Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

カーボンプライシングと国境炭素税 カナダの炭素税の事例 

 

 失われた20年、どこかで聞いたことのある言葉だが、この言葉を使って国の気候変動対策の遅さを問題視しているのはカナダでの話のこと。カナダCBCが「2 lost decades」と題した記事を発行した。

 あくまでも個人的な印象だが、カナダと聞けば環境先進国のようなイメージがあったが、現トルドー政権までの過去20年は環境対策にあまり積極的でなく、それ以前の政権と比較すると後退期と見られていたようだ。

 

 

 そのカナダで12月11日、2030年までに温室効果ガス排出量を劇的に削減するという政府戦略の発表があった。その目玉は、燃料に対する連邦炭素税をその年までに1トンあたり170ドルに段階的に引き上げることだとカナダCBCは解説する。

www.cbc.ca

 

カーボンプライシング

 日本ではカーボンプライシング(CP)の検討が始まるようだ。 

 「CPは、CO2排出量が多い企業や個人ほど負担が重くなる仕組みで、排出抑制効果が期待される」とJIJI.COMは説明する。

化石燃料の消費量に応じて課税する炭素税や、企業に排出が許される量を排出枠として配分し、余った枠を売買できるようにする制度がある。

フィンランドなど欧州各国や米国の一部州で導入されている。 (出所:JIJI.COM)

 ただ、企業や消費者の負担が増すことへの懸念もあり、実現に向け課題は多いとも指摘する。

www.jiji.com

 JIJI.COMによれば、日本でも化石燃料に課税する地球温暖化対策税などが導入されている。ただ、欧州諸国と比べ税率が低いという。

 

カナダ 炭素税とリベート(払い戻し)

 カナダ トルドー首相は、地球温暖化の最悪の影響を食い止めるために、カナダは今この種の積極的な行動をとらなければならないと述べているそうだ。

 炭素税を支持する人たちは、気候変動の脅威には行動が必要であり、この種の収益による中立な計画は、消費パターンを化石燃料からシフトするための最良の方法であるといっているという。一方、反対派は、この種の課税が経済的に損害を与え、消費者や中小企業にとって懲罰的すぎると指摘するという。

 

 

 炭素税により、消費者がガソリンを購入する際のコストは高くなり、家庭用暖房、天然ガス、プロパン用の軽油のコストも上昇するという。カナダ政府は、これによる生活費の増加を補うために、炭素税によって集められたお金の大部分をリベートとして払い戻し続けるという。毎年、個人や家族が確定申告をする際に払い戻しするそうだ。

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 日本国内ではどんな形でカーボンプライシングが検討されていくのだろうか。 

 

渋々

 日本経済新聞によれば、経団連は、これまでCPの手段である炭素税の導入などに反対する姿勢を示してきたというが、方針を転換し、「まず拒否するという方向で出発すべきではない」と中西会長が語り、一定の理解を示したという。

 渋々という感じに聞こえてしまうが、世界の動きを鑑みているのだろうか。真意を測りかねる。 

www.nikkei.com

 

国境炭素税

 欧州では、すでに「国境炭素税」の検討も始まっていると聞く。早ければ、21年にも一部の分野で始める計画だと日本経済新聞が報じていた。

 国境炭素税は「国境炭素調整措置」とも呼ばれ、環境対策が十分でない国からの事実上の輸入関税を引き上げるのが狙い。EUは2050年の域内の温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げる。達成には大胆な排出削減策が欠かせない。だが、域内企業には少なくとも短期的にはコスト増になる。排出量削減には、依然として割高な新素材や技術を使わなければならないからだ。 (出所:日本経済新聞

www.nikkei.com

 米国では、オバマ政権時にこの国境炭素税が検討され、議会に法案まで提出されたが成立しなかったという。当時は中国など温暖化対策が遅れている国を標的にしていたという。バイデン政権が誕生するようになったら、復活するようなことはないのだろうか。

 

 

地球を覆う大気には国境がない

  欧州で検討が進む国境炭素税を日経スタイルが解説し、その背景に、「EUは域内の発電所などに温暖化ガスの削減目標を課し、達成できない場合は市場から排出枠を買い取る制度を05年から続けてきたが、その排出枠の価格がは20年1月に二酸化炭素(CO2)1トンあたり24ユーロ(約3千円)と2年前の3倍に高騰していることが背景にあると指摘する。

style.nikkei.com

 

 日経スタイルによれば、早稲田大学の有村俊秀教授は、「温暖化対策は一国だけでやっても意味がありません」と話しているという。地球を覆う大気には国境がない。

カーボンプライシングは効率よく温暖化ガスの排出を減らすことができますが、理想は世界で共通の炭素価格を設けることです。国境炭素税も理想に向けた第一歩とはいえるでしょう (出所:日経スタイル)

  検討が進む欧州では、炭素税を上げる一方で法人税所得税社会保障負担を減らす取り組みが進んでいるという。温暖化対策と経済活性化という『二重の配当』を得られる政策として注目を集めていると指摘する。

 カーボンプライシング、意見の分かれそうな政策のような気がする。地球環境のことを思えば賛成なのだろうけれども、負担増が強調されれば反対者も増えるのだろう。

 どのように検討が進むか、注視したい。

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「参考文書」

www.canada.ca

cleantechnica.com