ユニクロなどを展開するファーストリテイリングの入社式が3月1日に行われ、柳井社長が「世界に通用する最高水準の基本を身につけること、素直であること、そして正しさにこだわって成長し、お客様に満足を提供してほしい」と新入社員に語りかけたそうです。
ファーストリテイリングの入社式 柳井会長「最高水準の基本を身につけ、お客様に満足を」
不正など陰鬱なニュースが相次いでいます。柳井社長のメッセージはこうしたことを憂いてのことなのでしょうか。
率直さ、誠実さが今の社会から薄れつつあるのかもしれません。社会の一員として、その大切さ、そして、これらが経済活動において何よりも尊いものであることを学ぶ機会にして欲しいものです。
「人的資本経営」や「ウェルビーイング経営」に注目が集まるのがわかるような気がします。
ただ単にコンプライアンスを問うたところで、規範意識が薄れていては、遵法精神を維持することは困難なことなのかもしれません。
人的資本経営
「資本」と「富」の関係を、一橋ビジネススクール教授 楠木建氏は解説しています。
人的資本―その1 「資本」とは。 - Executive Foresight Online:日立
富と資本、どちらもお金といえばそれまでですが、意味はまったく違います。昔の王様はたくさんの金銀財宝を持っていましたが、それはあくまでも富であって、資本はゼロ。(出所:日立グループ)
富を得ようとする経営者は、何のために商売をやっているのかというと、自分のための富をつくるために働き、それで得たお金でベンツを所有し、毎週ゴルフを楽しむ生活を可能にするお金を求めるといいます。
こうした思考が行き過ぎると、時に不正を招いてしまうのかもしれません。それゆえコンプライアンスが求められているのでしょうか。
「富を消費するということは、今持っているものの量を減らすことによって何かを得ること」といいます。
それに対して資本とは、「将来に価値を生み出すもの」であって、商売を大きくしていくための投資の元手と説明しています。
また、ファイナンスでは、現金として持っている資産は最も価値が低くく、その理由は将来の価値をつくるために動いていないからと指摘します。
「キャッシュが積んであるということは、投資をしていないことを意味しています。キャッシュはファイナンスでは偉くないわけです。(出所:日立グループ)
そして、人的資源と人的資本の違いを、「人を労働力として見るのが人的資源」で、「人を投資対象として見ること」が人的資本といいます。
お金と人を同格で論ずるべきではないのかもしれませんが、お金も人も活用することに意義があるということなのでしょう。そして、人を活かすために投資し、人間的な成長する機会を与えるべきということなのでしょうか。
ウェルビーイング
「ウェルビーイング」、主に「幸福」や「健康」と訳されます。
この「幸福」は、より包括的で、「私の人生は辛いことも苦しいこともあったけど幸せ」といった、長期的な健やかさや、精神的な幸福感を意味するといいます。
一方、同じ「幸福」との意味で、英語には「ハピネス(Happiness)」という単語があります。これは「ウェルビーイング」で訳される「幸福」とは異なり、一時の感情的なものをいうそうです。
「幸福=ハピネス」ではない。なぜ世界がウェルビーイングに注目しているのか。 | ハフポスト NEWS
ハピネス的な幸福は「金、モノ、社会的地位」から得られる幸福感で、手にした直後は多幸感があるそうですが、一過性のものといいます。富を消費したときの感情といってよいのでしょうか。
一方、ウエルビーイング的な幸福は、これらと異なり、「安全」「環境」「心的要因」の3要素で得られる幸福といいます。
この「幸福」を構成する3つの要素のうち、日本は、「安全」と「環境」は世界トップクラスの水準を誇るといいますが、「心的要因」においては先進国の中で最下位というデータがあるそうです。
企業は人的資本という考え方を中心にし、人材のウェルビーイングの向上に重きを置いていかなければならないのかもしれません。
こうした取り組みによって、従業員の幸福感が醸成されれば、それに比例して生産性や売り上げが伸び、離職率や欠勤率が下がるというデータも数多く存在すると記事は指摘しています。
個人や社会の「ウェルビーイング」を実現することは、SDGsが根幹の「誰も取り残されない社会」にも繋がるといいます。
またそれは「誰も取り残されない社会」の実現を目的にするのであれば、「ウェルビーイング」は不可欠な要素であり、そのために「人的資本経営」が問われているということではないでしょうか。企業が早急に取り組むべき課題のように思われます。