Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

方向転換か、2050年カーボンニュートラルへ 産業構造の変化を促すその先は

 

 「温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする」と、菅首相が就任後初の所信表明演説で表明する方向で調整していると朝日新聞が報じる。

 温暖化ガスの排出量と森林などで吸収される量を差し引きでゼロにすることを2050年までに達成することが求められる。

 朝日新聞によれば、日本政府は、これまで「50年までに80%削減」や「50年にできるだけ近い時期に脱炭素社会を実現できるよう努力」といった目標は掲げていたが、いつ「実質ゼロ」を実現するのか、具体的な年限を示していなかったという。

 26日の所信表明を聞かなければわからないが、場当たり的な対応に陥ることなく、国際社会と足並みをそろえて地球温暖化対策を進める強い姿勢を示してもらいたい。

 

digital.asahi.com

 

 

 

 

CO2排出 日本の今、世界の今

 少しおさらいをすると、2018年の国内のCO2排出量は11.4億トン。世界で5番目の多さ。CO2排出の内訳のエネルギー起源が93%占め、エネルギー関連が4.6億トンで次いで産業部門が2.8億トンと続く。

 

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(資料:経済産業省「エネルギー基本計画の見直しに向けて」

 

 2050年までに、CO2排出をネットゼロにするカーボンニュートラルに賛同した国は121ヶ国と1地域。これらの国における世界全体のCO2排出量に占める割合は2017年で17.9%。

 資源エネルギー庁によれば、バイデン大統領候補の公約に2050ネットゼロにする長期目標があり、米国としてが2050ネットゼロを表明した場合には、世界全体のCO2排出量に占める割合は32.4%となるという。また、中国は2060年ネットゼロを表明している。

 

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(資料:経済産業省「エネルギー基本計画の見直しに向けて」

 

 

 

 2020年1月、「革新的環境イノベーション戦略」が策定され、2050年までに確立する革新的技術をとりまとめ、社会実装を目指していくとした。イノベーション・アクションプランとして、5分野、16の技術課題があがる。エネルギー転換などに加え、農林水産業・吸収源なども加わる。

 

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(資料:経済産業省「エネルギー基本計画の見直しに向けて」

 

 滅びゆく石炭火力

 IEA国際エネルギー機関が2025年までに再生エネルギーが石炭火力発電を上回る見通しと発表したという。ブルームバーグによれば、大半の国々では太陽光発電の方が石炭火力発電や天然ガスよりも安価だという。2030年までには再生可能エネルギーが新規発電量の80%を担うようにまでになり、世界の電力供給で石炭が占める割合は、2030年には28%まで低下する見通しという。脱炭素化計画が加速すれば、石炭火力の消滅は早まるかもしれないと、ブルームバーグは伝える。

 

www.bloomberg.co.jp

 

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方向転換

 中国が国連で「60年より前に実質ゼロ」を表明し、米国で11月の大統領選でバイデン氏が勝つようなことになれば、米国も「実質ゼロ」を表明する可能性もあるという。日本は国際社会で取り残される懸念があると日本経済新聞は指摘する。

 日本経済新聞によれば、「実質ゼロ」の目標の設定を受け、経産相は26日にも再生エネの拡大を柱とする政策を公表するという。太陽光・風力発電の普及のため大容量蓄電池の開発を援助し、水素ステーションの設置拡大策も示す見通しだという。

首相は所信表明演説でCO2を再利用する「カーボンリサイクル」や、次世代型太陽電池の研究開発を支援する方針も示す。 (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

  

 実現が難しければ排出量に応じて課税する「炭素税」や「排出量取引」などの本格的な導入が課題になる可能性も出てくる。 (出所:日本経済新聞) 

  

 26日の所信表明では、どこまで言及するのだろうか。

 

産業構造は変わっていくのだろうか

 経済産業省が企業の脱炭素化の背中を押し、政府のグリーンイノベーション戦略と企業の紐づけを行う。また、「クライメート・イノベーションファイナンス」を推進、民間資金によるファイナンスを誘導する。こうした中で、「実質ゼロ」の表明があれば、さらに脱炭素化の流れは加速しそうだ。

 政府が掲げる新目標に対応するか否かで企業価値を左右するようになると日本経済新聞はいう。

十分対応できない企業は退場を強いられる可能性もあり、産業構造の転換を促す目標になりそうだ。 (出所:日本経済新聞

 

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 三菱電機のZEBが竣工

 三菱電機がZEB(net Zero Energy Building)関連技術の実証棟「SUSTIE(サスティエ)」が竣工、10月16日公開となったようだ。

 ZEBネット・ゼロ・エネルギー・ビルとは、高断熱化・日射遮へい・自然エネルギー利用・高効率設備などによる「省エネ」と、太陽光発電などによる創エネにより、年間で消費する一次エネルギー消費量がゼロ、あるいは概ねゼロとなる建築物のことをいうと三菱電機は説明する。

 

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(画像:三菱電機

 

 こうした断熱性能や省エネに優れた建物が増えれば、外部電力の消費は減っていくことになる。政府の「実質ゼロ」の表明があれば、こうした動きも加速していくのかもしれない。そうなっていけば、改めて省エネに焦点があたり、制御するIoT関連に注目が集まったりするのかもしれない。

 

www.mitsubishielectric.co.jp

 

まとめ

 成長戦略はDXデジタル・トランスフォーメーション一辺倒のようになっていたが、DXで社会課題の何が解決され、どういう世界に向かうのことが今ひとつはっきりしなかったように感じていた。何か、今まで以上に大量消費を助長するのではないのかと危惧もしていた。

 ひとつ大きな目標ができれば、まずはその達成に向けて優先課題を整理されるだろう。企業にCO2の排出を抑制しようとの動機が働けば、「プロダクトライフサイクル」の考えを取り入れる動きがでるかもしれない。そうすれば、使い捨て、大量消費から抜け出る機会につながっていきそうだ。

 

 まずは26日を待ちたい。どんな所信表明になるのだろうか。

 

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