Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

中国の面子と矛盾 「実質ゼロ」と「ウイグル問題」

 

 中国が、2060年までにGHG 温室効果ガス排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を目指すと表明したときには少々驚いた。 家々の暖房、乱立する鉄鋼産業や石炭火力発電、二酸化炭素を多量に排出する石炭への依存が高いはず。実現できるのか?

 世界一のGHGの排出国家に何か心変わりする理由があったのだろうか。

  

 

 

米中対立が中国の「実質ゼロ」を引き出す?

 NHKは、米トランプ政権への反撃であったと報じる。 

 習主席が表明した長期目標について、中国外務省の汪文斌報道官は23日の記者会見で「アメリカの中国に対する不当な非難と攻撃への強力な反撃になる」と述べていて、中国としては、パリ協定からの離脱を表明するなど温暖化対策に消極的なトランプ政権との違いをアピールするねらいがあるとみられます。 (出所:NHK 習主席 温室効果ガス排出量「2060年までに実質ゼロへ努力」)

 

 この内容が一番わかりやすいが、公表した以上は実現していくことも求められるはずだ。言葉悪く言えば、自らから罠にはまったということはないのだろうか。米中対立の副産物なのか。

 

中国の実質ゼロ 0.3℃の抑制効果

 ロイターによれば、仮に中国が「実質ゼロ」を実現すれば、今世紀の地球温暖化に伴う気温上昇を0.2 - 0.3℃抑制するとの推計があるという。ただ、それでも、2100年までの気温上昇幅は2.4 - 2.5℃にとどまる見通しだそうだ。

 

jp.reuters.com

 

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中国の矛盾 

  意表を突く突飛な発言があると、様々な憶測が渦巻く。

 「中国の発言と行動は明らかに矛盾している」とMITテクノロジーレビューは指摘する。

 中国は、今年に入ってから7兆ドルの経済刺激策を打ち出し、依然として石炭発電所の建設に多額な予算が注ぎ込まれているという。昨年末の時点で、欧州連合全体の石炭発電量とほぼ同等に当たる約150ギガワット相当の石炭発電所を次々と開発中であるともいう。

 一方で、中国は世界のクリーンテクノロジー製造大国として、リチウムイオン電池太陽光パネル、風力タービンの大半を製造しており、電気自動車の売上シェアも世界最大になっているとそうだ。ある意味で、世界の脱炭素化に大いに貢献はしていることにもなるが。

 

www.technologyreview.jp

 

 

 

国連総会ビデオ演説の習近平主席の「実質ゼロ」発言 

 NHKによれば、「中国の排出量は2030年までにピークを迎え、2060年までに実質ゼロを実現できるよう努力する」と表明したという。

 時事通信は、「人類は大自然からの度重なる警告を無視し、発展を語るだけで保護を語らないという古い道を進むことはもはやできない」と習主席が強調したという。

 朝日新聞は、パリ協定について「地球を守るのに必要な最低限の行動だ。全ての国が決定的な一歩を踏み出さねばならない」と述べ、温暖化対策でリーダーシップをとる意欲を強く示したと伝える。

 

 こうした発言を聞けば、 米中対立があるにせよ、世界と協力していく姿勢も窺える。

 2060年の実質ゼロをバックキャストにして、足元の政策を見直すことも考えられないことではない。二兎を追い、不要になれば作ったものをいとも簡単に廃棄することができるのも中国である。いざとなれば石炭火力を捨てることもあるのかもしれない。

 

気になるウイグル問題 習近平主席の発言 

 一方で、ウイグルの人権問題についての発言は気がかりだ。日本経済新聞によれば、新疆ウイグル自治区に関する重要会議「中央新疆工作座談会」で、習国家主席は「共産党の統治政策は完全に正しく、長期間にわたって必ず堅持すべきだ」と強調したという。

 

習氏は「イスラム教の中国化を堅持せよ」と述べた。「中華民族共同体の意識を心の奥底に根付かせよ」とも語り、共産党の指導をイスラム少数民族などに徹底するように指示した。 (出所:日本経済新聞

 

r.nikkei.com

 

 

 

人権問題を監査する団体が撤退

 ウイグル人の強制労働によって製品が作られていないことを確認するために欧米企業に雇われた会社や組織が、今後は中国でそのようなチェックを実施しないとBusiness Insiderが報じる。監査の結果が中国の行為を正当化する可能性があるという。

中国政府の影響力で、強制労働について適切に調査することが困難になる可能性があり、その監査結果がこの地域での製品や労働力の調達を正当化することになると述べた。また、専門家は、監査担当者が調査する際に、自由に話せる労働者がほとんどいないことや、政府が派遣した通訳が使われる可能性があることなど、重大な問題があるとも述べた。 (出所:Business Insider)

 

www.businessinsider.jp

 

 Business Insiderによると、アメリ国務省は2020年に入って「この問題に関して、監査担当者が拘禁され、脅迫され、嫌がらせを受け、絶えず監視されているという報告がある」と警告を発していたという。

 

腹を割って話そう

 中国を最初に訪れたのは、入国審査の審査官がまだ人民服を着ていた時代だった。審査官の威圧的な態度に少しばかり緊張感が走り、その時の出張はずっとそれを引きずったままだった。その後、たびたび中国を訪問するようになったが、日進月歩、訪れるたびに変化する中国に驚いたりした。様々な中国人と出会い、交流も増えた。付き合ってみれば、よい人間関係を築くこともできる。言葉にすると堅苦しくなるが、お互いの利害が確認できれば、信義が深まり、その友情は深くなる。そこまでに至るまでに、何度も白酒を飲み交わし腹を割って話す習慣にも付き合わなければならなかったが。そんなことを繰り返す中で、面子の立て方も学んだのかもしれない。そのことがわかれば、中国人との付き合いも楽しいものである。多くの欧米企業が中国に進出し、成功を収めたことを考えれば、彼らも同じことを感じたのではなかろうか。「郷に入りては郷に従えだ」。

 呉越同舟、どこかで対立することがあっても同じ舟に乗れば仲良くなったりする。

 「何でもありの国中国」、そんなことも何度も訪れることで学んだかもしれない。

 北京オリンピック前の天津。たびたび訪問していた企業での話。その会社の前の道路を拡張するから6m返却せよと、天津政府から通知があったのが土地を返却する期日の1週間前とか、2週間前だったと聞く。そこに建造物があろうかなかろうが有無を言わさずだったとか。よくテレビでみた光景だったが、ほんとうのことなのだと知った。訪ねたときにあった守衛所なくなったことに気づいた時に聞いた話。裏話としては、道路の拡張幅は、公安の建物を基準に決まったとか。もう少し広げる計画だったが、公安の建物があるので変更したと聞く。そんなものである。そんな政府を除けば、中国は悪い国ということはないと思う。

 その政府が、面子をあまり気にせず、グローバルスタンダードに従えば、もう少し世界はよりよくなるのだろうけど、国内向けの顔もあるから、なかなかそう振舞えないのだろう。理非曲直、中国という国家の二面性なのかもしれない。もしかしたら政府も色々ジレンマを感じているのかもしれない。変化を期待したいが、それには長い時間が必要ということなのだろう。

 米中対立を見ればわかることだが、国際社会もあきらめず、面子を立てながら根気よく説得、腹を割って話していくことが求められているのだろう。国ごとに違った文化はあるものだ。