生命の危機なんていうと重々しいが、しかし、最近そんなことを考えるようになった。コロナの影響もあるのだろうし、気候変動のことを気にかけるようになったからかもしれない。危機というものを少しリアルに感じているのだろうか。
今年は梅雨入りが驚くほど早い。関東はまだだが、大雨のことを心配する季節がもう始まっていると感じる。そんな最中に、大雨予想があったりすると、以前よりは心配するようになっているのかもしれない。昨日の大雨予想では大きな被害もなかったようだ。予想が外れてよかったと安心し苦笑いをする。以前にはない反応かな。
「レジリエンス」という言葉が使われるようになったことも影響しているのだろうか。この言葉は、外部ストレスに対する耐力とそこからの回復力を意味する。自然災害やこのコロナに対しても使われる。
安全率が高く設定されたシステムであれば、安心することができる。ここ最近では外部ストレスの方が強力になったせいなのか、限界までの余裕が希薄化しているように感じる。それともコストを優先するばかりに安全率が低くなっているのだろうか。安全率の高さは過剰品質の温床だし、身重になる。利便性と効率性を追求すれば、安全率が犠牲になっても不思議なことではないのかもしれない。
ただ、レジリエンスといって、人が耐え忍ぶようであれば、それでは苦し過ぎる。レジリエンスは社会のしくみとして、どれだけ安全・安心を担保できるかということでもあろう。
とある会社の中期経営計画に目を通す。「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を発揮できる持続可能な社会の実現を目指す」と記されている。
目的は、現実の裏側のことを表す。ビジョンも同じで、現実の世界に足りないものを如実に示しているのだろう。
そして、その会社は「未来の共感」を創るという。それが、パーパス、存在意義という。
この禍で、ぎすぎすするばかりで、感動が、すっかり薄らいでしまったいるのかもしれない。
「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパス 存在意義を掲げるのはソニー。昨年度は1兆円を超える純利益を上げるまでに復活した。
そのソニーは、Values(価値観)とし、
「夢と好奇心」、夢と好奇心から、未来を拓く。
「多様性」、多様な人、異なる視点がより良いものをつくる。
「高潔さと誠実さ」、倫理的で責任ある行動により、ソニーブランドへの信頼に応える。
「持続可能性」、規律ある事業活動で、ステークホルダーへの責任を果たす。
(出所:ソニーグループ)
今までのソニーは、少しばかり高慢で、不誠実だったのかもしれない。
ブルームバーグによれば、先日の経営方針説明会で吉田CEOが、ソニーGの存在意義を軸に経営方針を示したことについて「チャレンジでもあった」と説明したという。
企業文化が社員の実行力を担保し、「場合によっては、戦略より重要かもしれない」と述べたそうだ。示唆に富む言葉だ。
復活するような企業は、もう社会の矛盾に気づいたのかもしれない。
自己の非がわかれば、悔い改めることもできる。ただ、そこに気づくまでに時間がかかっただけのことかもしれない。
企業文化が変わるとはそういうことなのだろう。社員が変わってはじめて、文化が変わる。社員もまた企業人であると同時に、一消費者だ。社会の中で、その行動に変化があれば、もしかしたら、少しずつ社会が変化していくことになっていくのかもしれない。