか。

 最高裁は昨年19年9月、続いている訴訟に対して福岡高裁の判決を破棄、今年2月から差し戻し審理が行われている。最高裁は「有明海諫早湾内の環境変化」など漁業権以外の論点についてさらに審理を尽くすよう求めたという。 

www.nishinippon.co.jp

 

 振り返ってみると、何とも矛盾に満ち、また、傲慢な政策がそこにあることに改めて気づく。 

08年、一部の漁業被害を認め、3年以内に堤防を開き、5年間開門調査をして有明海の環境変化を探るよう国に命じた。国や被害が認められなかった漁業者の一部が福岡高裁に控訴。同高裁は10年12月、一審判決を支持し国に開門を命じる判決を言い渡した。

上告断念を決めたのは民主党政権菅直人首相(当時)だ。福岡高裁判決は確定し、国は13年12月までに開門する義務を負った。 (出所:日本経済新聞)  

www.nikkei.com

  

 そうした司法判断があったにもかかわらず、「12年衆院選自民党が政権を奪還すると、国は諫早湾干拓を巡る政策を転換。判決の履行期限を迎えた13年12月20日国は確定判決に従わず、開門しなかった」と日本経済新聞は当時のことを説明する。

 民主党菅政権が上告を断念する判断をしたにも関わらず、当時、農林水産省は最後まで上告を主張したという。

 当時、このニュースを見ては、「黄河の断流問題」やアメリカで老朽化したダムを取り壊し自然環境を回復させる事業のことに思いをはせ、何か解決策はないのだろうかと思案したりしていた。 

 

 

黄河断流、農工業が世界6位の大河の水を飲みつくす

 「黄河断流」、全長約5,464キロ、世界で6番目の長さがある大河で、水が河口までに到達しない「断流」が1970年代以降、たびたび起きていたという。農工業用水の需要増大が原因といわれる。

 2008年のナショナル ジオグラフィックの記事によれば、「黄河の流量は40年前のわずか10%。65%あまりの水が農業用に汲みあげられ、その半分程度は配管や用水路の水漏れで失われている」という。Wikipediaによれば、2001年に小浪底ダムが建設され、黄河の水位調節を行うようになって断流は発生しなくなったが、黄河の根本的な水量不足は解消したわけではないという。

 

なぜ人間は傲慢にも、自然を飼いならし、征服しようなどと思うのか。どうして自然と共存しようとしないのか

 と話す現地の人の声をナショナル ジオグラフィックが紹介していた。

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アメリカ ダム撤去による自然環境を回復させた事例

 アメリカでは、1999年から2019年までの20年間に大小合わせて1200基近くのダムが撤去されたという。それによって、生態系が回復し、自然環境が戻ったことで、市民の交流や憩いの場となっているという。

 Gigazineによれば、河川の増水による洪水から人々を守ったり、併設される水力発電所により二酸化炭素や有害物質を出さないクリーンエネルギーを生み出したりと、大切な役割を持つダムが見直されつつある背景には、環境を大事にするからこその理由があったという。

かつて、アメリカのメイン州に流れるケネベック川には、1837年に建設された歴史あるエドワーズダムがありましたが、1999年7月1日に撤去されました。(中略)

ダムの撤去と同時に一変しました。撤去工事から1年も経たないうちに、ケネベック川にはチョウザメが戻り、ニシンを追って海から40マイル(約65km)も川をさかのぼってきたアザラシが観察されるようになったとのこと。さらに数年の内にケネベック川の水質は劇的に改善し、ハクトウワシやカワウソ、熊といった動物も含めた生態系はほぼ完全に回復しました。

(中略)

エドワーズダムの事例は河川環境を回復させる活動のモデルケースとなり、これ以降撤去されたダムは1200基近くにものぼります。 (出所:Gigazine

gigazine.net

 

 作った人工物を必要がなくなれば、放置するのではなく、責任をもって取り壊し、元の環境に戻す。自然環境を回復、再生させることで、生態系が戻り、新たな経済活動が生まれる。そんな活動が国内に生まれればいいのではないかとぼんやりと考えていた自分がいたことを思い出す。

 

 

新たな環境問題 メガソーラーによる環境破壊が深刻化

 残念なことに、ここ最近では、メガソーラーが環境破壊を引き起こしているようだ。

 福島市の山あいにある高湯温泉からほど近い山林で、民間企業が出力約4万キロワットのメガソーラーを設置する計画が進む。

「地元の誰もが『なんでここに?』と思ったはずだ」。

麓の集落の佐藤和弘さん(63)は、急斜面を見ながら眉をひそめた。

 計画地内を流れる沢は土石流の恐れがあるとして、福島県が以前から危険地域に指定。昨年の台風19号では土砂や石が県道に流れ出た。「林が伐採されれば雨水を吸収する力が落ちる。いつ土石流が集落を襲うか分からない」 (出所:SankeiBiz

 

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(資料出所:経済産業省公式サイト「太陽光発電事業に対する環境影響評価手続の創設について」) 

www.sankeibiz.jp

 

 何か新しいことが起きると、それに目を奪われてしまう。しかし、新しい何かが始まれば、またそこに新たな矛盾が生まれるのかもしれない。

 法律での規制がなくても環境に配慮する、そうしたことはコモンセンスになっている思っていた。勘違いだった。「経済成長」が優先されてきた弊害なのだろうか。

  同じようなことを繰り返してしまう社会。過去に学ぶことができない現実がそこにある。

 

 

森林破壊への疑問 パタゴニアが始めたソーラー・シェアリング 

  一方、そうしたことに気づく企業もある。パタゴニアだ。森林皆伐によって山上に設置される太陽電池パネルの疑問を感じたのだろうか、ソーラー・シェアリングに投資し、店舗で使用する電力を切り替えているという。

「日本は平坦な地形や広い空間自体があまり多くない、小さな国です」とパタゴニア日本支社の環境・社会部門ディレクターの佐藤潤一は語る。

「私たちは再生可能エネルギーの生産容量を増やす運動を展開してきましたが、太陽エネルギーの開発者と投資家は、森林皆伐によって山上に太陽電池パネルを設置してきました。」

ソーラー・シェアリングを通じて、パタゴニア日本支部は直営店で発生する炭素排出量の大部分を埋め合わせ、大規模開発により失われる土地の量を減らし、農家が自分の所有地で生産した再生可能エネルギーを販売することで補助収入を得られるようにしている。 (出所:パタゴニア公式サイト「2025年までにカーボンニュートラルになる」)

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 「ソーラーシェアリングが太陽光発電だけでなく、農業を行うことで土壌を回復させ大気中から二酸化炭素を回収することができる点において、カーボン・ニュートラル達成に貢献する有効な手段と考え切り替えを行いました」とパタゴニアはいう。 

www.patagonia.jp

 

まとめ パタゴニアのミッションに学ぶ

 SDGsが一般化しつつあるのだろうか。それでも、自然破壊が起きることに疑問を感じたりする。

 「私たちは故郷である地球を救うためにビジネスを営む」

   SDGsを語る前に、パタゴニアのミッションを学んでみたほうがいいのかもしれない。

 

 

「参考文書」

prtimes.jp

natgeo.nikkeibp.co.jp

 

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/4819/

 

enect.jp