2030年の温室効果ガス削減目標が46%と国が発表した。国連(IPCC)が示している2030年の目標に近いという。
IPCCによれば、世界全体の二酸化炭素(CO2)排出量を2010年比で2030年に45%削減、2050年にゼロにすれば66%の確率で1.5℃の上昇にとどめられる。(引用:特定非営利活動法人気候ネットワーク)
先の気候変動サミットでも世界の多くの国々が削減目標をアップデートし、協力して地球温暖化対策に立ち向かうということだろうか。
政府が示した目標も、2050年の地球の平均気温1.5℃以内に収めようとする目標達成のための国家としてのコミットメントということなのであろう。
こうして示された目標を、実際に排出削減に取り組む企業はどう見ているのだろうか。気になるところだ。実現困難と見る向きが多いのだろうか、それとも楽観論とは言わないでも安堵を感じる企業もあったりするのだろうか。
多くの企業が2050年のカーボンニュートラル、2030年の削減目標を表明するようになり、濃淡様々ではあるが、そうした数字を見れば、決して到達不可能な数字というわけでもなそうだ。
2030年CO2半減を目指す東京電力
東京電力は昨年11月に、「2030年度までにCO2排出量を2013年度⽐で半減」する⽬標を設定したと発表した。原発稼働などの条件は付くが、排出量が多く、その40%を占めるエネルギー分野であっても、50%までは挑戦できる数字であることが示された。
CO2排出が多い鉄鋼の雄 日本製鉄は30%削減へ
産業界で最も多く温室効果ガスを排出する日本製鉄は、2030年のCO2総排出量30%削減の実現を目標に定めた。
日本製鉄によれば、現⾏の高炉・転炉プロセスでのCOURSE50(製鉄所内発生水素吹込み)の実機化、既存プロセスの低CO2化、効率生産体制構築等によって、対2013年⽐30%のCO2排出削減を実現するという。
実用化していなかった技術を早期に立ち上げることが課題ということなのだろうか。
推測に過ぎないが、得てしてこうした目標はコンサバに設定するのが常のだろう。どれだけストレッチできるのか、それを問い続けていくことも必要であろう。
削減目標はどうあるべきだったのか
国立環境研究所の温室効果ガスインベントリによれば、 2013年の二酸化炭素(CO2)排出量はで13 億 1800 万トン。
それに対し、2019年度の排出量は11億800万トン。発生別にみればエネルギー部門が39%を占め、次いで産業部門が25%を占める。家庭部門は5%あまりと少ないが使用別でみれば、14%になっている。
発生別でみれば、エネルギー、産業、運輸で82%を占めているのだから、大所からせめれば、ある程度の今後の排出量予測は立てることはできるのだろうか。
一方、使用別でみれば、産業、商業、家庭での比率が高い。こうした分野で省エネを進めなければ、温室効果ガス削減にアシストすることはできない。
まずはエネルギー基本計画でどのようなエネルギーミックスが提示されるのか。脱石炭など色々と外堀は埋められつつあるので、原発再稼働が次の焦点になりそうだ。一方、脱原発の意見は根強く無視しえない。温室効果ガス削減を第一義とすれば、脱原発の場合のバックアップ策が作れるか焦点にもなったりするのだろう。
こうした状況を鑑みれば、積み上げ方式で目標を作るよりは、バックキャスト方式で目標を作ったほうがいいのかもしれない。現状分析し、認識されるギャップを課題とし、その課題解決の為の計画を作り、PDCAを回して丹念に実行していく。計画が成就となれば、地球温暖化に少し近づくが、計画通りに進むぬことも想定していくべきなのだろう。そうであれば、バックアップ策を同時に進める必要も出てくる。
報道にあるように、目標達成は簡単なことではなく、様々な課題があるということなのだろう。とはいえ、それを難しいといってしまえば、地球温暖化防止が遠退く。
政治のリーダーシップが必要なのかもしれない。みなが納得できるような丁寧な説明と説得が必要になっているのだろう。
目標が示されれば、いつものように批判は増える。政府を擁護する気はさらさらないが、IPCC提言に近く、まずは国際社会では認められる目標であったのだろう。
ただ、スピード感に欠け、根拠不十分との印象はあるのかもしれない。大臣の失言もあれば、なおさら不信感は募ったりするのだろう。
こうした目標も政治がらみになれば、国際情勢や様々な思惑やしがらみが交錯するのだろう。しかし、そうであっても温暖化防止のための温室効果ガス削減という第一義をもう外すことはできないはずだ。
政治家は襟元を正し、丁寧な情報発信に努めて欲しいものだ。